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エンジニア、学生起業家、発達障がい者。3つの顔を持つ河崎純真の生きる道

15歳からエンジニアとして働いている河崎純真さんは慶應義塾大学に籍をおく学生起業家だ。そんな彼は発達障がい者でもある。一体どんな人生を歩んできたのだろうか?
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発達障がい者を対象にしたハッカソン・トレーニングなどを行なうGIFTED AGENT 代表社員の河崎純真さん。15歳からエンジニアとして働き、5社のスタートアップに携わってきた。自身も発達障がいを抱える彼に、歩んできた道、そして障がい者支援についての思いを伺った。

23歳の大学生。エンジニアであり起業家

WEB/IT業界において、10代でスタートアップを立ち上げる起業家・ハイパーエンジニアは珍しくない。今回インタビューを行なった河崎純真さんもその1人だ。現在は23歳。慶應義塾大学に在籍。と書くと、エリートの話に思われるかもしれない。

しかし、彼には発達障がいがある。「見た目からはまったくわからないことも、この障がいの難しさ」と屈託なく笑う彼は、どんな人生を歩んできたのだろうか。 また、発達障がい者の支援事業を行なう上での思いに迫った。

【Profile】

GIFTED AGENT合同会社 代表社員

河崎純真 Jun Kawasaki

1991年生まれ。幼少期、母親がアスペルガー症候群という理由で才能を活かすことが出来ない社会に問題意識を持つ。高校に行く意味を感じず、15歳からエンジニアとして働き始め、Tokyo Otaku Modeを代表とする複数のITベンチャーの立ち上げ、事業売却、役員業務等に携わる。

母はアスペルガー症候群。僕はADHD

― 河崎さんが、発達障がい者の支援や紹介を行なうGIFTED AGENTを起業されたきっかけについて教えてください。

GIFTED AGENTを起業したのは、「NES(Next Entrepreneur Summit)」という、高校生100人を起業させることを目的としたイベントで、共同代表である高橋と出会ったことがきっかけです。僕ともう一人、滝沢という者がメンターとして参加していたのですが、高橋の「発達障がい者への教育支援」という事業テーマに共感して、一緒に会社を作ろうと決めました。

発達障がい者の支援は、自分もやりたいことだったんです。というのも、僕自身がADHDということが大きいのですが、世の中の発達障がい者は、才能があるのに充分に活かせていない、もったいないと思うことが多いんです。

うちの母も、結婚して専業主婦になるまでは当時大人気だったアニメ映画やTV作品の製作現場で働くアニメイターで。主婦になってから、掃除はできない、炊事もできない、お金の管理もダメ、ご近所との付き合いも上手くない...。そこで、診断を受けてみたらアスペルガー症候群だとわかりました。

その時、母はどうして苦手な主婦をやるんだろうと思ったんですね。障がいがあっても、母はアニメーターとして優秀だったわけで。才能を活かして働いて、稼いだお金で苦手なことは家政婦さんに任せればいいのにって。結婚したら女性は家に入らなくてだめ、という時代だったかもしれませんが、もったいないなと。GIFTED AGENTで、障がい者支援を行なう原点はそこですね。

エンジニア、そして起業家として成長した10代

― 15歳で家を出たと伺いましたが、23歳の現在までどんな道を歩んできたのでしょうか?

中学卒業後、スウェーデンを目指して家を出ました。お金を出してもらったわけではないので、海外への渡航費を稼ぐために、最初は東京に出てアルバイトを始めましたね。

大工、製造工場、レストラン、ホテルマン、引越し屋、色んなバイトをしたのですが、その中でびっくりしたのが、世の中には自分の才能を活かせない発達障がい者の方が想像以上に多いこと。ヨーロッパの音楽院を卒業したようなピアニストの人が、障がいのせいでウェイターをやっていたり、ネット界隈で超有名なプラモデル職人が、製造ラインで働いていたり。本当に驚きました。我が家が特殊なのではなくて、世の中みんなこうなんだ、もったいないと思いました。

また、ホームページ制作のアルバイトもやっていて、そこでエンジニアとしてサービスを作ったり、起業することの面白さに気づきました。Q&AなうというITベンチャーで働いていた時に、サービスがオウケイウェイヴさんにバイアウトされたんですよ。わずか数人の会社でも良いものを作れば世の中の目に留まるんだなって思いましたし、その後にTokyo Otaku Modeの起業にも携われた。会社の立ち上げはとにかく面白いなと。

それで20代になってから、自分でも3社起業したのですが、そうは上手くいかなかったですね。その結果、もう一度自分に何をやりたいかと問いかける機会になりました。その時に、高橋との出会いがあって、才能を活かせない発達障がい者への支援と、起業したい気持ちが繋がって、GIFTED AGENTを創りました。

「偏りを活かす」特殊な才能を活かせる社会を創りたい

― 発達障がい者が世の中に多いと仰られましたが、そんなに多いのでしょうか?

文部科学省の調査では、小学生の100人のうち6人に発達障がいの傾向があると言われています。また、ハッカソンや人材紹介をやっていて多いのは、一度就職してみて仕事で行き詰ってしまい、診断してみたら発達障がいと言われてしまった人たちです。

そもそも発達障がい自体、まだあまり認知されていないので、本人も気づいていない場合が多いんです。また、手が不自由とか、耳が聞こえないとか、目に見える障がいではないのも難しいところ。大学までは勉強もできて普通に暮らしてきたのに、就職してからコミュニケーションが取れない、空気が読めなくて問題になってしまったり、そもそも就職すらできないなんてことも。

左から、共同代表 高橋優さん、ハッカソン参加者 今井泰文さん、河崎純真さん

ハッカソンに来ている方に、早稲田大学で数学博士号を持っている今井さんという方(上写真)がいるんです。彼は自閉症で、コミュニケーションの問題で就職できない。数学科出身なので、非常に論理的な思考をされるのですが、口の表現が苦手でというだけで...。彼だけでなく、本当にそういう人は多いんです。

発達障がい者は、知名度の低さと、健常者からの偏見で自己嫌悪に陥ってしまう人が多くて。障がいと聞くと、もうそれだけでNGとなっちゃう人や「障がいのある人は、何かすごく課題を抱えていて、我々にはとても関われない、扱いようのない人だ」と決め付けてしまう人。逆に赤ちゃんを扱うように接する人もいて、そんな風に扱われてしまったことで、自分自身に嫌悪感を抱いてしまう人が多いんです。

僕もそうですが、子供の頃から障がいと向き合ってきた人は、障がいは個性、普通だと認めてしまえるんですが...。

― 最後に、事業にかける思いや目標について教えてください。

私たちは、障がいをマイナスのものと捉えていなくて、むしろスキルだと思うんです。

たとえば、自閉症のこだわりを持ちやすいという特徴は、プログラミングの速度を1秒でも早くすることに使われれば非常に良いこだわりになります。

ADHDの人は、衝動性が強く、集中力が全くない瞬間があったりするんですけど、「あ、そうだ明日海外いこう」みたいな、普通の人が躊躇するようなことをすぐ準備して行動できちゃう。

LDという学習障がいのタイプの人は、読む、書く、聴くみたいな、一般的な、基本的な認識能力や表現が弱いとされている。その代わりに、図解で表現したりすることが強い。デザインなどで活躍の場がありそうですよね。

苦手な部分を普通にするのではなくで、得意な部分を強くして、認めてもらえる場所を探すのが私たちの使命だと思っています。その結果、発達障がいを抱えている人たちが、ちゃんと自分の一番得意で、一番やりたいことで働いて、お金になって、社会に還元できる世界を作っていきたいと考えています。

― ありがとうございました。GIFTED AGENTがさらに発展することで、たくさんの発達障がい者の方がイキイキと働くことができる社会になることを願っています。

[取材・文] 手塚伸弥

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