毎年、3月8日「国際女性デー」に注目を集める、世界経済フォーラムによる「ジェンダーギャップ指数」。2021年3月に発表された結果では、日本は153カ国中120位でした。
その項目の中でも、特に注目を集めるのが「女性管理職登用」の割合。
各企業、あの手この手で取り組みを進めていますが、政府が掲げる目標にはまだまだ及びません。国際的に比較しても、日本は管理職に占める女性割合が著しく低いことが明らかです。
この現状について、「女性は昇進を望まないから」「管理職を目指す女性が少ないから」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)で、片付けられるのでしょうか?
「女性活躍企業1位」アクセンチュアの場合は...
2021年5月、「女性が活躍する企業BEST100(日経WOMEN)」において、総合ランキング、「管理職登用度」部門でともに1位に選出された、アクセンチュア株式会社。
同社は、全管理職に占める女性割合が19.2%(2021年12月時点)と、全国平均の8.9%(※)を大きく上回っています。同社で「女性管理職」として働く3人の女性に、「昇進を望んだ」背景を聞きました。
みんなにとって“手の届く”管理職に。
「女性のキャリアに、いくつもの道を作りたいんです」
石田さん:2013年の入社当時から続けているI&D活動を通して、多くの女性社員と話す中で、「私、一生キャリア志向です!」っていう人はすごく少ないんだと感じました。今年は仕事最優先で頑張りたいけど、来年は少しゆっくりペースにしたい、というように、誰にでも波がありますよね。女性はなおさら、ライフイベントによって時間の使い方が変わりますから。
一方で、「キャリアに一直線のルートしか用意されていない」と感じる人は少なくないのではないでしょうか。常に仕事最優先でキャリア形成するルートしかなくて、一度ペースを緩めたら二度とチャンスがないかのように見えてしまう。その選択肢だけでは、あまりにも難しいですよね。
だからこそ、私はみんなにとって手が届くようなマネジャー像を見せたい。「管理職になっても“大丈夫”なんだ」というのを、働き方を通して伝えたいんです。
昇進するまでは、管理職って「一人でなんでもできる人」だと思っていました。でも自分がその立場になってみると、複数のプロジェクトを見なければならないけど、使える時間は今までと変わらないので、一人で全部やるなんて無理。手が回らなくなる前に上司の助けを得たり、チームメンバーを頼ったり。良い意味で力を抜ける人が優秀な管理職なんだとわかったんです。
女性社員とのネットワークを広げたくて始めたI&Dの活動も、今では良い意味で息抜きになっています。
マネジャーという立場から「今こんな仕事をしてるよ」「こんな目標ができたよ」と近況をシェアすることで、「自分にもできそうだな」と思ってもらえたらうれしいです。そして、昇進を目指す女性が増えることで、サポート体制を充実させることができるのではないかと思っています。
数だけ揃えても無意味だ、という批判もありますが、女性管理職の数が増えないと、「どんなサポートが必要なのか」「女性のキャリアにはどんな選択肢があるのか」も分かりませんから。とはいえ、昇進が女性活躍の全てではないので、アクセンチュアから、女性のキャリアにいくつもの道を作っていきたいですね。
母になってから管理職に挑戦。
「自分に対する評価が“昇進”なのであれば、頑張ってみようかなって」
川口さん:私自身はもともと、「早く昇進したい!」というタイプではなかったのですが、新卒当時、直属の管理職の上司が女性だったことや、国内海外問わず管理部門には女性管理職が多かったこともあり、憧れはありました。
一方、アクセンチュアには「この人、すごく素敵な仕事するな」と尊敬できるメンバーが年齢やクラスに関わらずたくさんいるんです。だから、「昇進だけが目標じゃないよね」「目の前の仕事を一生懸命やった先に“昇進”という評価があれば良いな」と思っていました。
初めて管理職になったのは、今から4年前。入社21年目でマネジャーに昇進し、昨年12月、シニア・マネジャーになりました。仕事柄、スタッフの頃から自分が動くことで会社の仕組みを変えたり、働きやすい環境を作ったりできる事にやりがいを感じていましたが、昇進という評価をいただき、より「会社として、人としてどうあるべきか」考えるようになりました。ワーキングマザーではありましたが、娘もすでに小学生だったので、働き方への不安はなかったです。
10年以上前に出産した時、女性のキャリアって平坦な道じゃないなと思ったんです。「自分のキャリアは、この先どうなる?仕事を任せてもらえるだろうか?」と不安になったり、職場復帰したら「自分は家庭をないがしろにしているのでは」と悩んだり。
私自身、育児の面では後悔もあるんです。親にはだいぶ負担をかけましたし、育児に関わらなかったぶん、娘との大切な「何か」が欠けている気がして。でもその時間は戻ってこないんですよね。子どもも仕事も日々変化しますが、育児は「超」長期プロジェクトなので、その視点で限られた時間を何に使うか、常に判断する必要があるなと気づきました。
だからこそ、特に育児中のチームメンバーとは働き方についてきちんと話をして、パフォーマンスを発揮してもらえるように工夫をしています。「今は家族との時間を最優先にしたい」と思ったら、そういう働き方、休み方を選択できる社会に向かっているので、安心して自分らしいキャリアを築いてほしいなと思います。
入社当時から昇進を目指していたけれど...
「“最終関門”を前に、昇進を1年待ってもらいました」
桜井さん:日本では、「昇進を望む女性が少ない」などと長年言われていますが、アクセンチュアでそんな風に感じたことはありません。ただ、管理職の中でもポジションが上がるにつれて、男性が多くなるのは事実。社会で多くの女性が感じる「私にできるかな?」という不安、実は私自身も感じていました。
私は入社当時から昇進を目指してきましたが、いざ「そろそろ、管理職チャレンジしてみる?」と打診された時はかなり悩みました。自分の性格上、周りと比べて「あの人はこれができるからマネジャーになったんだ。自分はまだできないから...」と思ってしまって。
その気持ちを正直にPeople Lead(キャリアカウンセラー)に話すと、「今はまだ自信がないかもしれないけど、ポテンシャルがあるから」と言ってもらえて。「全てできなくてもこれから成長すれば良いんだ」と思い、挑戦することにしました。
その後、シニア・マネジャーを経て、マネジング・ディレクター昇進の打診があったのが2019年。その時は、相当パニックになりました(笑)。いよいよ“最後の関門”が来たか...と。
自分としては「ポテンシャル」すら足りないと思っていたので、いろんな先輩にマネジング・ディレクターになる心構えを相談しました。それぞれの視点からアドバイスをもらって自分の考えを整理した結果、昇進を1年遅らせることにしたんです。結果的に、1年かけて覚悟と自信を持てたのはすごく良かったと思っています。
周りと比べてプレッシャーや息苦しさを感じてしまった自分の経験を踏まえて、後輩たちには、「私にはこれができる」「私はこれが好き」という視点を忘れないでほしいと伝えています。そういう視点で日々仕事をしていれば、自ずと自分がやりたいこと、築きたいキャリアが見つかると思うんです。
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アクセンチュアで管理職として活躍する3人の女性が歩んできた道は、三者三様。若くして管理職になり、試行錯誤しながら進む石田さん。ワーキングマザーになってから管理職に挑戦した川口さん。入社当初からの目標、“最後の関門”を前に足がすくみ、しっかり時間をかけて乗り越えた桜井さん。
昇進を望み、自身と葛藤し、目標に悩んだタイミングもそれぞれでした。
日本の女性には、もっとたくさんの選択肢があっても良いはず ──。
みなさんは、これからどんなキャリアを築いていきたいですか?