アテネからヤスー (こんにちは): ハフポストギリシャ版を紹介します

私にとっては、最高の帰郷となりました。人同士がつながり合い、面白い会話が弾むギリシャの伝統に、ハフポストがしっかりと根差しているからでもあります。
Lefteris_ via Getty Images

ハフィントンポストが世界へと進出する時にはいつも、私はこのスペースを使って、新しく立ち上げた各国版を紹介してきました。しかし、今まで発表してきたことは、今日ここでシェアすることと比べると、個人的に少し意味合いが違ってきます。

今日の発表とは、ハフィントンポストを私の生まれ故郷のギリシャで立ち上げることです。少し感情的なところに話は逸れますが (また少しネタばれになってしまいますが - ネタばれ癖は私の遺伝子に組み込まれているようです)、今もパルテノン神殿の美しい景色が見えるオフィスで、素晴らしい編集者たちのチームに囲まれ、私は感謝の気持ちでいっぱいなのです。

私にとっては、最高の帰郷となりました。ここが自分の生まれたところであり、言葉のアクセントを身につけた場所であるということだけでなく、人同士がつながり合い、面白い会話が弾むギリシャの伝統に、ハフポストがしっかりと根差しているからでもあります。3年以上前、私たちがグローバル展開を始めた時、私は(私たちと同郷の名前を拝借すると)ハフポストの「オデュッセイア」が、いつの日か我々をギリシャに導いてくれるだろうと感じたのです。そしてついにこの日がやってきました。私はこれ以上ないくらいに幸せです。

また、ハフポストを、ギリシャ最大のデジタルメディア会社である24MEDIAとの協力で立ち上げることができることにも、私は喜んでいます。この夢の実現は、私たちのパートナーの支援がなくしてはあり得なかったことでしょう。エウゲニア・チャンドリス (私の大切な友達で、この40年間、私の2人目の妹のようでした)、マリアナ・ラトシス、ディミトリス・マリス、さらにペトロス・パッパスなどの協力の他、24MEDIAのCEOのストラフロス・ドラコウララコス、アクロポリス博物館の館長のドミトリス・パンテルミリスなどの支援もいただきました。

ハフポストをギリシャで立ち上げるに至って、私の人生は、多くの点において、一周したような気がします。私の父は、小規模な新聞ベンチャー事業を立ち上げた、新聞会社の起業家でした - ちなみに事業は全て失敗に終わりました。(ハフポストが紙媒体で発行していないのは、ただの偶然ではありません!)

私が11歳の時に両親は離婚したのですが、私は母と妹のアガピと3人で、アテネにある1ベッドルームのアパートメントで暮らしていました。母は、私と妹が可能な限り最高の子ども時代を過ごせるように、驚くほど手を尽くしてくれました。彼女は長時間、家のキッチンで働き続け、私たちが日々問題に直面すると、ギリシャ哲学について議論して、私たちを導いてくれたのです。そして彼女はいつも何か料理していて、20分ごとに何かを食べないと、何か恐ろしいことが起きてしまうと信じているようでした。

当時はまだ、ギリシャの女性は結婚する際に持参金が必要な時代でした。なので、母はいつも私にこう言っていました。「あなたには、教育が持参金よ」と。私に教育を受けさせるために、母は所持していたあらゆるものを売り払いました。最後に残った金のイヤリングさえも手放したのです。それから私の旅は始まりました。ケンブリッジ大学での学生生活、作家としてのキャリア、結婚、母になった体験、離婚、そしてハフポストの立ち上げです。しかし、ギリシャは私の人生が始まった場所なのです。

これからは、ハフポスト・ギリシャでは、ギリシャで最も問題になっている話題(また重要な話題)を取り上げ、ギリシャの人々が自分たち自身で議論できるようなお手伝いをさせていただく予定です。ハフィントンポストは世界中で調査報道をし、ピューリツァー賞を受賞した報道機関であると同時に、著名人もそうでない人も、何か関心を寄せることがあれば、それを語ることができるプラットフォームでもあります。ですので、この国の歴史上、最も問題が山積しているこの時代に、ハフィントンポストをギリシャで立ち上げることができて、本当に嬉しく思います。

ハフィントンポストが成長していく度に、私は何度も何度も、故郷の伝統と知恵に立ち返りました。我がギリシャの先人たちにとって、哲学とは学問上のエクササイズ以外の何物でもなかったのです。「よい人生とは?」と問うことは、生活術として日々取り組んできたことだったのです。このように問うことは、成功を、富や権力といった1次的、2次的な価値観ではなく、ウェルビーイング、ウィズダム、ワンダー、ギビングなどから成るサードメトリック(第3の価値観)から再定義するという、ハフポストの使命の根底にあるのです。

今日でもギリシャでは、他の多くの国と同じように、よい人生とは(どのような定義であれ)ほど遠い困難な課題に立ち向かっています。失業率は7月には26%になり、このうち若者の失業率は全体の49%を占めています。緊縮財政によって、ギリシャ経済はぼろぼろになり、その一方で自殺者数や薬物の使用や過剰服用は劇的に増加しました。緊縮財政による負のサイクルに陥ったことで、ギリシャ政府が、増え続ける最貧困層の人々を支援する力も衰えています。

しかし、ギリシャは着実に前に進んでいます。ギリシャの人々が再び立ち上がるのを、私は人生の中で何度も直接この目で見てきました。2011年の夏、私はギリシャの国会議事堂の真向かいにある、シンタグマ広場で何日も夜を明かしました。抗議活動の人だかりの中には、多くの若者や高齢者、自営業者や失業者、活動家、年金生活者などが参加していて、彼らなりのよい人生を生きるための機会を求めていました。

よりよい人生を求める声は今までよりも強くなっており、ハフポストギリシャ版の主な使命は、私たちが持っている秘められた力をいかに活用するかという議論を巻き起こすことになると思います。大規模な制度改革は、言うまでもなく非常に重要であり、私たちもこれらの話題を取材することにはなりますが、制度改革が始まるのを待つ必要はなく、今すぐ私たち自身がそれぞれの生き方を変え始めればいいのです。

ストア派の哲学では、最も確たる幸福の種類とは、我々が唯一コントロールできるもの――つまり自分の内的世界――の中でのみ見出すことが可能としています。我々の心の外にあるものは、ギリシャに住む人々のほとんどが身にしみて感じているように奪い去られることもあります。だから我々の将来の幸せや、幸福感をどうしてそれに託すことができるでしょうか? 一度このことに気づいたならば、私たちは揺らがない心――あるいは、ギリシャ人の言葉で言うと「アタラクシア」――を持つことができ、これでより効果的に、力強く、私たちの人生や、私たちを取り巻く世界に変革をもたらすことができるのです。

今の私は、ギリシャのストア派哲学者だけでなく、素晴らしいギリシャ人チームたちと共にいます。編集長のソフィア・パパイオアンノウは高い評価を受けているジャーナリストで、数十年に渡って豊富なジャーナリズム経験の持ち主であると同時に、この新しい役職に関しても専門性を発揮してくれます。彼女は週に1度、ギリシャのテレビ局「ALPHA TV」の番組 「360 Degrees」で司会を務めている他、以前には、有名な調査報道テレビ番組である「Fakeloi」 (事件ファイルの意味) の共同司会者を務めたこともあります。彼女はこの時に世界中の至る所を訪れました。ギリシャやギリシャの歴史に対する彼女の情熱は、自身の著書「Hidden in the Aegean」によく現れています。この本は1940年代に実際に起きた、若いギリシャ人男性が失踪した未解決事件を紐解いたものです。

編集主幹のニコス・アゴウロスは、編集主幹として6年間働いていた月刊誌「VimaMen」から、ハフポストギリシャ版に異動してきました。彼はイスラエルのテルアビブとロンドン (ロンドンスクール・オブ・エコノミクスではグローバル・メディア論を専攻) に住んだことがあり、現代ギリシャや中東史の研究に情熱を傾け、休日にはギリシャの小さな山や離島などにハイキングに行ってリフレッシュしています。パブロス・ツィマスは有名な政治ジャーナリストで、新聞や放送メディアで35年間働いたキャリアの持ち主ですが、彼には寄稿編集者になってもらうことになりました。デスピナ・トリボリはライフスタイルや文化面を担当し、アニタ・ステファノウはサイトの統括マネージャーに就任します。

ハフポストギリシャ版の初仕事は、ギリシャのカロロス・パプーリアス大統領と、キプロスのニコス・アナスタシアディス大統領のインタビューから始まります。

私たちは、ギリシャが直面しているあらゆる経済問題を手加減なしで取り上げる予定ですが、それと同時に、こちらも全く手を緩めることなく、――仕事を作り、成長を加速させ、新たなつながりを作り上げたりしている――新しい企業の取り組みにもスポットライトを当てたいと考えています。立ち上げに際して、ギリシャのスタートアップの連載にも力を入れるつもりです。初回は「ドクター・エニイタイム」という、患者が医者を見つけ、比較し、レビューを書くことができる医療データベースを紹介します。

また、購入者が価格を比較できる、アマゾンのようなオンライン・マーケットプレイスの「スクラウツ」も紹介します。この他にも、貸しアパートやその他の商品のリストを掲載している、ギリシャ版のクレイグリストの「スピトガトス」も取り上げます。さらに、ギリシャのスタートアップが、伝統的に国の経済の重要な原動力の一つだった観光業の利点を完全に活かしきれているのかを問い、この分野に実験的に参入しているいくつかのスタートアップも紹介します。ツアーガイドとして活躍できる地元住民と観光客をつなぐ「ドピオス」や、ギリシャの素晴らしいビーチのバーチャルツアーを提供している「トリップインビュー」などがそうです。

またハフポスト・ギリシャは、健康で充実感があり、ストレスや心労が少ない暮らしを実現するための、古代ギリシャの知恵と現代科学の融合を模索する場になる予定であり、キクラデス博物館での古代ギリシャの健康をテーマにした、素晴らしい展示会を取材できることにも喜びを感じています。西洋医学の父、ヒポクラテスが今日の幸福について我々に教えてくれる様々なことも取り上げる予定です。同時に、世界中の人々を魅了していて、ギリシャの島々でも増え続けているヨガのリトリートにもスポットライトを当てるつもりです。また緊縮経済がいかに人の心を燃え尽きさせるかという点についても、ギリシャ人がストレスを軽減できるような方法に関する専門家のアドバイスも織り交ぜながら、注目していく予定です。

ハフポストギリシャ版が、緊縮経済の与える影響や、機能していない点や機能不全に陥っている点などについて、手加減せずに報道していくつもりである一方で、機能している点についても取り上げていく予定です。まずはじめに、ギリシャの精神やホスピタリティ、贈与、他者への気遣いなどの象徴となっていて、ギリシャ中で活動している3つの機関にスポットライトを当てます。その1つが「ボロウメ」です。これはギリシャ語で「私たちにはできる」という意味です。この団体は、食べ物の無駄をなくそうと活動している非営利のフードバンクで、食べ物を贈ることができる人と、十分に食べるものを持っていない人とをつないでいます。他には、貧しい人々やホームレスの人たちに奉仕しているモバイル・コミュニティー・キッチンを提供している「オ・アロス・アンスロポス」の話題も扱います。オ・アンスロポスにはギリシャ人のおもてなしの精神が表れていて、食料を提供するだけでなく、会話をしたりつながったりするために、人々を家に招き入れたりもしています。コスタス・ポリクロノポウロスは、25年間勤めた広告業界で職を失い、52歳でこの事業を設立しました。彼はライキという地元農家による市場を歩いていた時に、2人の子どもたちが腐った食べ物が入ったゴミ袋を奪いあっていたのを見て、コミュニティー・キッチンの事業を始めることを思いついたのです。また他にも、スタブロス・ニアルコス財団なども取り上げる予定です。この財団は1996年に、ギリシャの何千人もの人々の生活の改善に率先して取り組むべく設立されたもので、その分野は、ホームレスのシェルターから小児医療、囚人教育や若者の失業に至るまで、多岐に渡っています。

我々はブログも始めます。初回は欧州委員でギリシャの国防大臣や外務大臣を歴任したディミトリス・アブラモプロスに、ヨーロッパの結束と連帯の重要性について書いていただく予定です。またギリシャのオルガ・ケファロヤニ観光大臣には、観光業を通じた失業対策および、起業家精神のモデルとしてギリシャの文化遺産に頼ること、というテーマで、アッティカのレナ・ドウロウ知事には、環境および、ギリシャにおける環境責任を促進することの重要性、というテーマで寄稿頂きます。またロサンゼルス出身のアーティストであるコンスタンティン・カカニアスには、70年代や80年代にギリシャでゲイとして育ったこと、という感動的な記事を書いていただきました; また、若い活動家のパナジオティス・ウラノスには、ギリシャ議会の透明化を促進することに取り組んでいるNGO団体「Vouliwatch.gr」について、ナディナ・クリストポウロウには、ギリシャの女性難民を支援するために、彼女が共同で設立した機関「Melissa」について寄稿いただきました。さらに、母親であり、ブロガーであるイオリナ・ブロウサリには、子どもはなぜ成功することばかり気にするべきでないのか、というテーマで寄稿いただきます。イリオナの記事は元々、自身のブログ 「Not Just Mums」に掲載されていたものです。これはクロス・ポスティングの1例で、イリオナのように、既に記事を書き、発表しているブロガーであれば、記事をハフポストのより広い範囲の読者に届けることができるようになります。

ギリシャで生まれ育って、好きになった詩があります。ギリシャの詩人コンスタンティン・カヴァフィの「イサカ」です。アガピと私はこの詩を暗唱したものですが、本当にこの詩の意味を理解できたのは、もっと後になってからでした。

イサカへ旅立つ今

旅路が長いものになりますように

冒険に満ち

多くの発見がありますように

私の人生はまさにこの通りになりました。今現在、そしてまた今までの何年もの時間を通して、私たちをこの瞬間へと導き、ハフポストギリシャ版の立ち上げを支えてくれた本当に多くの、多くの人たちに、私は大変感謝しています。もし皿があれば、粉々にしたいところです〔訳注・ギリシャでは縁起をかつぐ儀式として皿を割る風習がある〕。ハフポストのグループをギリシャに是非迎え入れてください。オパ!

◇ ◇ ◇

世界的ベストセラーとなったアリアナ本が、ついに日本上陸

成功の二文字から、お金や権力を想起される方は多い。しかし、その二つさえ手に入れれば、本当に成功をつかみとったと言えるのか。

いま、あなたが亡くなったら、家族や友人、同僚は、

あなたについて何を語るだろう?

心身をすり減らしてまで働くことは、もはや「成功」ではないのだ。

「ハフィントンポスト」創設者、アリアナ・ハフィントンの世界的ベストセラー『サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功』がついに日本語化。人生をいかに生きるべきかという哲学的メッセージがふんだんに盛り込まれた、働いているすべての人へ贈る新しい成功論です。

アリアナが世に問う、“サード・メトリック(第三の価値)”とは。

この記事はハフポストギリシャ版に掲載され、英訳されたものを翻訳しました。

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