先日『80歳を過ぎても徹夜で議論できるワケ』という本を上梓した。
80歳を過ぎてどうして1日平均7件ほどの仕事のアポをこなせるのか、徹夜で議論できる気力が保てるのかについて書いた本である。若い世代と議論をする、恋心を持つなど「やんちゃ老人」としての生き方や、普段行っている健康法などを紹介している。
今回は「敬老の日」にあわせた寄稿ということで、本書の中から、かつて「三世紀会」というのを取材したときに聞いた、100歳を超えて生きるためのコツを紹介してみたい。
■ 付き合いを悪くする、悩まない、肉を食う
三世紀会は、101歳以上まで元気に生きることを目指した会である。1900年までに生まれた人が2001年まで生きれば、19世紀、20世紀、21世紀の三つの世紀を生きることになることに由来する。
会長は岸信介。1896年生まれの岸をはじめ、新日本製鐵会長や日本商工会議所会頭を務めた永野重雄、元朝日新聞編集局長で政治評論家の細川隆元ら1900年までに生まれた政治家や財界人、言論人らが集まっていた。
彼らに聞いた健康長寿の秘訣が、下記の三つである。
一つは、付き合いを悪くすること。パーティーへの出席などはほどほどにし、あまり頻繁に飲み会につきあったりはしないということだ。
二つ目は、悩まないこと。発言したり行動したりする時はもちろん真剣に取り組むけれども、その場を離れたら全部忘れて悩まないということだ。確かに、悩んでも物事は解決しない。健康法についても、「健康に執着して毎日、青竹踏みをしたりしている人は案外、早く死ぬ」と言われた。要するに、気を使いすぎる人は長生きできないということだろう。
三つ目は、年を取ったら肉を食うこと。三世紀会のメンバーではないが、先日88歳になった元政治家の野中広務に会ったら、確かに肉をムシャムシャ食べていた。
私は肉が好きでないので、第三の訓えだけは守れないが、第一と第二の訓えは自分でも実行してきた。政治家や財界人のパーティーにはあまり出ないし、酒はもともと飲まない。それから、二番目の悩まないという訓えも実行している。だから、悩みがあって夜眠れないということはめったにない。
■自分で解決しようとせず、人に委ねる
そして三つの中でも、「悩まない」ということがもっとも大事だと思っている。
かつて自民党に中川一郎という政治家がいた。最後は自殺してしまったが、「心臓から毛が生えているのではないか」と言われるほど豪胆なイメージの強い政治家だった。その中川が私にこう言ったことがある。
「前から飛んで来る矢は、いくらでも打ち払うことができる。しかし、矢は前からは飛んで来ない。恐いのは、後ろから横から飛んでくる矢だ。だから、政治家はノミの心臓を持っていないと生き残れない」
つまり、自民党の敵は、当時は社会党や共産党だったが、本当に恐いのは自民党内部の敵だと中川は言ったのだ。政治の世界は、心臓から毛が生えている中川ですら自殺に追い込まれるほど厳しい世界なのだ。
そういう激烈な世界で長生きするコツが、悩まないということだ。
ストレスをストレスと感じず、ずうずうしいと思われるほどに悩まない。複雑で解決困難な問題にぶつかっても、それを面白がるぐらいでないといけないということなのだ。
私の言葉で言えば、脳天気になることが長生きの秘訣で言えるだろう。
気に病んでいると、治る病気も治らない。だから、悩まないこと、脳天気になることが健康にとっていいことだというのが私の持論である。
そのためにも何か起こったときに、自分で解決しようとしない。そしてそれは信頼できるパートナーに任せることと同義だと思う。
私の場合、体が反乱を起こしても、自分で悩まないし、自分で頑張ろうとしない。お世話になっている小林弘幸先生や東洋医学の先生に診てもらい、助言を仰いで、それを実践するのみである。だから、信頼でき、何でも相談できる主治医を持つことは重要なことだと言えるだろう。
また、「老いては子に従え」という格言があるが、80歳になって娘の言うことを素直に聞くようになった。自分で頑張らず、娘に任せている。2014年6月にも、娘のアドバイスを大人しく聞いて、病院に5日間の入院をした。手術や治療といった目的があるわけではなく、体調を整えるためだ。
一番身近にいて、いろいろとサポートしてくれる家族の意見は、当然ながら素直に聞くべきであり、聞いた方がおそらく健康にもよいに違いない。
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