誰も知らない北朝鮮の脅威

現在行なわれている朝鮮半島の生態系修復は、朝鮮半島の統一よりもはるかに時間がかかることである。
NAMPO, SOUTH PYONGAN, NORTH KOREA - 1995/01/01: Arid farmland to the west of the North Korean capital Pyongyang. Desperately poor and with its economy still failing after years of mismanagement, the country continues to face the threat of famine with large numbers of workers in the countryside barely able to scrape a living. (Photo by Ben Davies/LightRocket via Getty Images)
NAMPO, SOUTH PYONGAN, NORTH KOREA - 1995/01/01: Arid farmland to the west of the North Korean capital Pyongyang. Desperately poor and with its economy still failing after years of mismanagement, the country continues to face the threat of famine with large numbers of workers in the countryside barely able to scrape a living. (Photo by Ben Davies/LightRocket via Getty Images)
Ben Davies via Getty Images

私がここで述べようとする脅威とは、北朝鮮のテポドン大陸間弾道システムや北に配備されたムスダン・ミサイル、あるいはノドン・ミサイルのことではない。 また、北朝鮮の平壌における、国際社会と一旦接触するための緊張した瀬戸際の外交戦略における一つの方便としての、最近の核実験などについて言及するものでもない。

もちろん、北東アジアにおける軍備拡大競争の脅威は深刻であるが、人類はまた別の脅威に直面していて、その巨大な脅威はさらに大きな災害をもたらす可能性がある。したがって、私たちはそれに備え、戦略的な準備をはじめざるをえない。

また、その脅威は山林の乱伐と土壌の不適切な利用、無思慮な農法などの結果として生まれている北朝鮮の砂漠と半砂漠地帯のことである。かような生態学的死角地帯において、植物が生存もしくは繁殖するのはほぼ不可能である。

砂漠化が悪化するほど、このような生態学的な惨事が韓国および東アジア地域全体に深刻で取り返しのつかない影響を及ぼすことは、間違いない。

ソウル大学のキム・スンイル教授は、最近20年間、北朝鮮で100万ヘクタール以上の山林が失われ、ほぼ回復する見込みがないほどに土壌の機能が喪失させられた結果として、終わることのない洪水と干ばつが毎年起こっている、としている。

■ アフリカよりさらに深刻な北の砂漠化

北朝鮮におけるこのような危機の影響はアジアでより深刻な兆候が現れており、かような状況では、アフリカよりもアジアでさらに急速に砂漠化される地域が増加していくであろう。アジアでは現在、毎年ほぼ500,000ヘクタールにのぼる大地が砂漠化によって失われており、中国の総面積の27%にのぼる土地が回復不能の状態で、少なくみても2,620,000ヘクタールの土地が砂漠化した。

すでに、中国東北部にまで拡大している砂漠から風に乗ってやってくる黄砂はソウルの空気を汚染しており、さらには日本地域までも覆っていて、生態系と人々の健康にとって深刻な脅威となっている。

北朝鮮の砂漠化はB-2爆弾やミサイル防御システムではくい止めることのできない事案である。軍事的脅威とは対照的に、このような新たな環境の脅威は北朝鮮を孤立させるのではなく、長期的な国際社会との協力と協調を必要とする。

したがって、国際社会はこのような環境の脅威を解決するために北朝鮮の政府、組織・団体、住民と密に交流するよりほかなく、喜んで専門知識と技術を提供する必要がある。国際社会は環境破壊を継続させるべく北朝鮮を避けたり放置したりすることはできない。

■ これ以上放置できない北朝鮮の現実

砂漠化によって発生している生態系の不安定化に国の境界などないことは言うまでもない事実である。平壌の北朝鮮政府に対する国際社会の体面が東アジアにおける砂漠化拡散防止に関する私たち共通の関心事について、私たちが何も実現できない理由となってはならない。

効果的な環境政策をつうじて気候変動の脅威にいかに対処すべきかについて、北朝鮮住民を教育することは北朝鮮に関連する問題のなかでも最優先に考えるべきことである。

中国やモンゴルと同じく、北朝鮮はいま、現場において砂漠化問題解決のための技術的な専門知識が大いに不足している。多くの場合、地域の農民たちが暖をとるため、あるいは必要な収入を得るために木々の伐採をしなければならなかった。先進国はこのような問題を解決するために専門知識と資源を提供する必要があり、何よりも先進国の人々の極端な消費文化の完全な転換を図るために大いに努力する必要がある。

いわゆる「先進国」の消費文化はソウルでもニューヨークでも究極的には地球全体の砂漠化の流れを促している。発展途上国の住民たちが毎日のテレビ視聴をつうじて目の前に広がる魅惑の消費文化の姿を見ているが、それによってこれを真似ようとする風潮が蔓延している。

このことは、北朝鮮であれカンボジアであれ違いはない。無理な農業、山林伐採などでわずかでも収益を増やそうとする北朝鮮国民が大規模な環境の危機をもたらしている。その結果、土壌を死に至らしめるという災いは500年以上も続くかもしれない。

■ 砂漠化問題、北の核拡散防止と同等に扱うべき

今後、砂漠化と闘わねばならない国際連合は この先の六者協議で中心的な役割を果たすようになるであろう。そして、アメリカとしても、砂漠化の脅威の拡散防止に関してアメリカ政府官僚が国際的な核兵器拡散防止と同等なレベルの事案として対処せざるをえないのである。

アメリカ政府は北朝鮮、韓国、モンゴル、中国の砂漠化の拡散を考慮に入れ、北朝鮮の脅威への対応を変更する必要がある。

当該地域における真の脅威が何なのか、目を大きく開いて見なければならない。ついに、冷戦時代が完全に終了したという明白な事実を認識せなばならない時が来た。現在行なわれている朝鮮半島の生態系修復は、朝鮮半島の統一よりもはるかに時間がかかることである。

最近おこなわれた、世界的な環境問題および砂漠化への対策を中国とともに実行するとするアメリカのオバマ大統領の宣言は、希望にあふれた道のりの第一歩である。

注目記事