■スイッチ一つで温まるウェアに込めた思い
スイッチ一つで、ウィンドブレーカーに埋め込まれた電熱線がじんわりと体を温めてくれる。エネルギー源は手のひらサイズのモバイルバッテリーだ。
そんなウェアをエネルギーをコンセプトとするブランド「HALOS」デザイナーの北田尚弘(なおひろ)さん(36)が開発した。クラウドファンディングサイト『A-port』で資金調達中で、わずか2日で目標金額の40万円を突破。現在(4月22日時点)達成率154%だ。
=制作中のウェアと北田さん
なぜ、エネルギーをコンセプトにしたブランドなのか。
2011年の3月11日。東日本大震災が起きた日、東京にいた。手に握りしめたのは、家族や身近な人と唯一つながる可能性のある携帯電話。だが、残りの電源を示すバーが一つ一つ消えていく。電気がない事態を目の前にして、電気のありがたさに気づいた。
いつも何げなく使っている電気エネルギー。これをあえて意識できる製品を作ってみたい、と思うようになった。
■バイヤーからものづくりの現場へ
北田さんは、元々セレクトショップのバイヤーだった。だが、ピーコートでも1万円のものも、5万円のものもある。「物の価値は何で構成されているのか知りたくなった」
「ものを作る側にいきたい」。約10年前、日本の職人たちの協力を得てバッグを作り始めた。
■エネルギーをコンセプトとしたブランド
そして、東日本大震災を経験。「エネルギーを自分で作るバックを作りたい」。2012年、太陽光パネル一体型のバッグを開発する。エネルギーをコンセプトとしたブランド「HALOS」の誕生だ。
携帯電話だと3、4時間で充電できる。
常に使うバッグから電気を生み出す。「次は電気を使ってこれまでの洋服の常識を変えられる物を作れないだろうか」。
今回A-portで開発資金を募っているモバイルバッテリーで温まるウェアは、バッグに続く第二弾となった。バッテリーはUSBなどから充電できる。
=温度調節は三段階
このウェアは、冬の分厚いコートのようにかさばらない。また、体を動かさなくても温かくなるのでスポーツ観戦や冬のバス待ちの時間などにも活躍しそうだ。
すでに、このウェアをクラウドファンディングを通じて支援した人からは「(グーグルが開発したバーチャルリアリティーゲームの)Ingressという外でやるゲームをやっており、寒さで困ってたので期待してます」といった声も寄せられている。
北田さんは「自らエネルギーを作ったり、使うことを身近なもので体感することで、エネルギーのあり方について関心を持っていただけるきっかけになればと思う」と話す。
「『こうあるべきだ』に挑戦し続けることをしていきたい」という気概を持つ北田さん。「クラウドファンディングは在庫を抱えず資金を集められる。日本のものづくり力をいかして、新たな商品開発にどんどんチャレンジしていきたい」と話している。