年をとればとるほど、がんになる恐れは高くなる。
この傾向は、がん全体でみれば明らかなことだが、子宮頸がんの場合、発症のピークは30歳代。若い女性こそ注意が必要なタイプのがんだ。
代表理事の難波美智代さん(43)も30代半ばに子宮頸がんが見つかった1人だ。36歳の誕生日の少し前、たまたま受けた検診がきっかけだった。
それまで出産のときしか入院したことはなく、病気とは縁遠い生活を送っていた。思いも寄らぬ告知を受け、「死んじゃうのかな」という考えも頭をよぎった。
「そもそもどういう状況なのか、何も分からないことが不安だった。自分で調べてみても、患者の話は『つらい』『苦しい』という話ばかり。治療については『解決します』と過度に強調しているような偏った話が多かった」
幸いにも知り合いに、信頼できる産婦人科医がいた。これから自分はどうなるのか―。一つ一つ疑問を尋ねることができ、不安を減らしていくことができた。
それでも気持ちが落ち着いて家族に病気を伝えられるようになるまでには、1カ月ぐらいかかったという。
誕生日当日、子宮頸がんが見つかったことをブログにつづった。
「あんな元気な難波さんが、なんで」
友人たちの驚きは大きかった。
一方で、「実は私も...」と言ってくる人も少なくなかった。本当は身近な話のはずなのに、みんなが知らない話。
ただ、身近なことに気づきさえすれば、自分のこととして考える人が増えることも分かった。ブログを書いた後、難波さんの知人では検診を申し込む人が相次いだという。
「私のまわりだけ検診率が80%ぐらいになった。子宮頸がんのことを発信し、正しい医療や知識にアクセスできるようにしていけば、少しずつでも検診率が上がっていくんじゃないか」
難波さんは2010年1月に子宮全摘出の手術を控えていたが、その直前の2009年末にNPO法人を設立。
女性の健康や病気のリスクについて考える大切さを訴える活動を始めた。
「『女性の健康について考えましょう』というと、反対する人はいないけど、推進する人もいないというのが企業の現状。家族のことを第一に考えて、自分の体のことが優先順位の一番最後になってしまう女性は多い。女性のまわりにいる人も女性の健康について知っていることが大切で、そうした風土づくり、意識づくりを進めたい」
女性の健康づくりに積極的な企業の取り組みを共有する「女性の健康推進イニシアティブ」を今年9月に発足する準備も進めている。
今回のクラウドファンディングでは、全国各地の大学などで子宮頸がんについてのセミナーを開くとともに無料検診車を派遣し、受講者にはその場で検診を受けてもらう計画を立てている。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウィルス(HPV)が原因で引き起こされることが分かっており、定期的に検診を受けることで早期発見や予防が可能だとされている。
だが、日本の検診受診率は4割程度にとどまり、OECD加盟30カ国の中でも最低レベルにあるという(出典:OECD Health Statistics 2015、グラフはシンクパール作成の資料から引用)。
シンクパールは、2018年度までに子宮頸がんの受診率を50%以上にすることを目指している。
そのためには若い世代が受診することが不可欠だが、「私が話しても20代だと親子のようなもので、ジェネレーションギャップを感じていた」と難波さん。
若い世代に身近なこととして感じてもらうため、クラウドファンディングの呼びかけは、学生インターンらが中心になっている。「これから働く世代が、自分のこととして発信できる場づくりをしていきたい」と難波さんは話す。
クラウドファンディングのページは、https://a-port.asahi.com/projects/thinkpearl/。