※この記事はアメリカ在住のライターによるブログの為、離婚に関する手続きや費用、期間などは日本とは異なりますのでご了承ください。
離婚を切り出したあの夜、他人の反応なんて気にしていなかった。離婚への偏見や、2年にも満たなかった短い結婚生活について考えもしなかった。唯一頭にあったのは「私は変わってしまった」ということだけ。
ゆっくりと、時間が経つにつれ、私たちの価値観はズレていった。誰が何かしたわけでもない。ただ、私が約10年前に彼と出会った頃とは違う人間になってしまっただけの話。彼を傷つけてしまった自分への嫌悪感に苛まれながらも、もう彼を愛してはいなかった。何というか...もうおしまいだった。
過酷な道のりの始まり。まずは膨大な書類
離婚そのものに関して言えば、手順は他の事柄と変わらず、まずはGoogleで検索すれば良いと思った。子どもはいないし家も賃貸、銀行口座だってほとんど共有していなかった。そう難しいはずはない、と思った。
しかし、私が調べて辿り着いた現実は血の気の引くようなもので、「どんなにシンプルな状況下でさえ、離婚は人生において最も複雑な出来事の1つ」というものだった。中には約150ドル(1万6,000円)で離婚の流れを説明するサービスを提供しているサイトや、 約1500ドル(16万円)で離婚を手際良く済ませることを保証しているものもあった。
しかも、この金額は弁護士を雇わない場合に限ったもので、住んでいる州や離婚する両者の関係によって、多くの場合は弁護士を雇うことになる。調べてみた結果、 離婚にかかる費用の平均は一人当たり約15000ドル(160万円)。しかし弁護士を雇うお金や裁判費用、その他の分野の専門家や不動産鑑定、税務アドバイザーや親権を巡る審査 など、掛かり得る費用は計りしれない。
そんな大金を払う気は無かったので、約1万6000円程度のサービスを選んだ。必要書類の記入のみを担うサービスで、書類の申請までしてくれるわけではない。額が額なら対応も対応というわけだ。
私のような「かわいいレベルの離婚」でさえ、それは過酷な道のりだ。いくつもの段階があり、多くの書類や証明、裁判所とのやりとり、そして時間が必要だ。カリフォルニア州では、相手の署名をもらった書類を提出して離婚が成立するまで6カ月かかるが、弁護士を雇ったり、調停や仲裁裁判がある場合、3〜4年かかることもある。(詳しく知りたい場合はこちらのオリジナル記事を参照。日本の場合は手続きや費用は異なります)
疲弊した私を待っていた孤独
それらの作業全てを終えると、私は泣き叫びたくなった。膨大な書類などの作業に疲弊しただけでなく、このことを相談できる相手がほとんどいなかったからだ。誰も私のような「書類作業の悪夢」の苦痛を経験したことがなかったし、もしあったとしたら、誰も教えてくれなかった。
そう、若くしての離婚に当たって難しい側面の1つは、とても孤独だということだ。 20代や30代での離婚はあまり一般的ではない。大体の人たちはまだ「結婚する」時期なのだ。
もちろん、一般的でないというだけで私のように若くして離婚する人も毎日いる。実際に、この文章を書いている間にも有名な歌手で女優のマイリー・サイラスの離婚が報じられている。本当は、私の理性は分かっている。私が32歳で離婚したところで誰も気になどしていないことを。でも社会が描く32歳の像は、結婚、出産、育児、家の購入や仕事、退職後のための貯金、料理、美容...などなど、たくさんの期待が押し寄せる。
そんな中で絵に描いたような結婚生活が終わってしまったのだから、「自分は最低」と自己嫌悪に陥ってしまうのも無理はない。
離婚が意味するのは書面上の決別だけではない。社会という骨組みの中で、自分が欠落しているような気分になってしまうのだ。罪悪感と羞恥心、そして更なる罪悪感...。結婚式や、他にも「カップル」で参加する行事に1人で参加するのは未知の恐怖だ。職場の人に伝えるべきか、と不安になり、 自分のパートナーとしての能力をひたすら自問したりする。
そして今回は、この文章を公表することにも後ろめたさがある。私にとって書くことは感情の整理や人生を振り返る手段だが、離婚を切り出したのは私だから、こんな文章を書いて発表することは余りに勝手すぎる気がするのだ。気持ちが落ちている時には、「自分勝手」→「最低な人間」なんて思ってしまうこともある。
離婚の事実を誰かに伝えるのは、誰にとっても簡単なことではないだろう。
職場では、上司と身近なチームメンバーにだけ伝えた。時が経つにつれ、会話の流れで軽く打ち明けるようにしてみた。「あぁそうそう、もう結婚はしてないの」といった感じで。そうするとみんな、まず「お気の毒に...」と言ってくれます。それで私は笑いながら、「(別れたかったのは私だし)気の毒なんかじゃないよ」と返している。
離婚について告白した多くの人が、私を驚かせた。絶対に認めてくれないと思ってた 祖父母は予想に反して「20年後に離婚するよりずっとマシだ」と的を射たことを言ってくれた。両親は戸惑いながらも冷静に接しようと努めてくれた。義理の叔母は電話をくれて、彼女が経験した2度の離婚について話してくれた。最初の離婚は20代の頃だったという。
他の人たちは言葉に詰まっていた。まるで急に話がシリアスになりすぎたような気まずさだ。元気付けてくれる人もいた。誰かを紹介しようとしてくれたり、友人の1人は私を「セクシーな離婚者」と言ってくれたりもした。
安堵感と正しい決断をしたという確信はあったものの、離婚は絶え間なく続く不安と、人からの批判への恐怖をもたらした。過去にないほど精神的に裸にされたような気分になり、正直、心のそこから孤独を感じていた。
そこで「他の人たちはどう乗り越えているのだろう」と思い、最近離婚した同年代の人たちの話を聞きたいと思った。FacebookとInstagramを見ていると、何人かそういった知人がいた。 (結婚式の投稿を削除して「自分を愛そう」というコンセプトの自撮り画像を投稿している人が多い)。でも、ダイレクトメッセージを送って極めて個人的なことを聞くのはさすがに気が引けた。
逆に、私もひっそりと結婚式の投稿を削除して、「自分を愛そう」というコ ンセプトの自撮り画像を投稿してみた。そうすればだんだんと、他の離婚経験者が私のSNSを通じて私の変化に気がついてくれると願いながら。
離婚から学んだ事
別れてから7カ月が経ち、あと数日で法的にも離婚が成立する。よく知らない人がいるグループで会話をしていても、最近は逃げ出したいような葛藤もなく「離婚したんだ」と言えるようになった。カウンセリングにも通い始めて、自分にはどんなパートナーが必要なのか、理解を深めている。最近はまたデートにも行き始めた。
人生は続いていく。何があっても。
もし何かこの離婚から学んだことがあるとすれば、それは「人生で最も困難なことを、口に出していうこと」だ。匿名の掲示板でも、カウンセラー相手にではなく、しっかり大きな声で。もし人生の困難をお互い声に出して話せれば、自分自身の中でその難題に立ち向かうのも少しは楽になるかもしれない。
同時に、結婚が失敗したらどうなるかも知らないうちに、半ば結婚を強制するかのように促す社会の風潮にも立ち向かわなくてはいけない。離婚後の苦悩の現実を本当に知っていたら、結婚にもっと慎重になれるんじゃないだろうか。
ハフポストUS版の記事を翻訳、編集しました。