空飛ぶクルマは先人が想像した未来の機械文明の中でも実現が難しいとされているものだ。米国の大衆科学雑誌『ポピュラー・メカニックス(Poplular Mechanics)』の表紙は、交通渋滞や道のくぼみから解放され、自家用の乗り物で空高く舞い上がる日がいつかやって来ると期待させていたが、それから何十年もの月日が流れた。テラフージア社のような企業が頑張ってはいるものの、自動車と飛行機との融合は、今のところ順調とは言い難い。
そんな人類長年の夢に、あのトヨタが挑もうとしているらしい。同社が申請した特許書類には、可変式ボディ・パネルを備えた自動車が描かれている。滑らかなフォルムはほぼティアドロップ(水滴)型で、そのお尻には世界一かわいらしい小さなプロペラが装備されている。さらに、そんな可変式ボディの下には独創的な方法で翼が隠されているのだ。地上走行時には翼をボディの外側に畳んでおくテラフージア社のような方式ではなく、トヨタは翼部をボディ・パネルの下に格納する方式を採るようだ。伸張する翼で左右の傾き(ロール)を制御し、フロント・アクスル前方に装備された戦闘機ユーロファイター・タイフーンのようなカナードが、上下方向(ピッチ)はもちろん、おそらく左右の方向(ヨー)も制御すると考えられる(方向舵や尾翼のようなモノが見当たらないため)。
トヨタが米国特許商標庁に出願したこの特許は、2014年12月に申請されていたものだが、ごく最近(6月23日)になってようやく公開となった(公開番号20160176256)。それによると、「機体はその大部分を可撓性枠部材とその間に張られた伸縮性外板によって構成され、作動システムにより飛行モード設定時には大部分の可撓性枠部材を折り曲げることにより収縮型に、地上モード設定時には大部分の可撓性枠部材を広げることにより拡張型に変形する」のだそうだ。
トヨタがこのようなコンセプトに手を出して、その挙句、特許を申請するに至るまでの真剣さを見せているとなると、ちょっと期待してしまう。しかし、自動車メーカーというのは、社内の清掃係が紙ナプキンに残した走り書きから、重役会議におけるブレインストーミングの内容に至るまで、ありとあらゆることについて特許を申請をするものだ。つまり、なかなかクールな特許ではあるが、近い将来にトヨタが空飛ぶ「プリウス」を世に送りだそうとしているかどうかは疑わしい。
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
(2016年7月3日Autoblog日本版「トヨタ、空飛ぶクルマの特許を申請 - Autoblog 日本版」より転載)
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