特定秘密保護法案で、特定秘密を取り扱う公務員らに対する適性評価のため、行政機関から照会を受けた病院には過去の通院歴などを回答する法的義務があるとの見解を示した。
一方、医師には患者の権利を積極的に擁護する義務がある。その一つとして、医師・患者関係において知り得た患者に関する秘密は、漏洩してはならないとする守秘義務がある。患者の病名だけでなく、通院歴もこれにあたると考えられる。守秘義務にも例外はある。感染症法では、患者の届け出は感染症の封じ込めに必要である。また、他害のおそれが強い場合など、第三者に被害が及ばないように対策を講じることがある。
臨床の最前線の現場にいる医師としては、今回の政府の見解は、ただでさえ弱い立場にある患者の権利を蔑ろにするものとして承服しがたく感じている。ただでさえ仕事による肉体的・精神的ストレスを抱えているのに、そのうえ体調不良時に、安心して医師に相談することすらできなくなる。
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一方で、行政機関は、どのようにして本人が受診した病院を探り当てるのだろうか。まさか全国の医療機関をしらみつぶしに探すわけでもあるまい。本人が○×病院にかかった、とでも申告しない限り、現実的には無理だ。
であるならば、殊更このような反対意見が出るに決まっているような答弁をする意図は何なのだろう。もしかすると、この特定秘密保護法案を通したくない人がいると考えるのは、穿った見方だろうか。