いよいよ国の原子力規制委員会からボクもんじゅの研究施設の使用停止命令がでるかもしれないよ。
けさの段階では朝日新聞だけが報じていたからちょっと不安だったんだけど、つづいてNHKや共同通信などからもニュースが出たので、どうもほんとうに規制委員会は停止命令にむけて調査をすすめているみたい。
もんじゅ 使用停止命令出す方向で調査 (NHKニュース)
福井県にある高速増殖炉『もんじゅ』について、国の原子力規制委員会は、重要な機器の点検漏れなどが相次いでいることから、法律に基づく施設の使用停止命令を出す方向で調査を進めていることが分かりました。
ところで、ボク高速増殖炉もんじゅってどんなふうに問題があるんだろう?
もんじゅと核燃料サイクル計画、そしてふつうの原発との関係って?
知っている人も多いけれど、おさらいのためにポイントをQ&A形式でまとめてみたよ。
Q. 炉の種類は?
A. 高速増殖炉っていうんだよ。
Q. それって、どんな原子炉なの?
A. ふつうの原子炉よりも「高速」の中性子をつかって核分裂反応を起こして、燃料のプルトニウムを「増殖」させようっていうもの。だから「高速増殖炉」なんだよ。
Q. 成功しているの?
A. ぜんぜんうまくいっていないよ。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど、これまでに研究していたほかの国も、もう計画を中止しているよ。ただし、フランスは高速増殖炉への未練を捨てきれないので、日本に研究をつづけさせたいなーと考えているよ。
Q. じゃあ、うまくいってないのに、なんで高速増殖炉が必要だっていうおはなしになるの?
A. 高速増殖炉が「核燃料サイクル計画」の一部をになっているからだよ。
Q. 核燃料サイクルってどんなもの?
A. ふつうの原発から出る使用済み核燃料、つまり「ゴミ」をリサイクルしてあたらしい核燃料につくりかえよう、そしてそれを高速増殖炉で使おう、そしたらいつまでも核燃料もぐるぐるまわして使えるから、ウランとか燃料を輸入してこなくっていいし......、という夢みたいな計画だよ。
Q. で、その核燃料サイクル計画ってうまくいってるの?
A. はっきりいって、破綻しているよ。燃料がいらなくなる「夢の計画」だったけれど、ずっと夢のままなんだ。核燃料サイクル計画の構想ができたのは1960年代、施設をつくりだしたのは1980年代、動きだしたのは1990年代なんだけど、そのための施設である高速増殖炉もんじゅも、青森県・六ヶ所村の再処理工場も、いまだに失敗つづきでうまくいくみこみがないの。
もし、万が一奇跡的にうまくいったとしても、80年代につくりだした設計の施設が、2010年代のいまにはたしてマッチしているのか、そもそも老朽化していないのかとか、ギモンがいっぱいなんだよ。
Q. じゃあ、なんで核燃料サイクル計画をやめないの?
A. それは、核燃料サイクルをあきらめるっていうことは、つまり、原発から出る使用済み燃料......「ゴミ」のリサイクルをあきらめます、ってことになるからだよ。
Q. 使用済み燃料をリサイクルできないと、どうしてこまるんだろう?
A. 使用済み燃料がリサイクルできないとなると、なんとかして捨てないといけないでしょ。でも、ちかづくと人が死んじゃうくらいのつよい放射能を発している使用済み燃料って、管理方法がないんだよね。
Q. じゃあ、これまでずっと原発を動かしてきたけど、そこから出るゴミのあとしまつ方法は考えられていなかった、っていうこと?
A. うん。ゴミのかたづけについては、棚上げにしてきたんだよ。「原発はトイレのないマンション」っていう言葉は、そういう意味なの。
Q. うーん。そしたら、これまでに出た使用済み核燃料はどうやって保管してるの?
A. 仮置き場、ということで、全国各地の原発にある「使用済み燃料プール」のなかでしずかに眠っているんだよ。
Q. あ、ふくいち君のニュースでよくきく「燃料プール」って、もしかしてそのこと?
A. そうそう。ものすごくあぶないものなのに、かんたんに水をはったプールに入れておいただけだったから、地震や津波でこわれちゃって、そうそう近づけなくなっちゃってるんだよね。
Q. あぶないんだね。じゃあ、高速増殖炉をあきらめたら、自動的に核燃料サイクル計画もあきらめることになって......、「ボクたちには使用済み燃料をどうにもできません」ってみとめちゃうことになるのかな。
A. うん、そうだよ。ゴミのあとしまつができなくなっちゃうわけだから、「じゃあゴミが増えてゆく原発をつかいつづけるのか?」っておはなしになっちゃうでしょ。
Q. そっか! これまでは「ゴミのリサイクル方法はそのうち開発されますから、安心して原発を使いましょう」っていってきたんだね。でも、核燃料サイクル計画が破綻してるのをみとめちゃったら、それがウソだということがばれちゃう。
A. そうそう。そしたらふつうの原発を動かしつづけるのもむずかしくなっちゃって、脱原発しないといけなくなるでしょ。
Q. あー、だから核燃料サイクル計画をやめたくないんだね。
A. そういうことみたい。日本じゅうの原発の使用済み燃料プールは、もうかなりギリギリまでいっぱいになってきてるから、原発を動かしたくても、ゴミ置き場がなくて、動かせなくなっちゃうよね。
Q. へー。でも、核燃料サイクル計画ってお金がかかってるんでしょ。そんなにうまくいってない計画なのに、なんでやめようっていわないんだろう。
A. ボクもんじゅだけでこれまでに1兆円いじょう、六ヶ所村にいたってはそれの何倍もかかっているから、経産省さんも電力会社さんもかつては「正直、もうやめたい......」って考えてうちあわせを重ねていた時期もあったみたい。でもやっぱりやめるってことは「これまでまちがってました」って責任とることになるから、ふみきれなかったんだって。
Q. 動いていないっていったって、いまも予算は使っているんでしょ?
A. そうだよ。高速増殖炉もんじゅだけでも、1日に5500万円......。
Q. はげしいね。
A. そうだね。
Q. ほかに、核燃料サイクル計画をやめると困る人とかっているのかな?
A. 電力会社さんはこまっちゃうみたいだよ。
Q. なんで?
A. これまでは使用済み核燃料を「これはいつかリサイクルできるから役に立つんです。だからそれまでとっておくんです」といっていたものが、ぜんぶゴミになっちゃうわけでしょ。つまり、資産として計上していたものが、一瞬にして無価値なものに......、それどころか、お金をかけて処分しないといけないお荷物になっちゃう。
Q. あー、つまり、核燃料サイクル計画の破綻をみとめると、電力会社さんのPLが悪化するんだ。
A. そうそう、そういうこと。現実の持ち物はなにもかわらなくても、経営状態が悪くなっちゃうの。
Q. でも、実質はもう破綻してるわけだから、いつ認めるかっていう時間の問題なわけだよね。
A. そうだね。でも、それをずっと先のばししてるんだよね。
Q. でも、ここでもし規制委員会から「高速増殖炉もんじゅの使用停止」がじっさいに命令されたら?
A. うん。使用停止はただ「使っちゃダメ」っていうことだけど、それがながびいて、「もんじゅなんてムダだ」とか「廃炉しろ」「そもそも核燃料サイクル計画はムダ遣いはやめてしまえ」って議論に発展したら、それはとてつもないインパクトがあるよ。
Q. 「核燃料サイクル計画をあきらめる=原発を使いつづける理屈がなくなってしまう」ってことなんだよね。
A. うん。だから、もしも規制委員会が停止命令を出して、そのあいだに国の政治がもんじゅを見直すって議論をはじめるとしたら、それはそのまま、脱原発におおきく舵を切ることになるかもしれないの。
Q. はー。壮大だね。それにしても、「やめることを決められない」って、たいへんなことなんだね。
A. うん。むなしくなるよね。太平洋戦争のおわりの時期に、海軍も陸軍も外務省も「日本はもうだめだ」ってわかってたのにだれも本音ではなせなくて、終戦がずるずるながびいたのを思いだしちゃうよ。
Q. 泣けてきちゃうよ。
A. やめてよ。もんじゅで使ってるナトリウムは、水にふれるだけではげしく燃えちゃうんだよ。涙は禁物だよ。
(※この記事は「もんじゅ君のブログ」より転載しました。)