3月8日の国際女性デーから2日後、衝撃的なニュースがアフガニスタンで報道された。同国政府が「12歳以上の女子生徒は、男性が出席するイベントで歌ってはならない」という驚くべき通知を出したのだ。SNS上で「人権侵害だ」と激しい抗議運動が起きた結果、政府は通知を取り消した。
■男性教師が女子生徒に歌を教えることも禁止
首都カブールに本拠を置くテレビ局「アリアナニュース」は3月10日、カブール教育局の通達文書を公式Twitterにアップした。そこには、12歳以上の女子生徒は「100%女性が参加する」イベント以外では歌ってはならないと書かれていた。
同日に掲載された記事によると、教育省の広報担当者ナジバ・アリアン氏は歌唱禁止の事実を認めた。その上で、「高校生や中学生の肩にかかる膨大な量の勉強」について、家族からの苦情を受けたための措置だと述べた。
禁止令の対象となるのはアフガニスタン全国の公立学校と私立学校。12歳以上の女子生徒が歌を歌うことができるのは、女性だけが参加する集会のみ。男性の教師が、12歳以上の女子生徒に歌を教えることも禁止された。この規則に従わない場合は、法的措置に直面する可能性があるという。
■SNS上で「#IAmMySong」の抗議運動が広まる
この歌唱禁止令はSNS上で大きな反発を巻き起こした。
アフガニスタン国立音楽研究所の創設者であるアフマド・サルマスト博士は11日、「禁止令は基本的人権などに関する国内法や国際法に違反している」と公式Twitterで抗議した。
この中で、「#IAmMySong」のハッシュタグを使って「女性の音楽の権利のために歌って」と呼びかけたことで抗議運動がSNS上で広まった。
AP通信によると、アフガニスタンの人権活動家であるシマ・サマー氏も3月18日に「共和国内でのタリバン化の動きだ」と批判した。
イスラム過激派「タリバン」が統治していた時代のアフガニスタンでは、音楽を含む娯楽と女子の教育の両方を禁止していたからだ。
■政府が撤回。「コロナから少年少女を守るのが狙いだった」と説明
こうした抗議の高まりを受けて、政府は急きょ方針転換した。現地ニュースサイト「TOLOニュース」によると、文部省は3月13日に声明を出して、禁止令を撤回。カブールの教育局の通達について「文部省の公式の立場と方針を反映していない」と述べた。
しかし、AP通信では新しい通達が出て、12歳以上の少年と少女の両方が公の場で歌ったり演奏したりすることを禁止されたと報じている。
教育省の広報担当者であるアリアン氏は、一連の通達について「少女の歌唱を禁止するのが目的ではなく、新型コロナウイルスの感染拡大の可能性があるイベントに少年と少女が参加しないようにするのが狙いだった」と説明していた。