先日私はニューヨークへ行った。
数多くのショップが並ぶ五番街。ここは日本でも数多くの人が知っている店がいくつか並ぶ。
そこでたまたま入った1軒の服屋が、ニューヨークが個性を認めてくれる街であることを私に教えてくれた。
お店に入った時だった。
今まで見たことのない大きいサイズのマネキンを発見した。
堂々とフロアの真ん中に立って、メタリックのカラージャケットにカラフルな花柄デザインの黒地ワイドパンツを身にまとっていた。 体格が大きめの人向け用の「プラスサイズ」のマネキンだ。
プラスサイズの服があれば、誰もが体型に関係なく自分の着たい服を楽しむことができる。ニューヨーカーからすれば何の不思議もない普通のことだそうだ。 カラダにはそれぞれの美しさがることをみんなで認識し、違いを受け止めているからである。
ファッションだけじゃない。ニューヨーク市内を走るサブウェイ内で披露されるパフォーマンスや街にそびえ立つビルも、一人ひとりの個性が爆発している。
アーティストが乗っている車内では、歌やダンス、太鼓などが披露される。誰の許可なく、自分をアピールする如く即席ライブが開催される。また、新しいビルと古いビルが共存し合う景色は、お互いの個性を評価されながら、違うものとして残されていく。
一方で日本はどうだろう。
同調意識が先にきてしまい、あまり個性がないように思えてしまう。
「出る釘は打たれる」ということわざがあるように、日本では昔から人と違うこと、人と違う見た目であること、目立つことは「良くない」と評価されてきた。 電車内で騒げば、たちまちマナー違反となる。 モデルや芸能人が「細い」ことが美しいとされる「やせ信仰」もちょっと息苦しい。本当は、もっと体型ごとの様々な美しさがあるはずだ。
私の友人に川崎出身のデザイナー板倉北斗さんがいる。彼は現在22歳。今年の1月、自らがプロデュースする「Petty」というアパレルブランドを立ち上げた。
商品の品数は少ない。それでも、みんなが着ることができるおしゃれなスウェットを販売している。特徴的なのは、Pettyが販売するスウェットシャツは2型ともユニセックスでワンサイズであること。着る人によって個性が出る次世代の服である。 大きいサイズも小さいサイズも、細いサイズも、メンズもウィメンズもない。
もともと軍の男性が着ていた物をデザインベースにしている。性別や体型に関係なく着用してもらいたいとして、あえてサイズはたくさん作らなかった。
同じデザインなのに、着る人によって雰囲気が変わる不思議な服。同調より、多様性が強調される。
大学在学中にファッションに興味を持ち、卒業とほぼ同時にブランドを立ち上げた。
在学時、初めはファストファッションを中心に着ていたが、次第にヴィンテージウェアに興味をもったそう。
話を聞いてみた。「ヴィンテージウェアは単純にファストファッションでは出せない雰囲気がありカッコイイが、それは外見的な一部の魅力にすぎない。服の状態、形、生地や糸、縫い目やボタンなどのディティールから、当時の着用者、生産国、国の時代背景などを考えることができる。私はそのような内面的な魅力に特に惹かれた」という。
現代のファストファッションにはそのような内面的な魅力は少なく、物足りなさを感じたことから、ヴィンテージウェアをデザインソースとして、ディティールにこだわった服を作りたいとブランドをスタートさせた。
またLGBTや人種差別などの社会問題についても、関心を示す。
「ファッションは自由だと思います。女性が男性モノを着ても、男性が女性モノを着ても、いいと思います。ですが最近、WEARのアプリ、Instagramのコーディネートの投稿を見ていると、検索やランキング上位はほとんど同じようなコーディネートばかり。正直つまらないです。確かにノームコアが流行しているので仕方ないとは思いますが、多少でもファッションが好きなら、もっと自分を表現すべきです。せっかく自由に自分を表現できるファッションを、普通でいいと思ってしまうのはすごく勿体無いと思います。」
デザインがシンプルであるため、コーディネートも色んな組み合わせが楽しめる。SNSに投稿すれば、着方次第で個性も出せる。
新しいファッションが登場している今、ニューヨークのような個性あふれる多様な日本に期待を抱く。
この旅行は私にとって、当たり前を当たり前に思ってはいけないことに気づかせてくれた。何事も改めて見直すことが重要。その必要性を感じる素敵な旅だった。
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