「生理痛がつらい」と言っても仕事は任せてもらえるのか 上司の"本音"を聞いてみた

「体調をオープンにすることの意味を感じたのは、ある上司のもとに異動になった時です」働く女性向けウェブメディア「ウートピ」編集長の鈴木円香さん

「生理痛が辛いので、働き方を変えたい」。上司に重い生理痛を相談してから早5カ月。リモートワークで自宅作業をしたり、低用量ピルを飲んで痛みを緩和したり...。今までじっと我慢してきた痛みも周囲にオープンに相談することで、気持ちもカラダも随分と楽になった。

4月29日夜11時45分から放送されるAbema TV『Wの悲喜劇』で、ハフポスト『Ladies Be Open』によるコラボ企画「働くオンナの生理最前線」が特集された。

共演した、働く女性向けウェブメディア「ウートピ」編集長の鈴木円香さんは、2年前の出産をきっかけに働き方を見直し、現在は週に1度だけオフィスに行き、あとはリモートワークで仕事をしている。ウートピは編集スタッフ女性5名、他男性スタッフ2名の計7名のチーム。しかし、週に1回の出社だけで、どうやってチームメンバーのカラダを気遣いながら働いているのか。彼女が出版社時代に経験した苦い思い出とともに、いま大切にしているチームメンバーとのコミュニケーションについて語ってくれた。

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リーダーとして、「正しく心配」したい

−−生理がひどくてどうしても出勤がつらい時、上司に細かく知られたくないという理由で「体調不良」と言って、休む人もいます。鈴木さんは、部下に具体的な理由を言われた方がいいと考えますか?

管理する立場として、私は言ってもらったほうがいいです。本当は生理が理由なのにちょっと頭痛がして、しんどくて休みますとか、午前自宅作業にして午後からにしたいです、みたいなことを言われると他の理由を考えてしまいますよね。仕事の回し方に問題があったり、その人が仕事でつまずいていて、メンタルのバランスを崩していたりとか...。生理とか、不妊治療で調子が悪いとか、具体的な原因がわかるとこっちの心配の仕方が変わってきます。

−−私自身も、上司に「生理痛」がひどいと言えなかった時は、どこか上司を裏切っているような、嘘をついているような感覚になりました。上司が心配している様子が伝わってきたので。

やっぱり、仕事がしんどいときにメンタルのバランスが落ちてきて会社行きたくないなって思うのは誰にでもあることですよね。もしその可能性があるんだったら、マネジメント側としては仕事の振り方を考えるとか、もうちょっときめ細やかにいろいろ教えてあげるとか、何か対策をとらなきゃいけないんだけど、何も理由を言われないとそこの判断がつきにくいですよね。

−−体調不良の原因は、確かに本人しかわからないところなので、上司が判断することは簡単ではないかもしれないですね。

今の編集部のように女性ばかりだと、生理で調子が悪いとか、生理痛を和らげるために漢方を飲み始めたら、その副作用で調子が悪いとか、花粉症がひどくて今日はもう家から出られないとか、かなり具体的に報告を受けます。編集部以外の男性スタッフにも朝必ず下痢になる人がいるんですけど、そのせいで電車に乗れなくて出社できないと教えてくれたり。そういうふうに話してもらうことで心配するべきポイントが見えてきます。正しく心配できるというか、的外れな心配をしなくて済むようになります。

この人はそういう体質なんだとしっかり把握することと、もしかしてモチベーション下がっているのかな?やる気ないのかな?といろいろ考えちゃうこととでは、上司と部下の関係が変わってくると思うんです。人間関係とか信頼性も含めて。

−−そういう相談が来たときって、お医者さんに行ったかどうか質問されていますか?

それに関しては、私に報告する前にみんな大体行ってますね。通院した上で、私に報告してくれます。

「本音」が言えないことで、悪化した上司との関係

−−鈴木さんご自身は、上司に何でも話されていましたか?

いえ、そうでもなかったんです。私は何度か転職しているんですが、以前の職場で壁にぶち当たったことがあって。頑張っても思うように成績が上がらなくて、立てた企画もなかなか会議を通過しなくて、そのうちに「私、評価されてないよな」と勝手に思い込んで上司ともコミュニケーションをとりづらくなって。つい会社に行くの嫌になっちゃったんですよ。そのときにものすごく体調が悪くなって、朝起きてベッドから起き上がれなくなってしまいました。体が重くて、頭も痛いし、全身で拒否していました。その当時は、上司に「体調が悪くて休みます」と言っていたんですけど、でも本当は体調が悪い原因は、病気のウィルスや菌ではなくて、仕事でのつまずきでした。

当時は出版社で編集の仕事をしていたんですが、自分が作りたいジャンルの本と、上司から作るように求められていたジャンルの本が食い違っていて、苦しんでいたんですね。本当は上司にこの点で自分が苦しんでいることをストレートに相談して解決すればよかったんですけど、ただ「体調が悪くて」としか伝えられなかった。上司にしてみれば、私の原因不明の体調不良になす術もない。こういうコミュニケーションロスはすごくもったいないですよね。

−−「体調不良」の原因が仕事のつまずきということはよくありますよね。

体調をオープンにすることの意味を感じたのは、ある上司のもとに異動になった時です。その上司はものすごく仕事ができる人で休日も関係なくバリバリ仕事をするハードワーカーでした。でも、途中で体を壊しちゃって、会社から休養を命じられたんです。彼がそのことをチームでオープンにしたことで、みんな「やっぱり大変だったんだ」と初めて気づいた。もともと疲労も体調不良も顔にも出さない人だったので「いつも元気だな、あの人」っていう感じで周りは見ていたんですが。

リーダーが体調の悪さをカミングアウトしたことで、限界に達していたことにやっと周りが気づきました。知らず知らずのうちにチーム全体がその人の背中におぶさっていたところがあったんです。でもやっぱりそれで限界になっちゃったんだよね、っていうのがみんなわかって。それで、彼一人に頼りきってちゃダメだとメンバーも気づいたというか。

−−これまでの職場での経験は、今の職場に生かされていますか。

そうですね、自分自身の苦い経験もあってか、今の職場はかなりオープンなコミュニケーションをとっています。今は私が編集長だから自分でカルチャーを作れるっていうのもありますよね。以前の職場では、私は管理職についていなかったので、そこまで考えることはできませんでしたが。

今は2歳の娘がいるんですけど、いろいろ変則的なことが起きます。例えば編集部から夕方の7時頃に連絡があって、今タイトル変えないといけないんで見てください、とか、8時に掲載する原稿なんで最終チェックお願いします、みたいなことを言われたときに、「ごめん!今、保育園からの帰りで車運転している」とか、「ごめん!今、お風呂入れている」とか、状況を詳しく説明して「対応できない」と謝るほかないときがよくあります。「本当にごめん!今、おむつ替えている!3分後にレスするから!」みたいに、普段なら人に言わないようなことまでをみんなに細かく伝えています。詳細を伝えることが、みんなに迷惑をかけているせめてもの贖罪というか...。

そんなふうに2歳児を抱えながら仕事をしていると、プライベートと仕事を白黒はっきり分けられない部分があります。「早朝4時から7時は仕事しているから、急ぎの案件はそれまでに私のタスクボックスに入れといて」「今日は娘が熱を出して家にいるので、この案件は明日の朝7時までにレスします」とか、私のプライベートをみんなに見せることで、チームにできるだけ迷惑をかけずに回しています。

普通とは、逆ですよね。週に1回の出社だからこそ、ほとんど顔を合わせられないからこそ、自分のプライベートについても説明するような細かいコミュニケーションが必要になってきます。だから、冒頭で話したようなオープンなカルチャーに、チーム全体が自然になっちゃって、お互いの体調や体質も普通にチャットツールで知らせる環境になっているんだと思います。

−−細かくプライベートを共有することに抵抗を感じる方はいなかったんですか?

共有する度合いは、個人差がありますね。例えば7人のメンバーの中でも割とプライベートのさらし具合は差があるかもしれません。抵抗のある人は、他の人ほどオープンにしていません。でも、結構ウートピの編集部は自分のプライベートをネタに企画を立てるので、みんな丸裸でお互いのことよく知っているんですよ。

−−これまでの職場での働き方との違いはありますか?

これまでの職場はそんなさらけ出しませんでした。今と比べると、お互い何も知らないと言ってもいいかもしれない。振り返ると、もう少しお互いのことを共有しても良かったなって思います。特に、体調やそれと連動するメンタルのことは、働き方の観点からしても上司に伝わっていた方がいいですね。

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上司に体調のことを知られてしまうと、信頼されなくなってしまうのではないか。私はその恐怖もあって、生理のことをなかなか相談できなかった。しかし鈴木さんと話してわかったことは、具体的に話すことによって信頼関係を構築する方法もあるということだ。すべての上司と部下には当てはまらないかもしれない。それでも、「相手はきっとわかってくれない」と初めから諦めていた人に、少しでも働きやすくなるヒントになればと願う。

鈴木円香さんの記事はこちら

☆Abema TV「Wの悲喜劇」☆

鈴木さんと私が共演する「Wの悲喜劇〜日本一過激な女のニュース〜『働くオンナの生理最前線』」は、4月29日(土)23時45分〜放送予定。再放送は、4月30日(日)17時00分〜。

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