PRESENTED BY AQUA SOCIAL FES!!

【生息地はたった7ヵ所】希少種ベッコウトンボが人間に教えてくれること

戦前はどこの池でも見られたが、数が激減して国内希少野生動植物種に指定されたベッコウトンボ。

NPO法人おおいた環境保全フォーラムの代表理事・内田桂さん(62)は大分県別府市出身。ランドスケープ設計の仕事をしていたが、2004年に国家資格の技術士(環境部門)の資格を取得したのを機に仕事を辞め、フォーラムを立ち上げて環境保全活動を始めた。

「仕事を通して自然にはいつも関わっていました。でも山の木を切って道をつくり、開けた土地をつくって自然公園にする仕事に矛盾を感じてもいたんです」と当時を振り返る。

おおいた環境保全フォーラム代表理事の内田桂さん

現在は6人のスタッフがいて、ボランティアで参加する会員も約40人いる。幅広い分野で環境保全活動に取り組むが、その原点となったのがベッコウトンボだ。

トンボの中でも原始的な特徴を持つベッコウトンボ。戦前はどこの池でも見られたが、数が激減して国内希少野生動植物種に指定された。現在、生息地は7カ所にまで減ってしまっているという。

大分県内には中津市と大分市に生息地があり、内田さんは調査・保護活動に取り組んできた。大分市青崎の生息地がメガソーラー建設によって埋め立てられることが決まると、近くにビオトープをつくってベッコウトンボが生息できる環境を整えた。

「野生動物は力強く、生息地が失われるとどこかに移る。他にも近くに適した池があるのでそっちに移っているかもしれない」という想いから、今もめぼしい場所を見つけては、生息確認の調査を続けている。ベッコウトンボが飛び交う風景を決して諦めていないのだ。

生物多様性を目指していきたい。そこで出会った超希少種アカウミガメ

ビオトープをつくっていた2010年、たまたま近くの海岸にアカウミガメが上陸して産卵したことから、ウミガメの保護活動にも取り組むようになった。埋め立てなどで海岸が減り、ウミガメの産卵場所が少なくなっている中で、地域住民と一緒に海岸の清掃や保安林の整備などに汗を流している。

北太平洋に生息するアカウミガメが産卵する場所は日本だけ。日本で生まれた子ガメは海を渡り、米国西海岸からカリフォルニア半島にかけての沖合で成長して、産卵のために再び日本に帰ってくるという。移動距離は片道約2万kmにもなる。

生存率も驚くほど低いそうだ。日本で生まれ、産卵に戻って来るカメの数は、5000分の1とも1万分の1ともいわれるくらいだ。加えて1回の産卵で生まれる100~120個の卵のふ化率が50~60%しかないという。これらの数字を見るだけでもアカウミガメはそれほどまでに希少な生き物だということが分かる。

佐伯市の海岸で、地域の子どもたちと、調査のための標識を付けたウミガメを放流

アカウミガメは卵を産めるようになるまでに約30年かかる。このことから、内田さんが今最も力を入れているのが子ども向けの環境教育だ。「海に戻っていく子ガメを見送った子どもたちが大人になり、子どもを持つようになったころに見送ったウミガメが帰ってくる。その時、彼らが自分の子どもたちと一緒に保護活動に取り組めば、生き物を大切にする思いが次の世代へどんどんつながっていきます」

保護活動には地域住民が積極的に参加し、活動は大分市だけでなく佐伯市、津久見市、国東市の海岸にも広がっている。「生き物の力はすごい。みんなが一つになれます。私たちの活動は地域と一緒になってやっていかなければ成り立たない。地域の環境は地域で守っていくという、地域の主体的な姿勢が欠かせません」

大分市の小学校で、生物多様性をテーマにした環境教育を実施

ウミガメはもちろん、現在の多岐にわたるフォーラムの活動はすべて、ベッコウトンボの保護活動から派生していったもの。「皮肉な話だけど、これも生物多様性と関連しています」と内田さん。「人間も、生態系、生物多様性の中の1つ。一緒に生きていける環境をつくっていかなければいけない。そうやって自然を守り、共生していけば、人間も将来につながっていけます」

内田さんが「生態系サービス」という言葉を教えてくれた。人間の生活に必要な薬や化粧品などは生き物由来の成分を含む物が多く、美しい景色を見て心が和むというようなことも、人間が生態系から受けているサービスという。

しかし、人間に都合のいいように自然のバランスを崩していけば、その影響が人間にはね返り、それらのサービスが受けられなくなる。内田さんの活動のテーマは「自然との共生」。誰もが心のどこかにそのキーワードを留めておけば、私たちの暮らしも今よりもっと豊かになる気がする。

2014年のAQUA SOCIAL FES!!の様子

内田さんと一緒にアカウミガメを守るための活動を行うイベント「磯崎海岸をアカウミガメの古里にしよう」が6月27日(土)に磯崎海岸で開催されます。これは、トヨタのハイブリッドカー「AQUA」が全国各地で展開する環境保全活動のAQUA SOCIAL FES!!の1つ。詳細は公式ホームページを御覧ください。

(監修:大分合同新聞社 企画編集部)

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