新型コロナウイルスの感染拡大の対策として「安倍首相が給与を30%返納している」という情報がネット上で拡散している。この情報は不正確であることが、ハフポスト日本版の取材で明らかになった。
首相給与の30%減額は、東日本大震災の復興財源に充てるため野田政権時の2012年4月からスタート。安倍首相もそれを引き継いだ上で、2014年3月からは行財政改革を目的として、30%返納している。内閣官房の担当者は「コロナで特別に、という措置ではない」と話している。
■官房長官が「すでに首相は30%返納」と発言
菅義偉官房長官は4月13日午前の記者会見で、新型コロナウイルス対策について話した。
記者から「(新型コロナ対策の)外出自粛要請で多くの国民が生活不安に陥っているという指摘があります。国民に寄り添う姿勢を示すため、例えば首相や閣僚が自身の給与を減額、返納する考えはありませんか?」という質問が出た。
これに対して菅官房長官は「閣僚の給与返納でありますけども、すでに総理が月額給与および期末手当の30%、国務大臣は20%に相当する額を国庫に返納いたしております」と回答した。
その上で、「現在は、感染拡大防止に向けて全力で取り組んでいる最中であり、まさに感染を抑えることが、国民の皆さんの不安に対して求められている対応と思います」と続けた。
これを受けてSNS上では新型コロナ対策として、安倍首相が給与を返納していたと受け取る人が相次いだ。
Twitter上では「一部の人が『給与を返納しろ!』と騒いでる中で、何らアピールする事なくサラリとやっていた総理」「安倍総理、すご~い」などと、安倍首相の姿勢を称賛する声が広がった。
また、この発言に関する報道が見当たらないとして、「この内容が報道されないあたりメディアのレベルが分かりますね」などと、マスコミの報道姿勢を皮肉る声も出ていた。
■内閣官房に確認したところ…
記者の質問と菅官房長官の発言だけみると、確かに新型コロナに絡んで首相や閣僚が給与の一部を返納しているようにもみえるが、真相はどうなのだろうか。
ハフポスト日本版では4月14日、閣議に関する業務をする「内閣官房内閣総務官室」の担当者に取材した。すると、安倍首相の給料返納は事実だが、新型コロナとは無関係であることが分かった。以下は、担当者とのやり取りだ。
―― 菅官房長官が発言していた「閣僚の給与返納」ですが、いつから実施されているものでしょうか?
給与カット自体は、旧民主党の野田政権時代の2012年4月から始まりました。東日本大震災の復興財源の確保を目的として、給与臨時特例法で首相は月30%、閣僚と副大臣は20%、政務官は10%の給与が減額されました。同年12月から始まった安倍政権もこの特例法に沿って、2014年3月までは給与を減額しました。特例法が失効した2014年4月以降は、内閣改造のたびに閣僚懇談会で「申し合わせ」をすることで、特例法と同じ比率で給与を「返納」するようになりました。減額ではなく、正規の給与を受け取った上で自主的に返納しています。
――毎月返納される首相の給額はいくらですか?
総理大臣の俸給月額が約241万円なので、その30%の約72万円です。
―― 給与返納の申し合わせをした理由は何でしょう?
内閣として、行財政改革を引き続き着実に推進する観点から、国庫に返納しています。
――新型コロナウイルス対策とは関係ないのですか?
「コロナで特別に」という措置ではありません。