12月31日に放送される「第70回NHK紅白歌合戦」に、『AI美空ひばり』が登場する。
美空ひばりさんの歌声をAIで再現し、新曲「あれから」を歌唱するというNHK発足の一大プロジェクトだ。9月の特集番組放送後はネット上で驚きと賛否両論の声が上がった。
テクノロジーの力で、亡くなった人と「再会」する。そんな未来がくるのだろうか? 日本の外に目を向けると、過去にはマイケル・ジャクソンなどもCG映像でステージに蘇ったことがあった。
声をボーカロイドで再現、放送後は大きな反響
「AI美空ひばり」は、没後30年を迎えた昭和の歌姫・美空ひばりさんの新曲ライブを、現代のAI(人工知能)技術を用いて実現するというプロジェクト。
美空さんの声は、ヤマハが開発した歌声合成技術「VOCALOID:AI(ボーカロイド:エーアイ)」で再現。過去の音声データをAIが学習し、「神秘の歌声」と表現された本人の歌声に近づけた。
新曲の作詞を秋元康さん、振り付けを天童よしみさん、衣装デザインを森英恵さんが担当。企画には長男の加藤和也さんをはじめ、ファンクラブ会員など長年のファンの協力があったことも番組で放送された。
過去にはマイケル・ジャクソン、X JAPANのhideなども
かつてのスターを3Dホログラムなどのデジタル技術で蘇らせる手法は、過去にも繰り返されてきた。
海外では、2014年に音楽祭「ビルボード・ミュージック・アワード」でマイケル・ジャクソンが”復活”した。2012年の「コーチェラ・フェスティバル」では、25歳でこの世を去ったラッパー2PAC(2パック)の立体映像がステージに現れ、Snoop Dogg(スヌープドッグ)、Dr. Dre(ドクター・ドレー)と共演を果たしている。
▼マイケル・ジャクソンのホログラム映像。この時も賛否両論の意見が上がった。
▼2PACのコーチェラでのパフォーマンス映像
2020年には、アメリカの歌手ホイットニー・ヒューストンのホログラム映像を使ったコンサート・ツアーがイギリスで開催されるという。CNNによると、遺産を管理する義姉は「(ホイットニーさん本人が)ホログラムでステージに立つというこのアイデアをとても気に入ってくれるはず」とコメントしている。
日本では、2015年、横浜に開館したホログラフィック劇場「DMM VR THEATER」第1弾企画として、X JAPANのギタリスト・hideのホログラフィックライブが開催されたことがある。
問われる倫理観
しかし、こうした取り組みには常に倫理的な問題も伴う。
AI美空ひばりの特集番組が放送された後は、「感動した」というコメントと同時に、「美空さん本人が望んでいるのか」と疑問視する声もあった。
また、番組で紹介されていたように、人工知能技術を使って実在の人物を再現し、本物に見せかける「ディープフェイク」動画の問題も懸念される。
賛否両論はあれど、AI美空ひばりの紅白出演が大きな注目を集め、エンターテインメントの新たな可能性として議論が沸き起こることは間違いない。