日本では「ワーゲンバス」の愛称で知られるフォルクスワーゲンの「タイプ2」マイクロバス。残念ながら今年、ついにブラジルでその生産が終了することに決まった。というか、今まで新車が造られていたことに驚く人も多いかも知れない。その生産期間は何と56年。フォルクスワーゲンは、キュートな青と白に塗り分けられた最終モデル「ラスト・エディション」を600台限定で発売すると発表した。
安全装備の義務化により56年の生産に幕
ブラジルでは「Kombi(コンビ)」という名称で知られるタイプ2は、本国ドイツで1979年に生産が終了した後も、長きに渡ってサンパウロ近郊のサンベルナルド・ド・カンポの工場で製造が続けられていた。フォルクスワーゲンの発表によれば、56年間で155万台以上のタイプ2が作られたという。
この度の生産終了は、来年からブラジルで販売される新車にABSと前席エアバッグの装着が義務づけられるため。基本設計が60年以上前のクルマにそんな改良を施しても割に合わない、とフォルクスワーゲンでは判断したようだ。同じように50年間に渡り製造されていたイギリスのMINIでも、最終型でエアバッグは装備されたけれどABSは最後まで付かなかった。
ブラジル製現行モデルは「T2」
写真をご覧になれば詳しい方ならお気付きの通り、今まで製造されてきたブラジル製タイプ2は"顔"に四角い縁がある「T2」呼ばれる第2世代。空冷エンジンのままその生涯を終えたドイツ製タイプ2と異なり、排ガス対策のため水冷エンジンを搭載することから、フロントに黒いラジエター・グリルが装備されている。しかし金属製のバンパーや丸型ヘッドライトとの組み合わせは、レトロな魅力十二分。些か惜しいのはVWのマークが小さいことか。
車体後部に搭載されるエンジンは、先代「ゴルフ」や「ポロ」などで使われていた「EA111」型と呼ばれる1.4リッター水冷直列4気筒。彼の地の燃料事情に合わせて、ガソリンでもエタノールでもその混合でも使用可能なバイフューエルとなっている。ガソリンなら最高出力78馬力、エタノールを入れると80馬力を4,800rpmで発生し(最大トルクはそれぞれ12.5kgmまたは12.7kgm/3,500rpm)、4速マニュアル・ギアボックスを介して後輪を駆動する。初期の1.2リッター空冷水平対向4気筒に比べると50馬力もアップしている。最高速度は130km/h、0-100km/h加速16.1秒(エタノール使用の場合)と発表されている。
600台限定の「ラスト・エディション」
今回発売になる限定モデルでは、「白いブラウスと青いスカートのような(公式サイトより)」2トーンで塗り分けられたボディのペイントと、これに合わせた青/白コンビのビニール張りインテリアに、「優雅さと懐かしさを感じさせる」というホワイトウォール・タイヤを装着。9人乗りの室内にはサイドとリアにカーテン(ロゴが刺繍された留め具付き)が装備され、ダッシュボードに001から600までいずれかのシリアルナンバーが刻まれたプラークが付く。オーディオはカセットテープではなく、MP3対応でUSB装備と現代的。価格は8万5,000ブラジル・レアル(約355万円)。標準仕様の「スタンダード」なら5万レアル(約209万円)からとなっているので、かなり高価だ。販売はブラジル国内に限定されるという。
もし日本に輸入を計画しているVW専門ショップなどあれば、是非紹介させていただきたいのでこちらからご一報を。