私は今、28歳。未だに結婚がよくわからない。
よくわからないから、憧れもない。焦りもない。
でも、気にはなっている。なぜ友達が急に婚活にのめり込むのか。以前から付き合っていたパートナーを生涯の伴侶にすることを真剣に考え出すのか。
そんなもやもやした気持ちを、究極の婚活サバイバルを経験した「ハイスペック」な男性2人にぶつけることにした。
この番組は、イケメン、高学歴、高収入な1人の独身男性が、20数人の女性から実際に将来のパートナーを選ぶ内容。回を追うごとに、女性が1人、また1人と「脱落」させられていき、最後に残った女性と結ばれる仕組みだ。日本以外にも各国バージョンがあり、計225カ国で配信されてる。
限られた時間の中で見た目も中身も違う女性たちから、たった1人を選ぶ。一風変わった婚活を体験した彼らは、結婚とどう向き合っているのだろうか。
プロフィール(敬称略)
・久保裕丈
1981年 東京都生まれ。東京大学大学院卒
2007年 外資系コンサルティング会社A.T.カーニー入社
2012年 A.T.カーニー退社後、ミューズコー株式会社を設立
2015年 ミューズコー株式会社売却
2018年 "買わないインテリア"をコンセプトにしたシェアリングサービス「CLAS(クラス)」の事業開始
・小柳津林太郎
1981年 京都府生まれ。6歳から14歳までニューヨークで過ごす。慶応大学経済学部卒
2006年 IT企業 入社
2008年 子会社を立ち上げ、代表取締役就任
2012年 米国子会社立ち上げ
2015年より 本社にてエンターテイメント事業の本部長を務める
井土亜梨沙 容姿、中身ともに「完璧」な男性と言われている2人ですが、バチェラー・ジャパンにわざわざ参加しなくても出会いに困らなそうです。それでもなお、運命の相手を番組で見つけようと思ったのはなぜですか。
久保裕丈 バチェラー・ジャパンで、見つかればいいなというくらいの気持ちが正確な表現かなと思います。もちろん本気で好きになれるだろう人、本当に結婚したいと思う人を選んでいますが、もしかするとそれは見つからないかもしれないという可能性もあります。だから、ある意味、普段の出会いの一つくらいの感じとして考えていました。
小柳津林太郎 久保さんもそうだと思いますが、仕事に集中しているタイプだったので、人間関係も限られていて、たまたま出会いがなくて...。バチェラーのような機会があって、見つかったらすごくラッキーだと思いました。だからと言って、バチェラーに出たから絶対に誰かと結婚しなきゃという強迫観念は特になかったので、そこらへんはリラックスした形で臨みました。
井土 バチェラー・ジャパンは、出会う方法の一つとして考えていたんですね。
小柳津 1つ特徴としてあげるとしたら、自分が普段会わないような「生態系」の方々との出会い。僕は普段渋谷のIT系企業で働いていますが、番組ではそれ以外のいろんな職業、バックグラウンドの方々と出会えます。そんなことってそもそもないので、すごく期待していました。
井土 シーズン1で参加していた見た目も中身もギャルの「ゆきぽよさん」のような人は、久保さんは初めての出会いだったのではないでしょうか。
久保 未知との遭遇ってこういうことを言うんだろうなって思ってました。あの時は。
井土 こんなに合わなそうな2人見たことないです。でも彼女のファンは、とても多かったですね。
久保 ゆきぽよとお別れのタイミングでは、こんなにSNSで怒られるのかと思いましたね。くぼりんサイテーって(笑)。でも、普段だったらもしかするともっと早い段階でお別れしているかもしれない子とも向き合ってみる機会がある。ゆきぽよって普段の出会いだったらファーストインプレッションですぐにバイバイってなっているかもしれない、でも何となく引っかかりを感じたので、残ってもらいました。回を重ねるごとに彼女の魅力にどんどん気づいていきました。
普通だったら絶対しない決断ができましたね。やっぱりそれだけ女性と向き合うと最初の第一印象だけでは到底わからないような部分が見えてくるんだなと。
井土(心の声) 恋愛だと、一目惚れや最初の印象で始まることも多いけど、結婚相手を見つけるときはそれだけじゃダメなんだ。相手と向き合うことが重要っていうけど、そもそも1人の人と向き合うってどういうこと?
井土 番組に参加されて、相手を選ぶときのポイントはなんでしたか。
小柳津 やっぱり誠実に女性と向き合うことですね。撮影の3ヶ月弱、僕の中では過去最大、一人一人の女性と向き合うことだと思います。
井土(心の声) また「向き合う」って言葉が出た。
小柳津 その人の表層的ではなくて内面、どういう「魂の色」をしているのかというところまで、ちゃんと知った上で判断していかなきゃいけないという前提に立っていたので、そういう意味では過去最高に誠実にできたんじゃないかと思っています。
井土 「魂の色」って面白い表現ですね。それってどうしたら見えてくるんですか。
小柳津 やっぱり人間の核となるような深い話に突入しないとわからないと思います。その人の心が本当に俺を見ているのかとか、本当はその時に何を感じているのかとか。
まずは僕から心を開いて、それから相手に開いてもらうというステップを取らないとそう簡単に向こうから心を開くことはしないと思います。番組では僕から全開で自分のいいところも悪いところも含めて出すように心がけていました。
僕だからこそ開いてくれた女性に対して特別な思いがそこで生まれて、そういう繰り返しを最初から最後までして、本当に女性というか人として向き合う尊さを感じました。
井土 シーズン2の5話までを見て、小柳津さんは相手の女性が最後まで心を開いてくれないという理由でバラを渡さなかった(相手として選ばない)ケースが多かった印象を受けました。
小柳津 そこは難しいところでして、誰とお別れをするかって久保さんもきっと最初から最後まで大変だったと思うんですけど、やむをえずですよね。限られた時間の中で、時間はなるべく皆さんと平等に過ごそうと思っていたのですが、結局過ごせなかったら過ごせなかったで、それは運命というか。
「魂の色」までわからない人もいたんですけど、縁がなかったということかなと思いました。
井土(心の声) 恋愛は、じっくり相手と過ごす余裕があるが、結婚になると「リミット」にいつも追われているような感じがする。「結婚はタイミング」だと多くの人は言うが、時間や期限を気にすることで決断力を高めているのかもしれない。でもそうやって焦って決断して、うまくいかないケースもいっぱいあるんじゃない?
井土 久保さんは、シーズン1で25名の女性の中からひとり選びました。あれだけデートを重ねて、密な会話をして、最適な女性を選ばれましたが、今年の2月22日にお別れしたことをインスタ上で報告しています。今、どんな相手がいいなって思いますか。
久保 女性のタイプってことだと、一番は自分が家に帰ってパンツ一丁で歩き回れる、それだけ素をだしても嫌じゃない女性っていうのが第一条件です。他でいうと、その女性が何であれ、やりたいことが見つかっていて、熱中していて、ある程度自立できている女性の方がいいなと思います。
自分自身がまた新しく会社を立ち上げて社長をやっているので、一緒にいるときにサポートして癒してくれる女性だとなおさらいいなと贅沢に思っています。
井土(心の声) そんな完璧な人いるかな?
井土 自分が帰宅した時に、ラフな格好でいる女性はどうですか。
久保 全然気にしないです。むしろそうであってほしい。たまに家でも寝る直前までメイク落とさないで、すっぴんをできるだけ見せたくないみたいな女性っているじゃないですか。それよりは、すぐにメイクも落として、パンツ一丁じゃなくてもいいですけど、ラフな格好でいてくれた方が僕自身もリラックスできてありがたいですね。
井土 小柳津さん、今までの恋愛の中で結婚の位置付けはなんですか?
小柳津 20代後半からは結婚を見据えていない女性とは付き合いたくなかったですね。だから恋愛の終わり方も、自然消滅して逃げるよりかは、相手を尊重してここで先がないなと思ったら、自分から先に区切りをつけていました。
久保 えー、捨てるんだー。サイテー(笑)
小柳津 ...はい。結婚する未来がないなら早く言ってあげた方が相手にとってもいいので終わらせます。結婚見据えているのにダラダラ付き合っていても申し訳ないですし。
井土 久保さんはどうですか。
久保 バチェラー出る前にお付き合いするとき、軽い気持ちで付き合うわけではないんですが、この人は結婚相手として適しているかどうか、そういう視点を持って女性を選ぶことってなかったんですよね。
バチェラーに出てるときって、本気で結婚相手探すつもりで女性を見ているので、ただ恋愛するっていうのにプラスアルファで新しい視点が必要になってくる。
家族との付き合いもそうだし、どのくらい自立している女性なのか、大変なシチュエーションになったときにどれくらい忍耐強い人なのか、今までの恋愛ではあんまり気にしなくていいようなポイントが結婚するにあたって必要なのかなと思って、それを意識するようになったのが一番の変化かなと思います。
井土 今まで意識していなかった理由はなんですか。
久保 意識していなかったというよりも、2、3年付き合って、ゆくゆくは自然と結婚できたらいいなという気持ちでいました。もしかしたら結婚にフィットしないポイントがあったとしても、付き合ってるうちになんとかなるでしょ、というくらいの気持ちでした。
全く意識していないわけではないけど、どれだけ大事なポイントかどうか考えてなかったっていうのが正確なところかもしれないですね。
井土(心の声) 私もどちらというと、久保さんタイプだ。恋愛において、結婚を先に見据えてしまうと本当に「好き」なのかわからなくなってくる気がして怖い。結婚は気持ちよりも「条件」が重要になってくるイメージだから。でも、それは長期的に相手と一緒にいるための合理的な判断なのかもしれない。本当は愛のある選択なのかもしれない。
井土 最後の質問です。私は平成生まれのミレニアル世代です。その視点から見ると、バラを渡すとか、ヘリデートとか、貸切とか、少し時代がバブリーというか、正直少し古臭い演出のような気もしてしまいます。結婚相手を決める上で、その演出って必要なんでしょうか。
久保 ぼくの私見ですけど、やりきっている感、振り切っている感は一つ魅力だと思います。ヘリデートとか貸切デートとかあのバブリーな感じって発想としておっしゃるように古いじゃないですか。明らかな「港区おじさん」の発想そのもの。
でもミレニアル世代はもう少し人間関係の部分でもライトに、ある意味上手に器用に立ちふるまえる子達だなという印象がある。その真逆に番組はふっている。全力投球でやりきっている感みたいな。そこをちょっと古臭いのものを逆に見るのも面白いじゃないですか。自分たちの経験とは全く違う世界観を垣間見れるというのは。
あともう一つ面白いのは豪華な背景でも滲み出る圧倒的リアリティ。2話目で半分以上の女性が泣くのとか、あれ地獄かと思いました。あの夜は帰りた〜い、とずっと思ってました。ただ台本がないというだけでなく、さらにそこでみんなが追い込まれて苦境に立たされている、そこから滲み出る人間性みたいなところは面白いし、なかなか経験できないと思っています。
小柳津 久保さんがおっしゃることがほとんどで、付け加えるとしたらローズセレモニー(バチェラーが残って欲しい女性にだけバラを渡すイベント。最終的に1人だけに渡される)というフォーマットがあるから女性陣も男性陣も本気にならなきゃいけない。限られた時間の中で、人として向き合いきらなきゃいけないというところに本気やリアリティだでてくる。
久保 ローズセレモニーの時の女性の顔、あれはなかなか演出されたドラマでは出せない表情ですよね。
井土(心の声) 2人の話を聞いて、結婚したくなったわけではない。でも、関係性の中で相手の「本気度」を試したい気持ちはよくわかった。結婚はもしかしたら、それを試す一番わかりやすい手段なのかもしれない。どこか冷めた気持ちがあっても、ちゃんと相手と向き合いたい気持ちはきっと時代に流されない。「ねぇ、私のことどう思ってる?」大切な人に聞いてみたくなった。