世界最大級の広告・クリエイティブの祭典「カンヌライオンズ」で、ある少女の像が話題をさらっている。
フランスで開催中の「カンヌライオンズ」で、ニューヨークの金融街ウォール・ストリートに設置された「Fearless Girl(恐れを知らぬ少女)」が、3部門でグランプリを総なめにした。受賞したのは、全24部門のうち、「グラス(ジェンダー)」「PR」「アウトドア広告」の3部門だ。
この少女の像は、ウォール街の象徴である雄牛の銅像「チャージング・ブル」の前に、手に腰を当てまるで睨みつけるような格好で立っている。3月8日の「国際女性デー」に合わせてゲリラ的に登場したと朝日新聞デジタルなどが伝えた。
(2017年3月8日撮影=Getty Images)
少女像を設置した金融会社「ステート・ストリート・グローバル・アドバイザース」のアン・マクナリーさんはロイターの取材に対して「企業の役員会における女性比率の低さや、金融業界における女性の給与の不平等に注目を集めるために少女像を設置した」と話した。「金融業界こそ女性登用が遅れている」「宣伝目当てのキャンペーンだ」などの批判もあった一方で、ずっと残してほしいと求める動きも広がっているという。
(2017年3月15日撮影=ロイター)
「グラス(ジェンダー)」部門は、性差別や偏見を打ち破る作品を表彰するため、2015年に新設された。17年度の審査員長を務めたウェンディー・クラーク氏は、少女像に地域や言語、文化を超えて訴求力のあると絶賛し、「グランプリを獲得したというこの事実によって、企業での性別の多様性が十分でないという問題を改革し、これまで私たちが見たことのない世界を実現してほしい」と語った。
■作品評価、数字的効果も重視する傾向に
このような表現面での評価に加えて、数字的な効果も重要視されている。少女像の設置によって、通称「SHE」と呼ばれる「性別の多様性を実現するために女性役員・要職の比率が高くしている企業に投資する投資信託」の株価指数が374%も増加したことを評価した。
カンヌライオンズは近年、いわゆる“右脳的“だけでなく、“左脳的“な評価も重視する傾向にある。
インターネット普及以前には、まるで短編映画のような独創性あふれるCM動画などが話題になったイメージがあるが、効果や反響までもが可視化される時代において、多角的な評価が求められてきている。少女像の表現面や数字的な貢献のどちらにも、今後注目したい。
カンヌライオンズは6月24日まで、フランス・カンヌで実施される。
「Fearless Girl」YouTube公式動画はこちら⇒https://www.youtube.com/watch?v=qZT2Xewt9bw
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