美容整形手術を受けたことを公表し、大きな反響を呼んだタレントの有村藍里さんが、初のフォトエッセイ『1mmでも可愛くなりたい。』を発売した。エッセイには、自身のコンプレックスに向き合い、一歩ずつ進んでいく前向きな姿が描かれている。
有村さんの整形告白には、「整形も一つの選択肢だと思う」「共感した」などのあたたかい声が集まった。有村さんはその反応に驚き、日々励まされているという。
「笑顔になれることをしたら人は変わることができると思います」。すっきりとした笑顔で語る彼女に話を聞いた。
美容整形の是非、決めるのは自分自身
《有村さんが整形手術を受けたのは、2018年秋のことだ。ずっとコンプレックスだった口元が気になり、人と話すのが嫌になったり、仕事に集中できなくなったりしてしまったという。整形手術には、合併症などのリスクもある。大きな葛藤や迷いがあったが、「やらないで後悔するより、やって後悔するほうがいい」との思いで整形を決意。骨から顔の輪郭を整える「輪郭矯正」の手術を受け、その一部始終はドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」でも放送された。》
――番組放送後は、有村さんに共感する声や、応援のコメントがたくさん寄せられました。
こんなにたくさんの応援のコメントをいただけるなんて、まったく予想もしていませんでした。
特に女の子たちからの感想がすごく多くて。「番組を見て涙を流した」と言ってくださる方がたくさんいてくださって、そのコメントを見て感激しました。
――美容整形をすることも、それを公表することもリスクのある、大きな決断だと思います。
私は、美容整形をするかしないか、決めるのは自分自身だと思っています。
公表したのは、「整形したと言わなくても(周囲に)わかるだろうな」という思いもありましたし、私自身としては「美容整形に対して隠すことではないんじゃないかな」と思っていましたので。
――エッセイでは、中学時代は引きこもりがちだったこともつづっていて、ご自身のネガティブな気持ちも書かれています。自分を「さらけ出す」ことに怖さはなかったのでしょうか?
そもそも、私の名前が世間に出たきっかけが、スクープ記事だったので、最初から私の印象はあまり良くなかったのかなと思うんです。ネットでは「売名」とか、そういったご意見がすごく多かったですし、そのあと整形も公表して、逆に、怖いものは何もなくなったな、というところまでいきましたから(笑)。
自分をさらけ出して、もうあまり気にならないというか...。
「いろんなご意見をいただけてありがたいな」と思いますし、怖いとか、自分をさらけ出すことで「嫌なことを言われちゃうんじゃないかな」みたいな気持ちはないんです。
スポーツ紙のスクープで、築き上げてきたものが崩れてしまった
《もともと内向的な性格だったという有村さんは、「自分を変えたい」という思いで高校生の時に芸能界デビューした。当時は「新井ゆうこ」という芸名で活動し、コツコツとファンを増やしてきたが、2015年に有村さんを取り巻く景色は一変した。スポーツ新聞が「有村架純秘密の姉、 グラドルだった!!」と報道したのだ。スポーツ紙側から事前連絡は一切なく、写真も無断で掲載されてしまったという。》
――スクープによって突然世間の注目が集まり、それまで築き上げてきたものが「全部崩れてしまった」とエッセイの中で書かれていました。これは「メディア不信」になっても仕方がないほどの出来事だと思うのですが...。
当時はかなりショックだったと思います。
自分自身はそれまで全く無名で、ああやって大々的にメディアに載ったり、ネット掲示板で一気に名前が出てくるということはそれまでなかったので。あのスクープで急に名前が出るようになって、すごく怖かったというか...。
スポーツ紙の記者の方もそうですけど、なんか、怖いなってずっと思っていました。
――それをきっかけに、「売名行為」とか、容姿に関するコメントもネットに書き込まれるようになって。エゴサーチを繰り返してしまったというくだりなどは、読んでいて苦しかったです。今もエゴサーチはされているんですか?
Twitterは毎日見ています(笑)。掲示板は、今はあんまり見ないようにしています。
今は、すごく共感してくださった方が呟いてくださったり、私なんかって思うんですけど、「藍里ちゃんみたいになりたい」って書いてくださる方もいたりして。エゴサしても、嬉しい言葉をたくさんいただけて、すごく励ましてもらっています。
――芸能人はバッシングの対象にもなりやすいですよね。書き込んでいる人の中には、まさか本人がエゴサして見るかもしれないとは想像していなかったんじゃないか、とも思います。
ネット掲示板と少し違うのが、SNSは匿名といえば匿名ですけど、普段はお友達との写真とか日々の発信をされている方も多いですし。
コメントは、最初は落ち込むこともあったんですけど...。私はどうしたら可愛くなれるのかってずっと悩んでいたので、口元が残念って書いていただいたことで、「あ、やっぱり口元か」って改めて自分のコンプレックスに気づかせてもらったというのもあるんです。
――でも、それも影響して、「可愛くならないと」という強迫観念になってしまったのではないか、と思ったのですが...。
そういうことが影響したのではなくて、もともと口元にはコンプレックスを持っていて、歯並びが原因かなと思って、歯列矯正や歯茎を削る施術は受けていたんです。
ただ、あまりに気にしすぎて、常に鏡を横に置いて生活していた時期はありました。ずっと鏡を置いて、ご飯を食べる時も鏡を見ながら食べていて。「自分の顔が気持ち悪くないかな」って確認してしまうんです。そういう時は自分で自分をちょっと追い詰めていたのかなって思います。
――そんなに追い詰めてしまっていたんですね。
どうしても気になってしまって、まっすぐお仕事に向き合えていなかったというのがすごくあって。写真撮影で「顔が可愛くないな」とか、テレビで自分が映っているモニターを見て「うわ、可愛くない。ブスに映ってるどうしよう」って思ってしまって。
今はそういうことがなくなったので、もっと素直にお仕事に取り組めるようになったんじゃないかな、と思っています。
「なんで『普通』に楽しくできないんだろう」
――有村さんはエッセイで、「どうして自分は普通にできないんだろう」と書かれていました。有村さんが思う「普通」って、何なんでしょうか。
私が思う「普通」なんですけど...。普通に人と喋って、遊んで、社会に出て、大人の人たちとも喋って仕事して、という...(笑)。
――高校の時からお仕事していますし、ずっとそれはやってきたのでは?
コミュニケーションというか、お仕事で女の子とお友達になってご飯に誘ってもらっても、一週間くらいずっと「どうしよう」ってなってしまって。予定の前日はずっとお腹が痛い、みたいに(笑)。
なんで「普通」に楽しくできないんだろう、なんでこんなに緊張しちゃうんだろう。もっと普通にできたらいいのにって思うところがすごくあったんです。
そこを頑張ろうとしても、今までは何となく億劫に思ってしまっていました。ちょっと勇気がいることだったんです。一つひとつのことが。それが億劫じゃなくて、堂々とできるようになったら、それが私の中での「普通」なのかなって思っています。
少しでも「笑顔」になれることをしてみたら、きっと変われる
《有村さんはエッセイの中で、「これも個性のひとつなんだと頭では理解していても、心の中では『口元が気になる』という思いを抑えることはできませんでした」とつづっている。有村さんにとって、美容整形は前向きに生きるための手段の一つだった。手術の恐怖やダウンタイム(施術後の腫れやアザが回復するまでの期間)にも苦しんだが、家族の応援や、公表後のファンや世間からのあたたかい声に励まされ、今は「お化粧するのがすごく楽しくなった」という。仕事の幅が広がり、11月には初めての舞台主演も控えている。》
――コンプレックスがどうしても気になってしまう状況は、今は改善されましたか?
そうですね。今まではコンプレックスがあって、人の前で口を開けて笑ったり、歯を見せて笑ったりするのが嫌だなって思ってしまっていました。
それが一つなくなったことで、こうやって人と目を合わせてお話できるようにもなって。口を開けて大笑いできるのが楽しいなってすごく思えるようになりました。
――有村さんは自身のことをネガティブだとも言っていますが、自分を変えたいという思いで芸能界デビューして、芸名を本名に変えて。一歩を踏み出す覚悟を持っていて、すごく強い方だと思います。
全然、自分はネガティブだと思っています。たぶん世間知らずなだけなんじゃないかなって。
でも、もうあんまり怖いものはなくなったかな、という気がします。だから、今はもう少しコミュニケーション能力を高めて...もうちょっと友達を増やしたいなって思っています(笑)。
――こうやってお話していても、明るくてキラキラしたオーラが伝わってきます。最後に、コンプレックスに悩んでいる人たちに伝えたいことを教えてほしいです。
美容整形して顔が変わったので「可愛くなったね」って言っていただける部分もあるかもしれないんですけど、私は「表情」かなって思うんです。
やっぱり、明るく笑顔でいる人って、すごくキラキラしていて素敵で、一緒にいても楽しいと思うんです。
コンプレックスがひとつなくなったことで、私はいっぱい笑えるようになって、表情が明るくなりました。
美容整形で「心が変わった」と私は思います。でも、それは一つのきっかけであって、別に美容整形じゃなくても、髪型を変えてみるとか、髪色を変えてみるとか、メイクやファッションを変えてみるとか。いろいろな方法があると思います。
何か自分が少しでも「笑顔」になれるようなことをしてみたら、それだけで、人はすごく変わることができるんじゃないかな、って思っています。
《書籍情報》
有村藍里さんのフォトエッセイ『1mmでも可愛くなりたい。』は、扶桑社より発売中です。
コンプレックスとの向き合い方は人それぞれ。
乗り越えようとする人。
コンプレックスを突きつけられるような場所、人から逃げる人。
自分の一部として「愛そう」と努力する人。
お金を使って「解決」する人…。
それぞれの人がコンプレックスとちょうどいい距離感を築けたなら…。そんな願いを込めて、「コンプレックスと私の距離」という企画をはじめます。
ぜひ、皆さんの「コンプレックスとの距離」を教えてください。