伊豆大島の災害。どうか慎んだ報道をお願いしたい

大手メディアやSNS上の情報を見ると「避難勧告出さず」「災害救助に報道ヘリが邪魔をした」という情報が目立っているように見受けられ、救助活動が一心に行われている状況下なのに、ただ誰かを責めるような言葉も目に入ります。約8000人の島人を守る町長にとっても「初めての経験」である豪雨です。小さな島だけに犠牲者が知り合いであることも多く、島人の誰もがショックを受けていることをどうか理解いただき、慎んだ報道をお願いしたい。

強風が吹き荒れながら夜が明けた16日朝、関東を通り抜けた台風26号による伊豆大島の被害状況を知り、愕然としました。16日夜の発表では17名が亡くなられ43名が行方不明。取材等でお世話になった方は多く、ニュースをみる度に胸が痛みます。

原因は観測史上最大の降雨量。800mm以上の雨が1日で降ったことで土石流が発生したことでした。

"大島に人が住みはじめたとされる約8,000年前から、噴火、台風、火事、地震...さまざまな歴史をくり返しながら生活も環境も変わってきた"(大島町公式サイトより)。

1927年から2008年までの島の歴史が記された伊豆大島小史には、天災による犠牲者数も記録されていますが、この記録を見る限りでも1927年以降でこれだけ多くの犠牲者を出された災害はありません。報道では「10年に1度の台風」という文言を目にしますが、伊豆大島に暮らしている人にとっても「初めての経験」だったと言えます。

伊豆大島では、1957年の噴火で1人が亡くなり、その教訓から1986年の噴火時には1人の死者も出さずに約1万人を全島避難させたという経験があります。近年、都心では近代的な安心安全システムが構築されていますが、同じ東京都であっても島はそれほど近代化していません。しかし、システムに頼りきれない分、島には長い歴史の中で得てきた自然とともに生きる知恵が継承されており、災害意識もけっして低くないと私は感じています。

大手メディアやSNS上の情報を見ると「避難勧告出さず」「災害救助に報道ヘリが邪魔をした」という情報が目立っているように見受けられ、救助活動が一心に行われている状況下なのに、ただ誰かを責めるような言葉も目に入ります。約8000人の島人を守る町長にとっても「初めての経験」である豪雨です。小さな島だけに犠牲者が知り合いであることも多く、島人の誰もがショックを受けていることをどうか理解いただき、慎んだ報道をお願いしたい。

「防災」について、確かに今後検討を重ねるべき本質的課題はありますが、今は直近で解決すべき課題が優先です。また最近は「情報がない時代」ではなく「情報が溢れる時代」であり、SNSでの個人発信にしても、ニュース性のある話題を追って騒ぎたてることで、さらに情報が増え「大事なこと」が見えづらくなることを個人発信をされている方にも理解いただきたい。そして、都や国など大きな力を持つ方には、島に暮らす8000人だけでは解決できないことをサポートいただけたらと思います。

離島経済新聞社はわずか数名の小規模メディアになるため、大手メディアと異なりヘリを飛ばすなど素早い報道はできませんが、島に暮らす方の声が入り次第、継続的にお伝えしていきたいと思います。(伊豆大島に暮らす方で伝えたいことがある方は離島経済新聞社 [mail★ritokei.com ★を@に変えてください]までご連絡ください)

少なければ干ばつとなり、適量であれば恵みであり、大量になると脅威となる雨。

お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りします。

(※こちらの記事は2013年10月17日の「離島経済新聞」より転載しました)

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