キャンプ場で、そこでしか味わえないビールを一杯――。ビール好き・アウトドア好きにとって至福の空間を実現しようと、静岡県伊豆市のクラフトビールメーカー「ベアードブルーイング」が、ブルワリー(醸造所)の敷地にあったキャンプ場の復活に取り組んでいる。第一段階として醸造所の前でオートキャンプができる設備を整えるため、クラウドファンディングで支援を募っている。
川のせせらぎが聞こえ、木々の間から陽光が降り注ぐ。修善寺の山に囲まれたキャンプ場跡地に、「ベアードブルワリー修善寺」はある。
「職人の愛情あふれるベアードビールを味わうのに最高の環境」
こう表現するのは、創業者で同社を経営するブライアン・ベアードさん(51)、さゆりさん(51)の夫妻だ。
ブルワリーの3階には、醸造したビールが味わえる「タップルーム」も併設されている。敷地内の畑では、今年最初のポップが収穫され、地下からくみ上げた湧き水でビールが仕込まれた。このビールはクラウドファンディングの支援者向けの限定醸造品になる。
ベアードブルーイングは2000年に静岡県沼津市で創業。ブライアンさんは来日して英語教師として働いている間に日本が気に入り、「日米の架け橋になる仕事を」との思いから、日本で好きなビールに人生をかける決意をした。創業時は、ブライアンさんとさゆりさんの2人だけの小さなパブ。ブライアンさんがビールを作り、さゆりさんが料理を作って提供していたという。
モットーは〝Celebrating Beer〟(ビールを祝福する)。
モルト、ホップなどの原材料をできるだけ加工せず、素材の良さを最大限に引き出すことにこだわってきた。樽や瓶の中で2次発酵させてできた自然な泡は、「ビールが苦手」という人にも優しく感じられる味だ。
レシピ開発を担うブライアンさんは「いい原材料を丁寧に仕込むことが大事。レシピの開発は一番楽しい仕事だ。ベースのモルトやホップの状態は毎年同じではなく、すべてのレシピは生きている」と語る。
「大手のビールも素晴らしいが、種類が限られている。食べたいものや、一緒に食べる相手によっても、飲みたいビールの味は変わってくるものだ」。ベアードブルーイングでは、年に約60種類ものビールを造っているという。
2014年に醸造所を現在の伊豆市に移転した。
まずはビール造りに専念したが、訪れたファンからの「キャンプ場はいつ再開するのか」という声に背中を押され、復活に向けたクラウドファンディングを決断した。
敷地が東京ドームの2倍近くと広大なため、今回はキャンプ場復活に向けた第一段階との位置づけだ。まずは醸造所前のエリアでオートキャンプなどができるようにする。
「私たちのところから、伊豆・修善寺の魅力を発信していきたい。夢は『世界一美しいブルワリーを造る』こと。『ビールの楽園』でのんびりと幸せな時間を過ごしてほしい」
クラウドファンディングのリターンには、キャンプ場の割引や限定醸造のビールなども用意されている。詳細は、https://a-port.asahi.com/projects/camp-baird/。(伊勢剛)