民泊住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行される直前になって、民泊プラットフォーム「Airbnb」の対応が慌ただしく変わっている。
観光庁の通知を受けて、2日には同法に基づく届け出のない約4万件の物件を一斉に削除。さらに7日、届け出のない物件の宿泊予約を取り消し、代金は返金すると公式サイトで発表した。
一軒家やマンションなどで宿泊施設としての届け出のない「民泊」が急速に広がっていることなどを背景に2017年、民泊新法が成立。従来の旅館業法では想定されていなかった民泊を法的に位置づけることで「解禁」する代わりに、自治体に届け出ることを義務づけている。
観光庁は1日の通知で次のように求めている。
1法の施行日後の違法物件の予約については、順次、当該予約の取消や合法物件への予約の変更等の適切な対応を進める。
2法施行日前でも、仲介サイトへ物件を掲載中の事業者に対し、法に基づく届出を行う予定がない場合等には、すみやかに今後の予約の取消を行うことを推奨することや、宿泊予定者等に対して、合法物件への予約の変更を推奨すること
■エアビーと観光庁で主張に食い違い
同社は「柔軟な代案を検討してもらえなかった」と観光庁への不満を隠さない。対して観光庁は「以前からこの内容で進めていた」と反論している。
Airbnbは公式サイトで、観光庁の通知が「急きょ出た」と説明。「過去に観光庁からお示しいただいていた対応方針と異なる内容で、Airbnbにとっても驚きでした」として、「非常に残念ではありますが、観光庁に柔軟な代案をご検討いただくことは叶いませんでした。(中略)すでに確定済みの予約であってもキャンセルしなければならないとのご指導がありました」と説明。キャンセルされたゲストが代わりの施設に泊まる場合、差額を補塡するなど、キャンセルに対する補償として総額11億円を用意するという。キャンセルの影響を受ける人数は明らかにしていない。
この経緯について、観光庁観光産業課の説明は異なっている。ハフポスト日本版の取材に対し、同課の担当者は次のように言う。
「以前から、施行日以降の違法物件の宿泊は、施行日より前に予約を受けていても順次キャンセルしていくとAirbnbと確認していた。ところが5月、民泊関連の情報サイトで同社が施行前に受けた予約を継続しようとしている動きを確認したことから、同社にただちに事実関係や意思を確認した。すると、『法施行前に予約された宿泊は継続できると解釈している』と言われた。このため、法の趣旨を改めて説明し、通知を1日に出した」
Airbnbは5月に入り、6月14日からホストとの契約法人を変更をすると発表。民泊新法施行前の予約は、届け出の有無にかかわらず施行後も継続すると見られていた。
ところが観光庁の通知が出た翌日の6月2日、同社は、自治体に民泊業の届け出をした場合に交付される「届け出番号」のない無許可の民泊物件の掲載を一斉に停止。日経新聞によると、全国で6万2千件あった掲載物件が、一気に約1万4000件を割り、8割近く減った計算という。
■届け出の件数は伸び悩み
Airbnbで掲載物件が多かった自治体の一つ、東京都港区のみなと保健所生活衛生課の担当者によると、6月5日時点で、届け出があったのは計40件。うち書類がすべてそろい、受理されているのは5件だけだという。民泊新法で届け出の条件となっている「近隣住民への周知」「消防設備」が条件を満たさないケースが目立つという。
「掲載物件が多かったので、もっとくるかと思ったが、Airbnbが物件を一斉に削除した前後あたりから、慌てて駆け込みで届け出をしようとする人がくるようになった。急だっただけに書類がそろっていない人も多く、すぐには手続きも終わらず、施行をまたぐケースも少なくないだろう」という。