この2年間、新型コロナウイルスにより、人々の生活習慣は大きく変わった。それは、お酒の飲み方にも影響している。
アメリカでは、女性の大量飲酒が増加し、新たに発表された統計によると、2020年には肝障害や事故など、アルコールに関する死亡者数が25%急増したという。
日本国内におけるコロナ禍の飲酒動向は、外飲みは減少したものの家飲みが増え、約3割の人が飲む頻度・量ともに「増えた」と答えたとキリンホールディングズが2021年に行った調査で明らかになった。また、アルコール依存症も増加しているという指摘もある。
専門家は、コロナ禍での飲酒に関するこうした変化は「多くの面で理解できる」と話す。
ニューヨーク市在住の神経心理学者、サナム・ハフィーズ氏は「リモートワークの普及により、人々は従来の業務時間を守る必要がなくなり、ビジネスパーソンの間で日中の飲酒がこの数十年に比べ最も一般的になりました」と述べた。
「娯楽の選択肢が限られ、孤立する人が多く、アルコールは非常に困難な時期を乗り切るための『簡単な解決策』になったのです」
パンデミックの最も困難な時期を乗り越え、これから社会がよりオープンになる...と信じたい今こそ、アルコールとの付き合い方について再確認するのに有効な時期かもしれない。ここでは、自問すべき5つの簡単な質問を紹介しよう。
1. 自分の飲酒パターンに変化はあったか?
専門家によると、定期的に飲酒はするが「依存症」の臨床的な基準には満たず、 その境界線にいる「グレーゾーン」の飲酒者が増加しているという。グレーゾーン飲酒者は必ずしも飲酒の問題を抱えているわけではない。しかし、アルコールとの付き合い方に疑問を感じたら、それはなぜなのか理由を探ることが重要だと専門家は話す。
1つの方法は、自分の現在の習慣を把握し、以前から変化があったかどうか正直に自問してみることだ。前は周りとの付き合いの時だけ飲んでいたのに、今は毎晩飲んでいないだろうか?一度に飲む量は増えていないか?変化や新しいパターンに注意しておこう。
「パンデミック中に飲み過ぎていた人は、新型コロナ流行以前のアルコール摂取の仕方を思い出し、当時のパターンに戻せるか試してみてください」とハフィーズ氏は述べる。
2. 一日中お酒のことを考えていないか?
リハビリセンターArk Behavioral Healthの依存症専門家サラ・オブライエン氏は、「朝起きて仕事を始める時、仕事終わりに飲むワインやビールのことを考えてはいませんか?」と話す。
もちろん、特別なディナーを予定していて、その時開けようと思っている素敵なワインを心待ちにしている日や、ハッピーアワーに友達と飲みにいく約束を楽しみにしている日はあるだろう。問題になる思考は少し違う。「それが常に続くようであれば、真剣に考えていく必要があるでしょう」とオブライエン氏は述べた。
3. 自分で決めた制限を守ることができているか?
アルコールとの付き合い方に疑問を感じている人、もしくは減酒したいと思っている人は、健康的な食生活や運動と同様、計画的に飲酒の制限や目標を設定することがよくある。人によっては、週のうち特定の夜だけ飲むと決める人もいるし、何杯飲むかを決める人もいる。
「もしこういう目標を立てても守れない場合は、それがなぜなのか考えるといいでしょう」とハフィーズ氏は話す。お酒を松葉杖代わりにしていないだろうか?そのパターンを断ち切るためには、外部の助けが必要になってきてはいないか?
4. しばらく禁酒できるか?
まず、ここに記載している質問は、あなたを診断するためのものではないことを覚えていてほしい。つまり、医師がアルコール依存症と診断するための質問ではない。
もし深刻な飲酒問題があるならば、飲酒を辞めた際、問題を抱える人のうち5割に起こるというアルコール離脱症候群について知っておくべきだ。これは深刻に受け止める必要があり、医学的治療も必要になる。
だが、もしあなたが「グレーゾーン」の飲酒習慣に疑問を抱いているだけなら、一定期間禁酒をしてみて、その様子を見てみるのも有効かもしれない、とオブライエン氏は述べた。
「『これから2週間は飲まない』と決めたとしましょう。もしそれが途方もなく不快に感じたら、大きな問題として取り組む必要があるか検討する必要があるでしょう」
こうした意図的な禁酒期間は、習慣化してしまったさまざまな行動を振り払うのに役立つという。その為、1月に禁酒する「ドライ・ジャニュアリー」運動は、数カ月に渡って人々の飲酒習慣に変化を及ぼすと示唆する一定の証拠があるのだ。
5. 家族や友人は自分の飲酒をどう思っているか?
結局、自分の飲酒習慣を変える為に行動を起こすか否かは自分次第だ。しかし、信頼する友人やパートナー、家族に意見を求めるのも役に立つとハフィーズ氏は話す。自分の飲酒や行動の変化、もしくは何かしらの問題に気づいた点はあるか聞いてみよう。
逆に、自分の飲酒を周囲の人に隠す必要があると感じたら、それは危険信号の可能性があるという。それは自分の飲酒が懸念すべきレベルに達したことを自覚し、その変化に周囲が気づき、心配されることを恐れているサインかもしれない。
オブライエン氏もハフィーズ氏も、アルコールとの関係に疑問を感じている人には、それが最終的に断酒につながるかどうかに関わらず、多くの選択肢があることを強調している。
「『自分は飲み過ぎてるかもしれない。もう一生禁酒した方がいいのだろうか?』と考える人々もいますが、それは大きな誤解です」とオブライエン氏は述べる。
禁酒が必須だと感じる人も多いが、他の人はただ飲酒習慣が変化したことに気づき、それを減らしたいと感じているだけだという。
自分の状況や飲酒について質問がある場合は、主治医やメンタルヘルスをサポートしてくれる機関に連絡しよう。また、サポートグループや禁酒プログラムを調べてみるのも役立つだろう。外部の支援は目標を明確にする手助けをし、自分だけでは目標の達成が困難なとき、力になってくれる。
「最も重要な質問は、『私は飲酒をコントロールできてる?それとも逆に、アルコールに支配されてる?』」ということです」とハフィーズ氏は述べた。
<「自分が/家族がお酒を飲みすぎている…」と感じた際の相談窓口>
・全国の「精神保健福祉センター」
・全国の「保健所」
・「依存症対策全国センター」
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集・加筆しました。