(注意:記事には自殺の描写が含まれます)
アメリカ・ワシントンD.C.にあるイスラエル大使館の前で2月25日に焼身自殺を図った米空軍の兵士が、死亡した。
当局は亡くなった人物の身元を明らかにしていないものの、焼身自殺をライブ配信した映像で、自身を25歳のアーロン・ブッシュネルだと名乗っている。
「大量虐殺には加担できない」
ブッシュネル氏がイスラエル大使館前で自らに火をつけたのは25日午後で、首都警察がシークレットサービスとともに消火にあたった。
消火後に病院に搬送され、命にかかわる重症を負っていると伝えられていたが、米空軍広報は26日、ハフポストUS版の取材に対してこの人物が死亡したと伝えた。
ブッシュネル氏は、自殺の様子をライブストリーミングサービスTwitchで配信しており、この時の動画を、フリージャーナリストのタリア・ジェーン氏がブッシュネル氏の家族の許可を得た上で焼身自殺が映っている箇所にモザイクをかけて、ソーシャルメディアに投稿した。
動画の中で、ブッシュネル氏は「私はアメリカ空軍の現役隊員であり、もはや大量虐殺に加担するつもりはない」と述べ、自殺の動機をイスラエルによるガザ攻撃とアメリカの支援に対する抗議だと説明している。
「私はこれから、過激な抗議行動をしようとしています。しかし、パレスチナの人々が植民地支配者たちによって経験してきたことに比べれば、まったく過激なことではないのです。私たちの支配者階級は、それを当然だとみなしているのです」
ブッシュネル氏はイスラエル大使館の入り口と思われる場所に到着した後、携帯電話を置いて自分自身に液体をかけた。
近くにいた誰かが「そこの方、どうしました?」と声をかける中で、ブッシュネル氏は液体が入っていたボトルを投げ捨てて自らに火を放ち、炎が激しく燃える中で「フリー・パレスチナ(パレスチナを解放せよ)」と繰り返し叫んだ。
着火してから約1分後に白いシャツを着た警察官がブッシュネル氏に駆け寄り、消火器を放射。その間、シークレットサービスと思われる別の人物がブッシュネル氏に銃を突きつける様子も映っており、「銃はいらない、消火器を」と叫ぶ声が聞こえる。
イスラエルを支援するアメリカ
NPOメディアのアトランタ・コミュニティ・プレス・コレクティブは25日、ブッシュネル氏が事前に同メディアや他の複数の報道機関に連絡をして「映像を保存し報道してほしい」と求めたと明かした。
アメリカでは2023年12月、ジョージア州アトランタにあるイスラエル領事館前でガザの軍事攻撃に抗議した人物が焼身自殺を図っており、今回の事件は2例目となる。
2023年10月7日に武装勢力ハマスがイスラエルを襲撃して、同国では約1200人が死亡し、約250人が人質になった。人質の半数は2023年11月の一時停戦中に解放された。
一方、イスラエルの報復攻撃でガザでは3万人近いパレスチナ人が死亡しており、支援物資の搬入も阻まれている。南アフリカはイスラエルの攻撃を「ジェノサイド(大量虐殺)」と非難し、国際司法裁判所(ICJ)に即時停戦を求める裁判を起こした。
アメリカはイスラエルの最大の軍事支援国で、停戦を求める国連の決議案にたびたび拒否権を行使してきた。
こういったアメリカの姿勢は、諸外国や人権機関だけではなく、国内からも批判されている。
親パレスチナ派の人権活動家アシシュ・プラシャールは26日、「バイデン大統領には、ブッシュネル氏の死の責任がある。軍隊の司令官、大量虐殺への出資者、そしてあらゆる平和的な抗議行動を無視してきた人物として、バイデン大統領には責任がある」と述べた。
ブッシュネル氏が焼身自殺をした25日の朝には、同氏のものと思われるFacebookアカウントに、アメリカのイスラエル支援に反対するメッセージが書き込まれている。
「私たちの多くは、自分自身に『もし自分が奴隷制度の時代に生きていたらどうするだろう?ジム・クロウ法がある時の南部に生きていたら?あるいはアパルトヘイトの時代だったら?もし自分の国が大量虐殺をしていたら、私はどうするだろう?』と尋ねたいのではないでしょうか。その答えは、今まさにそれが起きているということです。たった今起きているのです」
ホワイトハウスはブッシュネル氏の焼身自殺について、まだ正式なコメントを発表していない。
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。