NOEL HENDRICKSON VIA GETTY IMAGES
新しい命を育むことは、とても疲れる大変なことだと、みんな頭ではわかっている。周りの人たちは、新人パパとママに、赤ちゃんが夜静かに眠ることができているかよく聞くものである。周りの人たちは、それさえ大丈夫なら、ふたりの体調は万全で、すべてうまく行っていると思うようなのだ。
でも、パパとママは知っている。現実はそんなに優しくないと。きっと、パパとママが、絶対に万全の体調ではいられないことには、科学的な証拠があると思う。もしくは「体調万全」という言葉の意味自体を、「" きちんと休息が取れた状態"から程遠いもの」と勝手に解釈を変えてしまうかもしれない。その理由を紹介しよう。
一晩中眠り続けるなんて、絶対に不可能。
一晩中眠る、というのは本来、2〜3時間ではなく、「一晩中」眠れることを指す。一度自分の子供が寝ついてくれず大変な時期を過ぎてしまうと、多くの人はその大変さを忘れてしまうようだ。パパとママは、子供が夜泣きせず自分たちが眠ることができるようになると、最初はパニックを起こす。
アドレナリンが駆け巡るのを感じながら、何か悪い問題があるのではないかと子供の様子を見に行く。子供をつついてみる。つんつん。つんつん。子供が反応するまで。大丈夫。良かった。でも、その後もう一度眠ろうとするけれど、アドレナリンが出ていたり、子供が起きちゃって寝かせてくれなかったりして、眠れない。
子供が大きくなると、パパとママは、(本当は誰も泣いてないのに)自分の頭の中でだけ聞こえる夜泣きで目を覚ましてしまうことがある。ようやくふたりが自分たちの子供は一晩中眠り続けられるようになったということを理解し、受け入れられるようになった途端、よちよち歩きを始めた赤ちゃんが夜中起きるようになり、両親の寝室を目指して歩き、ベッドでおしっこしたり、「ティッシュちょうだい!」なんて叫んだりするようになるのだ。
あまりマシにはならないと聞く。私なんて、思春期の子供が家をこっそり抜けだしていたらどうしよう! とか、大丈夫かな? とか、変なドラッグを盛られて溝の中で伸びていたら......! なんてパニックで夜中目を覚ますのだ。
子供が就職するころには、両親は歳を取り、睡眠周期が変わり、そもそも眠ることができなくなる。睡眠との付き合いは、子育てを始めた時に終わったのだ。
休憩時間はない。
この間、私はいとこの電話番号をケータイに入力しようとした。いとこからメッセージが着たので、アドレス帳に追加したかったのだ。8回ほど挑戦して、完全に諦めた。子供が私にまとわりついてはしゃぎ、私の腕を弾き飛ばし、ケータイのスクリーンを触るからだ。「電話番号をアドレス帳に追加する時間がない」と周りに説明するのはとても難しい。でも、それが現実だ。トイレに居る時を除いては。
SNSのニュースフィードを見られると思うと、トイレに行くのが楽しみになる。そのために、たまにトイレに行く必要があるフリをするほどだ。それも、夫(妻)がけしかけて、子供がトイレに乗り込んで来ることもあるので、気が抜けない。聖域はないのだ。トイレの中でさえも。
休日はない。
親にならないという選択をしても、やらなければいけないことやエネルギーを費やさなければいけないことは何百万とある。みんな疲れているだろうし、それは疑いの余地がない。けれど大抵の場合、体調を崩したら休むことはできる。病欠を取れば休息を取れる。でも、育児はどうだろう? 体調を崩したらもう最悪だ。体調を崩すことは不可能なのだ。少なくても、体調が悪いような素振りを見せる時間はない。
ご飯を作って食べさせなければいけないし、洗濯もしなければいけない。子供を愛されなければいけない。育児中の夫婦は、いつも体調不良ギリギリのところで戦っている。回復するチャンスがないからだ。私たちはいつも、子供が学校からバイキンをもらってくるせいだなんていうけれど、本当は私たち自身自分たちが腐った肉の塊なんじゃないかと思うほどだ。
頭がキャパオーバー。
終わることなく続くおしゃべり。ものすごい勢いで「ママ、ママ、ママ、ママ」と呼びかけられ、物をつかんだり、指さしたりしながら「これ、なに?」。そしてどんな答えだったとしても、次は無限に続く「なんで? なんで? なんで?なんで?」
歌のリクエストや「ママ、お話聞きたい」。耳鳴りがしそう大声で「あかいコップほしいのー!!!!」なんて騒ぐ。すでに赤いコップを手にしていても。
電話でお話しているごっこ遊びをしたり、汚い靴下をパペットにして話したり。一つひとつの質問や状態はそんなに悪くないはずなのだけれど(実際にすごくおもしろいものもあるくらいだ)、毎分毎秒終わりなく聴覚に訴えかけられ続け、答えを求められること......。
子供は大きくなるにつれていくつかの単語を使えるようになる。でも、その使っている単語自体はあんまり可愛げのないものだったりする。成長とともに、起こる問題も複雑になってくる。よちよち歩きが終わっても、頭のキャパオーバーは終わらない。
午前2時まで夜更かしして、夫婦で狂ったようにNetflixを見続ける。たまには自分たちの時間も大切にしたいから。全粒粉ビスケットが散らばるソファの上でナマケモノのように座り、安いワインをすすりながら、愛する人に寄り添う。特に会話をする必要もない。それって、メキシコのビーチでマルガリータのカクテルを片手に夕日を見つめるのと同じくらい美しい。まあ、おおむねは。(たまにソファの上でビスケットが砕ける音以外は)とっても静か。落ち着く。癒される。
こういう瞬間って、安定した結婚生活には必要だと思う。こうして一晩眠るのを諦めて夫婦円満でいられるのなら、離婚して、子供たちが高校卒業まで高いお金を払うより、ずっと安いもの(でも、大学は自分たちで払うのよ、覚えておいて)。
物理的に、身体が変わってしまう。
妊娠したら、身体ってもう前と同じじゃない。話し始めたらきりがないし、今は育児の話しているから。角膜が破れてしまうんじゃないかって常に心配。その小さな手にひっかかれ、叩かれるのは育児1日目に始まり、ほぼ終わりなく続く。生まれて数年は、常に子供を運び続けなければいけない。15〜16キロの子供をおしりから持ち上げながら、10キロの子供も持ち上げる。お米の袋か何かならばまだマシだけれど、ジタバタ暴れ回るものだから、もう大変。
カナダの幼児向けアニメ「ケイルー」を見る間、小さな怪獣たちたちがソファから飛び跳ね、スーパーヒーローさながらに飛び降りるのを支える。それって、番組の間中、リビングの床でずっと腕立て伏せをしているようなものだから。育児なんて、きっと角膜が破れたり、椎間板ヘルニアになったりしない限り、成し遂げられないことなのだろう。
お母さんはお掃除大好き。
この間仕事に遅れそうだったとき、ベビーベッドから子供を起こそうとしたら、夜の間に吐いてしまっていたことに気付いた。髪の毛は逆立ち、気分の悪そうな匂いがした。子供をお風呂に入れ簡単に洗い、新しい服を着せて車に乗せた。驚異的なくらい、育児中は身体や家の中を洗いまくる。掃除しまくる。
もちろん、普通に暮らしていても掃除はしなければいけないが、育児中の夫婦は比べものにならないくらい、ひたすら、掃除をする。ふいて、ふいて、ふいて、おもちゃを拾って、おもちゃ、おもちゃ。トイレットペーパーが転がりほどけているのを集めて、片付けて、そうお皿、お皿。あ、洗濯しなきゃ。唾液や色んな物でビショビショになった洋服もきれいにしないといけない。
洗濯物を洗濯機に入れ替えて、あ、おもちゃ。おもちゃ、おもちゃ。お菓子もっと欲しいの? あんなに食べたのに。子供が大きくなると、コトも大きくなる。思春期の子供は乳児よりも表面積が広い分、もっとホコリも増えるし、もっと洗わなければいけない。身体が大きいし、その分床に放置される服も増える。
心配し過ぎて擦り切れそう。
朝、今までなかったシワや白髪を見つけることが多い。深く刻まれた溝のようなシワ。太い、針金のような白髪。母親になったその週から、年齢確認をされることはなくなった。娘が私の身体から生み出されたその時から、目の下に、連なる深いシワが刻まれた。
疲れからだけではなく、心配からでもある。不安は身体に負担をかけ、常に育児中の夫婦の頭を駆け巡る。もし乳児突然死症候群になったら? 階段から転げ落ちたら? 洗剤を飲んでしまったら? コーヒーテーブルの角に頭をぶつけてしまったらどうしよう。もし子供がいじめられたら、もし夜遅くまで帰ってこなかったら、もし悪い友だちとつるむようになったら、誠実な相手と結婚できるだろうか......。私たちの脳細胞はストレスで破裂しそう。脳細胞、ごめんね。
子育て夫婦は疲れて、床に寝転ぶことがある。カーペットに顔を押し付けて。なんでか、ちょっとわかったでしょう?
P.S. 床に寝転んでいても、幸せなのよ。ただ、笑顔を浮かべるには疲れすぎているだけ。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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