その事故のシチュエーションから日本では「ロビタだ」と話題になった、Knightscope社製 警護ロボット K5 ですが、その後の調べによって事故状況が判明しはじめました。まずはっきりしたのは、K5が何らかの問題を抱えて身を投げたわけでも、何者かによって池に投げ込まれたわけでもなかったということです。
そのロボット Knightscope K5には「ロビタ」ではなく「スティーブ」という愛称が付けられていました。
現場となったショッピングモール兼オフィス施設を管理する会社MRPのアリソン・ジョンソン氏は「事前にスティーブが不幸だったとは感じられなかった。仕事に不満を持っていたという報告も聞いていない」とコメントしています。
7月14日(金)、スティーブはMRPに来て最初のトレーニングセッションを受けました。このときすでに施設内の巡視ルートを設定され、360度カメラ、サーモグラフィ、人感センサー、車両のナンバープレート認識、音声録音、双方向インターホン、音声警告といった多彩な機能のチェックをひととおり実施し、準備は万端のはずでした。
そして週明けの7月17日がスティーブの初めての単独勤務となりました。午前8時ごろ、仕事についたスティーブの周りには物珍しさからか多くの人が集まり、噂を聞きつけてわざわざ居場所を探しに来た人もいたほどだったそう。しかしそれも程なくおさまり、スティーブは単独での巡視業務になりました。
訓練中のスティーブ(MRP Realty)
しかし、午後2時20分ごろになって事件は起こりました。異状を察知したMRPの管理者やエンジニアらがすぐに現地へ駆けつけ池に転落したスティーブを引き上げたものの、そのころにはすでにいたましい写真つきのツイートが世界中を駆け巡っていました。
MRPがスティーブに関わるすべての人から事情を聞いた結果、何者かがスティーブを池に投げ込んだと言うようなことはなかったとわかりました。つぎに建物の監視カメラなどをチェックしたところ、一部映像に何かの拍子にスティーブが巡視ルートを外れ、吸い込まれるように池へ向かう姿があったとのこと。
MRPは現在、スティーブの動作記録を回収し解析しているものの、記事執筆時点ではルートを外れた原因は判明していません。なにか設定に誤りがあったかセンサーの誤動作、または天候など周囲環境の影響が考えられるものの、それがわざわざ池のそばで、そこへ向かうように起こるというのは、なかなかの偶然というほかありません。
なお事故後、この施設のお店やオフィスの有志はスティーブが遺した充電パッドを献花台とし、その短い生涯(?)に思いを馳せています。またスティーブのあとには代役のKnightscope K5がやってきて、その仕事を引き継ぐよう手配中とのこと。
ちなみに、水没してしまったスティーブはKnightscope社のもとへ帰り、司法解剖分解整備、故障パーツの交換を受けたのちに再び警護ロボットとして再生、もとの職場へ復帰する予定だそう。これを輪廻転生ととらえるならば、やっぱりあの漫画作品を思い出さざるをえない展開といえそうです。
(2017年7月23日Engadget 日本版「続報:身投げの警護ロボ「K5」に有志が献花台。監視カメラに池へ向かう姿も、ルート外れた原因は未特定」より転載)
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