私の住む新潟県南魚沼市の浦佐地区はここ数年でスキー場が二つ潰れ、多くの旅館が廃業に追い込まれた。旅館だった建物が立ち並ぶ所から徒歩10分の所にあった空き寺の建物を私は改築し、旅館業の許可を取り、民宿として先月開業した。「旅館が次々と潰れている所に、なんで民宿なんて始めるのか?」と多くの人から言われた。
しかし、蓋を開けてみたら、凄いことになった。開業して45日間で12か国から90人が予約し、すでに60人が宿泊した。8月の稼働率は9割弱。頂いた口コミ14件はすべて五つ星だ。
なぜ、観光地でもなく、近年旅館の数が激減した浦佐に外国人がやってくるのか?隣の十日町市で大地の芸術祭という大イベントが開かれていることや、お寺だった建物に泊まれるということが成功の理由かもしれない。
しかし、一番大きな理由は、私がこの民宿を大手民泊サイト「エアービーアンドビー(以下エアビー)」に掲載したことだと思う。
「闇民泊」という言葉が先行し、日本ではあまり良いイメージがないエアビーだが、10年前に米国で設立され、すでに世界190カ国、3万4000の自治体で500万件の宿泊所を提供し、グローバルブランドを確立した。日本国内のどのトラベルサイトよりも世界的知名度があるため、多くの外国人は日本国内旅行中にエアビーで宿泊所を探している。
エアビーは、今年5月まで国内に6万件の宿泊物件を掲載していたが、6月に行政に登録していない物件をすべて削除したため、1‐2万件にまで減少したとされる。無論、海外にいる外国人はそんなことは知らないため、エアビーで宿泊所を検索する人数は増え続けている。そのため、エアビーにいくつも宿泊所を掲載している私の友人は「一気に予約件数が増えた」と喜んでいる。つまり、今こそ、エアビーを活用して、外国人を呼び込むチャンスなのだ。
「そんなこと言われても、空き室や空き家なんてないし、民泊登録する手続きが複雑だって聞いた」と言う人がいるかもしれない。エアビーに掲載されているのは、空き室や空き部屋を貸し出しているものだけじゃなく、一般の旅館やホテルもたくさんある。旅館業の許可があって一定の基準を満たせば無料で掲載でき、世界中に広報できるわけだから、むしろ掲載しない方がおかしい。だから、外国人を呼び込みたい旅館やホテルは、今すぐエアビーに掲載すべきだ。作業はとても簡単で1時間もかからないだろう。
「外国人には来てほしいけど、英語を話せるスタッフがいません」と言う人がいるかもしれない。エアビーに掲載されている物件の大多数は素泊まりの「家主不在型」だ。英語が話せるスタッフどころか、スタッフがいないのだ。プロの翻訳家を雇って、英語でチェックイン方法やハウスルールをしっかり書いておけば、ほどんどの旅行客は滞在中困らない。知り合いに1人でも英語ができる人がいたら、その人にエアビーのアカウント管理をお願いし、ネットでお客対応も可能である。
「見知らぬ外国人がたくさん来られるのは不安」という方もいるかもしれない。そういう方は、「外国人」「観光客」「犯罪」をキーワードに検索してみてほしい。私は毎朝新聞を隅々まで読んでいるが、外国人観光客による犯罪というのは聞いたことがない。なぜか?物価が高い日本に来られる外国人というのは限られた富裕層だ。しかも、観光地でもない浦佐に来るということは、日本国内をすでにそれなりに旅行している可能性が高く、富裕層の中の富裕層ということだ。実際、私のお客の中には、ネット検索サイト「グーグル」の社員や、イギリスの政府系機関の局長など、普段お目にかかれない富裕層の方たちが含まれていた。
彼らは浦佐に興味を持って来たのではなく、「エアビーで宿を探していたら、ここに行き当たった」から、浦佐に来てくれたのだ。
地方在住の方で外国人観光客を呼び込みたい方は、今すぐ、周りの旅館やホテルをエアビーに掲載するよう働きかけるべきだ。もし、掲載の仕方がわからないという方は、いつでも私にメールで連絡してください。yokuroi(アットマーク)hotmail.com