「旅行がしたい」という欲求は、僕が今現在抱えているものでもあるし、おそらく多くの人たちにとってもそうだろう。でも、いざ具体的なプランを立てようとすると、行きたい場所が見つからずに結局そのまま放置してしまいがちだ。
Hotspringが5月22日に発表した「ズボラ旅 by こころから(以下、ズボラ旅)」は、そんな人にうってつけのサービスだ(サービス開始は5月31日から)。またHotspringsはこの発表に加えて、TLM、ANRI、および複数のエンジェル投資家から2017年11月に総額7000万円を調達していたことをTechCrunch Japanの取材で明らかにした。
Hotsprings代表取締役を務めるのは、キュレーションメディア「MERY」を運営していたペロリ創業メンバーの有川鴻哉氏。2017年4月にペロリを退職したあと、約1年間のあいだステルスで開発を続けたサービスが本日発表となった。
ズボラ旅は、旅をしたい日付と出発地を伝えるだけで"外さない旅行プラン"を提案してくれるLINE@のチャットサービスだ。チャットの相手はボットではなく、生身の人間。ユーザーから伝えられた2つの情報をもとに、専門のスタッフが旅行プランを提案し、予約代行まで行う。分かりやすく言えば、ユーザーが旅行代理店に行き、相談し、予約をするという一連のフローをまるっとチャットで置きかえようというサービスだ。
このビジネスモデルを採用した理由として、「長年、国内のオンライン旅行代理店業界は、ビッグプレイヤーに誰もが太刀打ちできないという状態が続いていた。だが、ここ2〜3年で海外勢が攻勢をかけ、業界が変わろうとする面白い時期だと思う。一方で、従来のオンライン旅行代理店のように、目的地が決まっている人たちに対するビジネスは、マーケティング費をどれだけかけれるかという勝負。スタートアップだとそれができないので、『ならば目的地がない人たちへのサービスを作ろう』ということでズボラ旅を考案した」と有川氏は話す。
チャットサービスは、すでにリアル店舗と従業員を多数抱える旅行代理店にとって手が出しにくい領域だ。問い合わせ対応などを電話やチャットなどで簡易にすませることはできるが、現在抱えている物的・人的資産をまったく使わないサービスに、彼らが本格的に腰を据えて取り組むのは難しいだろう。
人間を介したチャットサービス独自の強みとして有川氏は、文章のログがすべて残るので過去のコミュニケーションを次回に活かせること、そして、旅行"前"だけでなく旅行"中"のサポートを行うなど、サービスとマネタイズの幅が広いことなどを挙げた。
ズボラ旅では予約手続きが完了した段階でユーザーから手数料を受け取るという方法でマネタイズを行う予定だ。つまり、相談自体は無料でできる。足を使って店舗を訪れるのも面倒くさいというズボラな人でも、無料のチャットで気軽に相談でき、話しているうちに自分のぴったりな旅が見つかる。ズボラ旅は、「旅行がしたい」という曖昧な欲求を具現化するのには良いサービスなのかもしれない。
(2018年5月22日TechCrunch Japan「ペロリ創業メンバー有川氏が次に手がけるのは、チャット型の旅行代理店」より転載)