週末は都心でも強い雨が降っていました。21日正午現在、台風26号による土砂災害で伊豆大島で亡くなられた方は27人、行方不明者は19人となりました。さらに発生した台風27号、台風28号の襲来を前に、現在も島では懸命な作業が続いています。
いま、伊豆大島にいるすべての方が島の現実と向き合っています。役場、警察、消防、自衛隊、ボランティアの方など、多くの方が目の前の状況を少しでも良くできるよう働かれ、必死に島を守っています。子どもからお年寄りまで止むことのない不安を前に、やむなく島を離れる判断をされる方もいらっしゃいますが、同じ島で暮らしている方を残して島を離れることは大変辛いことであり、辛い心中をお察しします。
先日、この場を借りて「慎んだ報道」をお願いしました。SNS等でこのメッセージをシェアしていただいた皆さまにお礼を申し上げます。良識ある報道も多く、非常に有り難く想います。しかし、いくつかの報道や投稿には島への配慮が欠如したものもあり憤りを感じます。
今朝、伊豆大島の方からメッセージが届きました。ご本人に迷惑がおよばないよう匿名にて以下に記します。
「色々とメディアで連日報道されておりますが大島で暮らす方々の離島ならではの生活やその環境を無視された内容ばかりで心苦しい限りです。島であるという環境が無視されております。現在、大島町役場の管理職の層は、27年前の噴火による全島民避難を経験された人たちが揃っており、町長自身も当時は島民の避難のために動かれた当時からリーダーシップのある方です。私自身も自分の地域の老人、子供を取りまとめて都内への避難と避難所での電話対応等を行っておりました。事故や事件で人命を亡くされるのは、年に1人いるかどうかという島ならではの環境で島民は育っておりますので今回のような二桁の死亡人数が出ている状況は、誰よりも島民の方々が痛感していることと思います」
たとえ報道の目的が日本中の人に「明日は我が身であること」を伝えることや、義援金の協力を求めることであっても、島の心労を増大させるような「言葉」の使用や「編集」や「評論」は控えていただきたい。
大前提として、離島エリアは本土と生活環境は異なります。さらにその環境は全国約420島の有人離島毎に異なります。情報を発する方は少なくとも、地理条件、生活文化、歴史背景など、島を正しく知ったうえで発信を行っていただきたい。現在起っていることはドラマではなく現実です。情報の先には島を想う方がいます。テレビ、新聞、雑誌、SNSなどマスメディアも個人も含めた情報発信を行うすべての方へ、どうかご配慮を願います。
次の台風が近づいています。災害時に重要なのは「冷静な判断」です。そのために「正しい情報」が必要です。そこで配慮のない報道や投稿があまりに増えると、人は冷静な判断ができなくなります。生きるために必死に判断しようとする人の障害にはならないでほしい。報道関係者の皆さんには「伊豆大島の状況を正しく伝える情報」に加えて、身を守るための「冷静な判断材料となる情報」に力をいれて発信いただけたら幸いです。
これから数日間には、何が起るかわからない大型台風の襲来が続きます。どの地域にお住まいの方も、災害が起きたときに「自分がどんな判断したらよいか」考えていてほしい。お住まいの地域の防災情報などを十分ご確認のうえ、それぞれの立場でできる備えをお願いします。
(※こちらの記事は2013年10月21日の「離島経済新聞」より転載しました)