再び国内株式から大規模な資金流出
2017年9月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入を見ると、国内株式からの資金流出が大きく、流出金額は2,000億円を超えた【図表1】。
9月の国内株式市場は上旬こそ北朝鮮情勢などが嫌気され調整したものの、中旬以降は円安や米株高などを好感し日経平均株価が連日、年初来高値を更新するなど、急伸した。
そのような市場環境の中で、国内株式を売却して利益を確定させる投資家が多かったようだ。また、内外REITからも資金流出があり、特に外国REITは流出金額が1,000億円を超えた。
その一方で、外国株式、バランス型、外国債券には引き続き資金流入していたが、流入金額は8月と比べて小額であった。
為替ヘッジありのマルチストラテジー債券ファンドが人気
個別ファンドへの資金流入を見ると、1位が「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド Aコース(為替ヘッジあり 年2回決算)」と為替ヘッジありのマルチストラテジー型の外国債券ファンドであった【図表2】。
このファンド以外にも7位の「新光ピムコ・ストラテジック・インカム・ファンド9月号」も同様のタイプのファンドであった。先進国の金利が低い中、様々な債券を組み合わせることによってリスクをある程度抑えた上で相対的に高い金利が享受できる商品が人気のようだ。
加えて、今年に入って為替が1ドル108円から115円の間で行き来しており、株式ファンドと比べて相対的にパフォーマンスに対する為替の影響が大きい債券ファンドでは、為替変動リスクを取らないファンドが投資家に好まれているようだ。
その他では、上位ファンドのうち2本が9月に新設された外国株式ファンドであった。2位の「新シルクロード経済圏ファンド」が日本を除くアジア、中東、東欧ロシアなどの新興国株式に投資するテーマ型ファンドである。
その一方で、9位の「世界eコマース関連株式オープン」がテクノロジー系のテーマ型ファンドである。その他も6位にテクノロジー系のテーマ型ファンド、10位にバイオ系のテーマ型ファンドが入っており、テーマ型の外国株式ファンドが引き続き人気であった。
また、5位が「野村インド株投資」、8位が「野村インド債券ファンド(毎月分配型)」とインドへの関心も引き続き高かったようだ。
ただし、9月後半にインドの国内情勢に加えて米国の金融政策の動向を受けてインド株は急落し、ドルに対してインド・ルピー安が進んだ(円もドルに足して下落したため、対円ではほぼ横ばいであった)。
インドに限った話ではないが、今後も先進国の金融政策の動向次第で新興国の通貨や株式が大きく変動する可能性があるため、注意が必要である。
足元では米株のテーマ型ファンドやアクティブ・ファンドが好調だが
9月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、原油先物、もしくはシェール関連株式ファンドが高パフォーマンスであった【図表3】。9月は、8月に米南部を襲ったハリケーンの影響や下旬に中東の地政学リスクが上昇したため、世界的に原油価格が上昇した。原油高の恩恵を直接受けたファンドが好調であったといえる。
また、一部の米国株式ファンドも好調であった。上位のうち5ファンド(3位、4位、6位、8位、10位)が米国株式ファンドで収益率は軒並み10%前後だった。
NYダウ・ジョーンズやS&P500に連動するインデックス・ファンドは4%台であったことを踏まえると、それらのファンドは米国株式市場全体以上に大きく上昇したことが分かる。
9月は良好なパフォーマンスのファンドが多かった米国株式のテーマ型ファンドやアクティブ・ファンドであったが、中長期のパフォーマンスはどうであったのだろうか。
米国株式のインデックス・ファンドと非インデックス・ファンド(テーマ型ファンドやアクティブ・ファンド)の過去1年(2016/10~2017/9)、過去3年(2014/10~2017/9)の(手数料控除後の)パフォーマンスを集計した【図表4】。
過去1年のパフォーマンスの最大値を見ると、非インデックス・ファンドでは53%(9月好調であった「マニュライフ・米国銀行株式ファンド」)でインデックス・ファンドの40%を大きく上回っていた。同様に過去3年の最高値も非インデックス・ファンドが52%であるのに対して、インデックス・ファンドが43%であった。
期間によらず、非インデックス・ファンドの中にはインデックス・ファンドを上回る収益を上げていたファンドがあったことが分かる。
その一方で中央値や最小値を見ると、過去1年、過去3年共に非インデックス・ファンドはインデックス・ファンドと比べて劣後していた。また、最大値と最小値の差もインデックス・ファンドと比べて、非インデックス・ファンドの方が大きかった。
まさに、テーマ型ファンドやアクティブ・ファンドはインデックス・ファンド以上のパフォーマンスが期待できるものの、当たり外れが大きいといえよう。
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【関連レポート】
(2017年10月4日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 研究員