なぜ人間は、こうも他人の痛みについて無感覚でいられるのか。
なぜ我々は、北ベトナムの村人たちに爆弾を日々振らせ続けているアメリカに加担しなければいけないのか。もしくは、英国も参戦すべきだ、とシャンペン片手にパーティーで悠長に政治議論に花を咲かせていられるのか。1968年に制作されたこの映画は、こう問いかける。
焼身自殺をして殺戮への抗議をするヴェトナムの僧侶に対し、共産主義は人を殺すだけだと自由主義とのイデオロギー闘争を主張するタキシード姿の政治家をカットバックする。ドキュメンタリーと再現フィクション、アヴァンギャルドなミュージカルシーン("Blow the Yellow Ass " (黄色いケツをぶっ飛ばせ!) )に、ただただ馬鹿げたコメディをシニカルにモンタージュし、この世の矛盾と混沌を炸裂させる。カンヌで上映中止、ヴェネチア映画祭で二冠に輝くが劇場公開は悉く妨害され、短期間に終った問題作。
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同じくヴェトナム戦争にまつわる写真表現を批評したスーザン・ソンタグの冷徹な知性も素晴らしいが、ピーター・ブルックの激情はもっと乱暴に人々の心を掻きむしる。人類が戦争を嘘で塗り固める身振りは、実は今もなんら変わっていない。現在向き合うべき問題を鋭く突きつけている。
"TELL ME LIES"(ピーター・ブルック監督, 1968&2012)