『スター・ウォーズ フォースの覚醒』でネット人気暴発の無名キャラ、TR-8Rって誰?

FN-2199になって暴動鎮圧バトンZ6を振り回し、勤労の義務を果たさない国民や反ファースト・オーダー市民運動を片端から殴り倒すスピンオフ映画やゲームに期待です。

(注意:公開中の映画『スター・ウォーズ / フォースの覚醒』について、多少のネタバレを含みます。物語の本筋にはまったく触れない小ネタですが、完全に予備知識なしで観たいかたは読まないでください)

『スター・ウォーズ / フォースの覚醒』が公開されるや、ノーマークから一気に人気が暴発しネットミームと化したストームトルーパー、通称「TR-8R」の正体が判明しました。

「TR-8R ? 誰だよ?!」となっても無理はありません。TR-8Rは、物語の中盤で主人公のひとりフィンと対決するストームトルーパーにファンが勝手につけた愛称。たったひと言のセリフ、" Traitor! " (裏切者!) から来ています。(8をエイトと読む変則綴り)。

フィンは鎧を脱いだ脱走ストームトルーパーですが、TR-8R はこれまで雑魚の代名詞だったストームトルーパー姿のまま突如として主人公格に一騎打ちを仕掛けるサプライズ演出、たったひと言ながらフィンとの因縁を暗示するセリフ、ジェダイではない素人が扱っていたとはいえライトセーバーをバトン一本で圧倒するなど、「えっ?えっ?」というインパクトのあるキャラクターです。

といった真面目な理由よりも、ネットで愛されるようになった理由はおそらくこのスピン。フィンを識別して Traitor! と言い放つ驚きと、ストームトルーパーのくせにシールドとブラスターを投げ捨て近接武器を構えるカッコイイ演出で緊迫感を高めた直後、この「それは必要なの?」というクルクルスピンと腰振りで緩和させて笑いをとります。

(via imgur.com)

ネットでどれほど愛されるようになったかは、" TR-8R " " sick spin " あたりで検索すればいくらでも出てくるためここでは割愛します。この暴動鎮圧バトンを回す姿と、フィンの怯えきった顔を使った駄コラ・GIFアニメのたぐいは無数。いまだに新作が投稿され続ける勢いです。

(蛇足ながら付け加えれば、 Traitor はただ仲間を裏切ったのみならず、国家反逆罪 Treason を犯した反逆者、謀反人の意。TR-8R 本人が、旧三部作の銀河帝国よりもナチっぽいファーストオーダーにいかに心酔しているか、敵方に寝返ったフィンへどれほど憤っているか示す台詞でもあります。

特に米国では政治的・党派的な言い争いの際に、相手を最大級に罵倒する表現としてリアルに使われる生々しさがあることも、そこはかとない緊張感のあるおかしみ、コラージュしての遊びやすさにつながったと思われます。かつての日本でいえば「非国民!」。)

(小説 Before The Awakening の挿絵。starwars.comより)

この TR-8R の正体については、映画公開前に出版された前日譚小説 Before the Awakening にヒントがありました。Before The Awakening は新作の主人公 レイ、フィン、ポーそれぞれについて、映画『フォースの覚醒』に至るまでを描いたジュブナイル小説です (注意:以下で内容に多少触れます。)

フィン編はストームトルーパー FN-2187 としてキャプテン・ファズマの元で訓練を受ける日々を描いた内容ですが、ここで同じ班の仲間として FN-2199 (ナインズ)、FN-2000 (ゼロ)、FN-2003 (スリップ)が登場します。最後のスリップはヘマをしてばかりいることから。

リーダーであったFN-2187 (のちのフィン)は、このFN-2003が失敗するたびに庇い手助けしており、上官キャプテン・ファズマからは、トルーパーとして極めて優秀ながら、仲間に対する過剰な同情心だけが兵士として欠点であると評価されていたことが語られます。

『フォースの覚醒』本編冒頭では、戦場で斃れた仲間から血まみれの手を伸ばされ、ヘルメットに残った血痕に呆然とするフィンの姿が描かれました。公開と同時期に出た副読本のひとつビジュアルディクショナリーによれば、この血痕はFN-2003 (スリップ)のもの。

つまり、フィンは戦場の恐ろしさにただパニックになっただけではなく、訓練を通じて兄弟のように過ごし幾度も手助けしていた仲間が目の前で絶命する様子、手を伸ばされても何もできなかった現実にショックを受けた描写であったことが分かります。

それはさておき、これで残る候補はFN-2000とFN2199の二人。本編劇中でマズ・カナタの拠点を襲撃した際にFN-2187 (フィン)の姿を見つけ、かつてのリーダーが脱走しただけでなく寝返っていたことに激昂した「TR-8R」はこの二人のどちらかでは、と公開直後から推測されてきました。

TR-8Rがネットミームとなり、コラージュやらGIFアニメやらが荒れ狂って数週間たった1月7日。ネット人気を受けて、公式の starwars.com がとうとう正体を明かす記事を公開しました。そちらによると、通称 TR-8R の本当の名は FN-2199 (ナインズ)。やはりFN-2187 (フィン)とともに訓練を受けた仲間であり、反逆者!の叫び声も説明がつきます。ついでに、中身を演じているのはベテランスタント役者 Lian Yang氏、ひと言だけの台詞 Traitor ! は Skywalker Sound のサウンドエンジニアDavid Acord 氏によるもの。まあ、正体が分かったところで何がどうするわけでもありません。

TR-8R / FN-2199 / ナインズの末路は、映画をご覧になったかたならご存知のとおり。ただでさえ紙装甲のストームトルーパーであの攻撃を受けて無事とは思えませんが、わざわざネット人気に対応してくれる現在のスター・ウォーズ公式ならば、エピソードVIII以降での再登場もまだ希望があるかもしれません。

ディズニーはエピソードVIII 〜 IX の公開年以外にも毎年スター・ウォーズ映画の新作を用意する方針を明らかにしており、今年末には『エピソードIV: 新たなる希望』時代のX-Wingパイロットたちを描いた映画 Rogue One が公開予定。ほかハン・ソロを主人公とした映画が予定されており、賞金稼ぎボバ・フェットのスピンオフもうわさがあります。FN-2199になって暴動鎮圧バトンZ6を振り回し、勤労の義務を果たさない国民や反ファースト・オーダー市民運動を片端から殴り倒すスピンオフ映画やゲームに期待です。

(via imgur.com)

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