同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の導入を、27の自治体で当事者の住民らがそれぞれの議会に一斉提出。今回の行動の中心となった「自治体にパートナーシップ制度を求める会」のメンバーが記者会見を行った。
2015年に東京都渋谷区、世田谷区でスタートした同性パートナーシップ制度は、現在7つの自治体で施行されている。最近では政令指定都市の札幌市や福岡市でも施行され、大阪市や千葉市、東京都中野区でも導入を予定している。
記者会見を行った「自治体にパートナーシップ制度を求める会」を中心とした有志のメンバーらは、今年5月から6月にかけてそれぞれが住む27の自治体で、パートナーシップ制度等の導入を求める請願、陳情、要望書を提出した。
提出先は以下の27自治体。
東京都中央区、文京区、台東区、江東区、豊島区、北区、荒川区、練馬区、葛飾区、江戸川区、墨田区、新宿区、千代田区、八王子市、三鷹市、町田市。
神奈川県横浜市、川崎市、鎌倉市。
埼玉県さいたま市、飯能市、加須市、川越市、入間市、坂戸市、毛呂山町。
北海道網走市。
日本でも始まる「性の多様性を社会制度に反映する動き」
世話人のひとりである、明治大学の鈴木賢教授は「LGBTはこれまで社会制度から排除されてきた、その典型的な場面が法的な家族からの排除」だと指摘する。
「諸外国では同性カップルにも法的な家族としての保障を行っています。G7の中で同性婚も同性パートナーシップ法もないのはついに日本だけです。
このように、国際社会では性が多様であることを法制度に反映し、多様なライフスタイルの選択をみとめ、人間の尊厳を保障するようになってきています」。
しかし、日本でも自治体から同性パートナーを公的に認証する制度が広がりつつある。
「直接的な法的効力はないものの、企業や社会に与える効果は大きく、同性カップルを事実上の家族として扱う動きが広がりつつあります。日本でもようやく性の多様性を社会制度に反映する動きが始まっています」。
また、パートナーシップ制度の導入は、性のあり方が多様であることを世の中に伝える上で、強いインパクトを持つという。
「今回の一斉行動は、(性の多様性に対する)理解の進んでいる一部の先進的な自治体だけで制度化を求めるのではない点に特にご留意いただきたいと思います。理解が進んでいないことはパートナーシップ制度を積極的に導入する理由にはなっても、やらないことを正当化するものではありません」。
世話人の林隆紀さんは、昨年12月に東京都港区議会にパートナーシップ制度導入の請願を行い、賛成多数で採択された。
今回の一斉行動は、こうした経験をシェアし、「市民の横の連携によって、地域の住民から自治体を変えていこうというボトムアップ型の要請をしていくという運動です。」と鈴木教授は話す。
さらに、今回の請願等の提出に際して、2000を超える署名を集めた自治体もある。
「一斉行動が多くの自治体を目覚めさせ、ひいては国を動かすきかけになることを私たちは切に願っています。
ひとつでも多くの自治体がパートナーシップ制度を導入し、多様な性を生きる市民に対する無理解、偏見、差別をなくし 性的マイノリティを排除しない社会への転換を進めていただきたい」。
当事者の想い
請願等を提出した当事者も、それぞれの想いを語った。
埼玉県川越市で請願書を提出した相場謙治さんと古積健さんは同性のカップルだ。
相葉さんは「幼少期にゲイであることでいじめを受けたことがある」と話す。
「今はオープンにしていますが、まだ子どもたちのなかにも苦しんでいる人がたくさんいる。そのひとたちのためにも、理解や協力者を増やしていきたいと思い請願を出しました」。
守屋公平さんは、八王子市在住の大学生で、バイセクシュアルを自認している。
「八王子市は約56万人の市民がいます。LGBTが(人口の)7.6%という数字を当てはめると、八王子市では約4万2000人がLGBTということになります。
僕たちはひとりの人間です。みんなと同じなんだという気持ちで、八王子から社会を変えていきたいと思い、請願書を提出しました」。
東京都北区で「Rainbow Tokyo 北区」の代表をつとめる時枝穂さん。男性として生まれ、性自認は"どちらかというと女性"だという。
「今の日本では、同性婚が認められていないので、手術をして戸籍を変更しないと結婚ができません。わたしは自分の体にメスをいれるのは、非常に抵抗があります」。
時枝さんの出身地は大阪だ。先日、大阪市でもパートナーシップ制度の導入が決まった際は涙が出るほど喜んだ。
「私は東京都北区で陳情を提出しましたが、同じように北区で生まれ育ったセクシュアルマイノリティの人たちで、自分を否定してしまったり、生きづらさを抱えている人にとって救いになれたらと思います。
パートナーがいるいないに関わらず、制度があることでセクシュアルマイノリティの人たちを否定しない社会を目指していけたらと思います」。
今回の請願や陳情、要望書の提出によって、今後それぞれの自治体では同性パートナーシップ制度に関して議論されることになる。
さらに、鈴木教授は今回の一斉行動を「パートナーシップ制度夏の陣」と位置づけていると話した。
「今後も秋の陣、冬の陣と継続して、より多くの自治体を巻き込み、パートナーシップ制度を全国へと拡大させていくよう、取り組みを進めます」。