「『医療は全員に』は違う」長谷川豊アナが抗議の署名届けた患者女性と対談

抗議の署名を集めた女性は、「長谷川さんが本当に訴えたかったことを聞き、一緒に未来を考えたい」とも考えていた。
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抗議の署名を手渡した腎臓病患者、野上さんと対話する長谷川豊さん
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

フリーアナウンサーの長谷川豊さんが9月19日に更新した「自業自得の人工透析患者は殺せ」とするブログなどが大きな批判を集め、長谷川さんがニュース番組などを降板する騒ぎになった。

長谷川さんは自身のブログやインタビューなどで「言葉が過ぎた」などと謝罪したが、Change.orgを利用して、抗議のネット署名を呼びかけ2万5000以上を集めた腎臓病患者の野上春香さん(仮名、41)は、ハフポスト日本版の取材に対して「謝罪のポイントが違う」と憤り、患者の声を知ってほしいと話した。その一方で、「長谷川さんが本当に訴えたかったことを聞き、一緒に未来を考えたい」とも考えていた。

野上さんは10月15日、都内で長谷川豊さんに対面し、集まった署名を手渡した。ハフポスト日本版では、野上さんとともに長谷川さんの話を聞いた。

      ◇

野上:今回、私がChange.orgで署名のページを立ち上げて色々な方が広めてくださり、勇気をもらいました。それで、ハフィントンポストの取材を受けました。その記事をご覧いただけましたでしょうか。

長谷川:はい。まずは何よりも、とても悲しい思いや嫌な思い、辛い思いをさせたと思います。野上さんに賛同してたくさんの方が署名されてたと思うんですね。その全ての方に、心からお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。

野上: 記事の中で、過去には腎臓病で亡くなる子どもがすごく多くて、私も実際に友人を亡くしたという話をしました。結局、治療費のことを苦に自殺されたり、ご家族の方が病気を苦に一家心中したりってことがありました。それが元で患者会などから働きかけがあって、ようやく制度ができたわけじゃないですか。それまでの間に亡くなられた方が制度の礎になった。

長谷川:単純にいたずらに私を攻撃しようという人間もおりましたし、非常に悪意を持って拡散する人間達も残念ながらいるにはいました。ただそれ以上に、私も冷静に読み直してみてこれは申し訳ないことをしたなという思いがありました。

野上:こうしましょうっていうアイディアがあるのに、そこに説明するまでたどり着かなかったわけじゃないですか。なのでそういうのはやっぱりもったいないと思います。

■なぜブログに暴言を書いてしまったのか

野上:取材で私が話した中で、共感する部分、ちょっと違うと感じた部分はありましたか。

長谷川:まず、経緯を話しますと、新聞で日本の総額の医療費の速報値(2015年度)が40兆円を超えてしまった、さらにこの1年間だけで1.5兆円増えてしまったという数字を見て、愕然としまして、このままでは普通に考えれば医療費が増えて行くし、すごく努力をしても多分現状維持。これはなんとか現状を変えなければいけないと。

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野上:それは考えなければいけない点ではあると思います。

長谷川: 医療費の中でも透析医療は非常に高い。それで取材を始めました。ブログを書いた日の取材で、病院に必ずしも態度がいいとは言い切れないような感じの患者さんがそれなりにいらっしゃって、その方々に看護師さんであったりとかお医者さんは非常にかかりきりになってしまって、他の多くの透析を受けている患者にまで手が回らなかったりとか。どうしてこういう態度を取られる方々がいらっしゃるんだろうと疑問に思いました。

野上:例えばどんな態度でしたか。

長谷川:「誰のせいでこの病院が潤っていると思っているんだ」とか「先生が言っているのは理想論だと、俺らは俺らで苦労しているんだ」と言ったりとか。また、女性の看護師の方のお尻を鷲掴みにしてゲラゲラふざけながら笑いあっている患者さんがいました。でも、大半の透析患者の方はご高齢の方なので、じっとゆっくり横になっていらっしゃったんですけれども、そういう方々が少なくない人数いらっしゃって。

野上: その方々はお年寄りの方々ではない?

長谷川:50代60代が多くて、50代の方が特に一番良くなかった。そのまま、医師の方、透析医療棟の看護師の方、事務職員の方にヒアリングを行いました。皆非常に憤っていらっしゃって、そういう人たちに、年間500万も600万も支払われている、日本人の平均年収よりも上だ、と。そして、彼らも救わなきゃいけないけど、彼らに大半の労力が割かれてしまって、他の方々に対してしっかりとしたケアができないと。そういう訴えをされて、そのテンションのまま家に帰ってブログを書いたんですね。

残念ながらインターネットの記事というのは、きつい言葉や、非常にショッキングなワードがないと振り向いてもらえない世界っていう一面があって。けれども、そうしているうちに汚い言葉が自分の中で慣れたんでしょうね、良くない方向ばかりに転がっていました。 だからもう一度自分を見つめ直します。丁寧な発信でもいつか届くようにやるようにしたいと思います。

野上:結局そうするとアイディアを持ってる人とかそういう人との縁が切れちゃうと思うんですね。なので普段話してらっしゃるのと同じ口調で全然書いた方が私はいいと思いました。

■「医療は全員に」は違う(長谷川さん)

長谷川:ただ、多くの方々が私の批判をするときに「医療というのはやはり全員にするべきだろう」というご意見でしたが、それに関して私は少し違う意見を持っています。

野上:私は理由や経緯を問わず、必要な方には必要な処置をしていくというのが、本来のあり方だと思いますが、長谷川さんとしてはどう思われているんですか。

長谷川: 私の現状を見ていただければわかると思うんですけれど、大人の社会というのは言うまでもなく自己責任というのは当然、最低レベルのものが付きまとうのではないかと。 なので、私はアナウンサーとしてああいうブログを書いて、すべての仕事を失って、今収入がゼロになりました。当然だと思っています。言うまでもなく自己責任だと思います。

例えば、同じ保険分野では、車両保険の話をしてみたいと思います。脱法ドラッグを吸った、ラリった状態で車を運転して事故を起こした、そんな人物の車両保険が出るでしょうか。出る訳がありません。当たり前ですけれど、ある程度の線引きは全ての世界で存在すると思っています。どんな背景があろうが、限度というものが存在します。確かに、脱法ドラッグを吸った人は違法行為をしていません。心が弱かったでしょう。育つ環境で苦しい思いもあったかもしれません。でもそれをみんなのお金で出し合っている保険でカバーするかどうか話は別です。

(編注:脱法ドラッグによる運転事故では、危険運転致死傷罪で起訴され有罪になった事件もある)

私たちジャーナリストの世界でも、今イラクやシリアに行ってISに捕まって人質に取られても言うまでもなく切り捨てられます。自己責任だからです。今は、無差別に全てを救いすぎているのではないかという思いがとてもあって、そこに警鐘を鳴らしたかったのですね。

「今のシステムは甘やかしの部分があるのではないか」というのは僕のブログやコラムの中では常々言ってきたことなんですが、同時に非常に残酷で冷たい提言でもあると思うんですよね。だからこれは、誰が正しいということではないと思います。

野上:老化による脳の変化で、感情のブレーキが効かなくなることもある。それに対して、手がつけられないから「もう駄目」って言って跳ね返しちゃうと、それはやっぱりやってはいけない事だと思うんですね。

病気に至る原因に、生来持っている弱点や、家系的に持っている弱点がある。普通に暮らしてきたのに突然病気になってもうその後の人生の予定がめちゃくちゃになって、50代60代の方がヤケを起こさずにいられるかって言ったら、気質にもよりますが、やっぱり難しい方っていうのはいると思うんですね。それを投げ出すのはアウトだと思います私は。

そこも含めて見てあげるのは、医療の仕事なので。「甘やかし」というか、お目こぼしの部分を作ってあげないと患者さんも潰れちゃうと思うんですね。私は友人に看護師や介護福祉士が多いんですけど、困った方に殴られて青アザだらけになっていることもあるんですよ。それでも、そんな風になる前、荒れた状態になる前の事も知ってるから、投げ出すことは出来ないってやっぱり皆言うんですね。 なので、甘やかしというのは、私は違うと思いますね。

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長谷川: 多くのジャーナリストの方や、野上さんのご意見を伺って、勘違いしてらっしゃるのは、そもそも医療というものはそういうものだという固定概念にとらわれすぎていることじゃないかと思っています。

医療にもお金がかかります。そのお金は誰が払っているでしょうか。若者世代や労働世代が大半を支払っています。若者世代や労働世代の今の生活はどうでしょうか。そこをもう少し真剣に考えなければいけなくて、「どこから自己責任なんだ、これは難しい」と言って大半の人が思考停止をしています。これは完全に間違っています。

■「運転免許のような点数制度を医療に」(長谷川さん)

野上:では、どういった医療制度にすべきだと考えていますか。

長谷川:はい、1つは、アメリカの一部の州のように、医療の保険料を支払うのが正当かどうかを民間の保険会社にちゃんと精査してもらうというシステム。そしてもう1つが、運転免許の点数システムの話で、この2つがブログで続編として書こうとしていたことです。

運転免許には最初の6点から違反によって減点されていくシステムがあります。駐車違反ならマイナス2点とか。引かれていってゼロになると免許が一時停止になって、お金を払って講習を受けて6点が復活する。年間の交通事故死亡者数は16年連続で減少しています。細かい点数計算のシステムを作り上げた結果、ちゃんとした結果も出しています。こういう努力をしなければいけない。

野上:私は、保険料を「搾取している」っていうイメージを長谷川さんが持ち過ぎていらっしゃると思います。支出は大変ですが、健康保険は自分が何かあった時のために、みんなが払っているものです。なので「搾取されている」というのは違うと思うんですよ。

長谷川:日本の国民健康保険や年金制度というのは強制徴収です。強制的に徴収するというのであれば、支払いでも努力や削減をするべきです。

運転免許のシステムで言うと、ちゃんと安全に乗ってた人はゴールド免許というプラスのシステムもあります。例えば、野上さんご自身は腎臓に先天的な疾患があり、でもちゃんと透析の手前で自分を律してると思うんですね、こういう方々は、仮に責任があろうが何があろうが、国民のお金で絶対に全部救わなければならないんです。みんなで守らなければならない。

でも逆にお医者さんの言うことを聞かなかった、薬を出しても飲まなかった。そういう方々はひょっとしたらマイナス2点、 マイナス2点で引いて講習を受けてもらって。

野上:講習っていうのは良い考えかもしれないですね。

長谷川:講習を受けて態度を改めればちゃんと全額負担にしてあげればいいと思います。ただ、 本当にそれでも言うことを聞かないという人はいるかもしれない。その人たちのお金は、何の落ち度もない人たちを守るために使われるべきなんです。

でも今のままだと、目に見えているのは、人工透析患者が一律の負担をする将来が来る。10年以内に3割負担になるでしょう。みんな死にます。だとしたら知恵を絞ってどこかで線引きして、救える人を重点的に救うというシステムにすべきです。

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野上:トリアージ的なことをしようということですね。

長谷川:トリアージとは?

野上:トリアージは負傷の度合いによって患者を選別するシステムです。災害救急の時に現場でけがの程度を判断して負傷者にタグを付けて、「今実際に助ければ間に合う」っていう人を先に助けて、助かる見込みのない人を後回しにします。「今こっちに手を取られたら、他の助かる人もダメになってしまう」という事態を防ぐものです。

■「切り捨てるのではなくケアプランを」(野上さん)

野上:講習を何度もして「こういう風にしましょう」というケアプランを立てるのはいいと思います。一生懸命診察しても、お薬は飲んだふりして捨てちゃったりとか、隠れて食べちゃったりとかをやめられない人はいます。そこはもう、我慢ができない原因を治す方法に移行する方に持って行くほうがいいかもしれない。

例えばヤケを起こして、自制がきかなくなった方は、心のケアの方がまず大事だと思うんです。なので心のケアとセットの仕組みも作った方がいいと思います。切り捨てるんじゃなくて、ケアプランを変えるという仕組みにすればいいと思います。

患者を分断するっていうことについては、やっぱり私はダメだと思うんですね。ケアプランを変えるっていうのは必要だと思うんですけど、患者を切り分けて分断してしまうっていうのはやっぱり私は、ないかなと思いました。

■「自業自得」の患者とは誰なのか

編集部:講習は良いアイディアだと思いましたが、実際にフリーライダーというか、先天性の方や真面目に治療を受けている方ではなく、本当にその人の自己責任で人工透析になったという患者さんが、だいたいどのくらいの割合いらっしゃると長谷川さんはお考えですか。

長谷川:病院によってかなり違って、地方とかですと俗語があって「透析患者は定期預金」という言葉が残念ながらあるにはあるんですよ。絶対治らないのに死ぬまで生きている、死ぬまでお金を落としている。なので、透析患者の方をわざわざタクシーで送迎したりする病院が、地方の一部では残念ながらあることにはあります。今の段階で必ずしも病院側に好意的ではない患者は、1〜2割はいるかもしれません。

野上:うーん、私は北海道出身ですが、地方ですと、地元の病院だと病気にかかっているというだけで噂を立てられたりして嫌だということで、わざわざ車で、近くの他の町まで数時間かけて通いに行ってる方もいらっしゃって、そういう意味で送迎サービスがあるっていうのは、そういう思いをされてる方にはありがたいのかもしれないですけどね。

長谷川:なるほど、考え方によってはきっとそうですね。悪意を持って見てしまっている可能性もあります。そういう患者サイドに立った思いやりである可能性もありますね。なのでその線引きというのは難しいですね。

編集部:ブログでは、透析患者に関しては8〜9割が「自業自得である」と医師が言っていると書かれていました。今はどうですか。

長谷川:以前、(スポーツジムの)ライザップの社長さんと対談したときに「人間は100%健康になれる」と言い切るんですね。絶対出来るんだと。それで、病院の先生方も「完璧に僕たちのことを聞いて完璧で言った通りの生活をして薬を飲んで食事制限、運動療法をやったら透析までは本当にいかないんだよ」というのを力説されるんです。

その部分を、今回医師の方々、医療者サイドに話を聞いたので、1つの事実として、医師がそう主張していると書かせていただいたんです。医者の理屈としてそれも1つの真実なんだと思います。それはライザップの社長と一緒ですね。かなり片方側からの意見ですけれども、医者側の意見ということで紹介させていただいたということは事実です。

野上:私の方でもお医者さんとか、医療関係の友人とかに確認してみたんですけれど、本当に自業自得のみっていうのは結構少なくて、実際は例えばすい臓の手術でなった人もいれば、薬害でなった人もいて、原因は1個じゃないんだよ、必ずミックスなのでという話でした。 置かれている環境でも、症状が出やすい人はやっぱりいるので「自業自得だ」って言うとかわいそうじゃないかなと思いました。

長谷川:そうですね、自業自得の線引きっていうのは、あってないようなもんなんでしょうね。でも知恵は絞るべきです。

野上:今の段階でも医療費の増加や制度が結構、厳しい状況であるのはわかります。でも急に、それまで普通に暮らしてたのに生来持ってた弱点、バックグラウンドでずっと眠ってた弱点がばって出た時にヤケを起こす人の対策っていうのは、確立されてた方がいいんじゃないかなっていうのはお話を聞いてて思ったんですね。

長谷川:そうですね。本当に本人たちが悪くない人、グレーな人は全てを守ってあげてサポートしてあげるシステムが絶対必要でしょうね。それは先進諸国としては当然のことだと思います。と同時に納得感というのも必要ですよね。運転免許システムからはすごく学べるものが多いような気がします。

編集部: 運転免許の点数がゼロになって運転をできなくなるということと、負担額が増えて医療が受けられなくなる可能性があるということはだいぶペナルティの程度が違うようにも思うのですが。

長谷川:あくまでシステム的なアイディアとしては、参考になる部分があるんじゃないかなということではありますね。もちろん細かいことを言うと、全然違ったりする部分って当然あるとは思いますけれども。

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署名を受け取る長谷川さん

■「自業自得」を判定するコスト、生み出せる費用

編集部:実際に線引きをすることのコストという点ではいかがでしょうか。長谷川さんも仰ったように「自業自得」の線引きは難しい。生活保護の議論でもそうですが、本当にズルをして受給している人と、困っている人を線引きするためにかえってコストがかかってしまう問題があるのではないか、判断を間違えた時に本当に困っている人を救えないというリスクもあると思うんですが。

長谷川:それらをものすごく丁寧にやり続けて長年の努力で今培われてきたのが今の交通運転の免許システムだと思うんですね。「自己責任を判断するのは難しいですよね」で止まってしまっては、思考停止になってしまいます。やる必要があるのであれば努力して、そこに舵を切る必要があるでしょうね。ただ、最初はおそらく混乱をするとは思います。

例えば社会保障給付費は1年間で112兆円(2014年度)あります。そして医療費が40兆円(2015年度)です。もしそのうちの1割が改善されるだけで4兆円、2割なら8兆円が生み出せます。しかし線引きによる野上さんが仰ったケアプランの実施で、4兆円は絶対にかからないと思います。

編集部:病院でご覧になった、問題行動をする「モンスター患者」と、医師の指示を守らないで病気が進行した「自業自得の患者」は、長谷川さんの中では同一の方というふうに考えてらっしゃるんですか。

長谷川:はい、そうですね。

編集部:それが患者全体の1〜2割いるということですか。

長谷川:残念ながらそう判断せざるを得ない部分はあると思います。取材現場で大半は静かに受けていらっしゃる方々だったので、人数的にいうと1〜2割なんでしょうね。

■医師グループ「医信」との関係

編集部:理事を務められていた医師グループ「医信」との関係はどういうものだったのでしょうか。

長谷川:一般社団法人の医信は、若い医師たちがなんとか、日本の医療や教育を進めたいという意思の元に設立されたもの、9月11日に設立パーティーがあり、そこで私が理事に就任しました。でも今回のブログの取材に関しては、医信は人工透析にまつわる、腎臓にまつわる医師がいないので、関係ないところで書いたものです。昔から医者の知り合いが多いので、そのつてでやったんですが、理事就任とブログのタイミングが近くて、「これ医信がバックにいるんだろ」って言われてしまったり、邪推するネット記事などがでてしまったりしたんですね。どうか読者の方にも分かって頂きたいんですけれども、今回の記事は全く関係がないので、厳密に言うと一人も話しを聞いてないので、 そこだけはどうかご理解頂きたいなという風に思っています。

編集部:関係がないということですが、例えば「高齢者が病院にいて単にお茶を飲んでいる」という主張とか、今回の人工透析の主張、言い方はあるにしろ、根底に長谷川さんが思われていることと医信の主張が近いように思えたので、おそらく影響を何かを受けられたりしたとは思うのですが。

長谷川:医療現場でもベテランと若年層って考え方が実は全く違いまして、若い医師たちって給料が少なくて、ベテランよりはるかに絶望的なブラック的な現場で働かされているんですね。「このままじゃ日本の医療システムが崩壊するよね」ということは、多分若手の99%の医師が思っています。なので同じような見解に結局はなるんですけれども。医療の利権を持ってらっしゃる、例えば医師会の上の方々っていうのはちょっとそういうのとは違う意識もあったりして政治的な活動が強くなったりする人たちもいるので、ちょっと意識の差があるんですよね。

野上:医信は長谷川さんのブログを「団体の公式見解ではありません」と発表されました。でも実際には、医信がFacebookページで長谷川さんのブログを紹介して「いいね」を押したりしてたので、冷たいなって思ったんですよ。「いいね」したのに公式見解ではないと言うのは無理があるんじゃないでしょうか。

長谷川:気持ちはわかるけど、取材は受けてないし、という所だと思うんですね。彼らは透析病棟の先生ではないので公式見解としては出せないと思いますし。

■「腎臓移植普及も呼びかけたい」(長谷川さん)

長谷川:そして、世界的にごく当たり前のように僕は腎移植をもっと進めるべきではないかと思っています。人工透析というのは腎移植までのつなぎであることは野上さんもご存知の通りです。腎移植が去年、日本で確か1300人とか1400人だったんじゃないかと思うんですが(2014年の症例数は1598例)、ちょっと限度を超えて少ないですよね。

人工透析にまつわる苦労があまりにも大きすぎるし、腎臓移植の技術もどんどん進化している。そういう選択の自由っていうのが本来はあっていいのではないかと思うんですけれども。

野上:そうですね。リスクを負った上でどうしても移植を受けたいっていう方は受けられるっていうのがいいんでしょうけれど、なかなか進まないですね。臓器移植のことになると日本はせっかく技術持ってるのに進まないなっていうイメージがありますね。

■どんな社会を目指すのか

編集部:今回、言葉の問題はもちろんあったと思うんですけれども、どんな社会にすべきだと思っているのかが本題だと思います。最後に長谷川さんのお考えを聞かせてください。

長谷川:先進諸国に住む人間達というのは、自分の努力、自分が汗をかいてちゃんと自分の足で立つ、本来であれば責任があるはずです。それに対して弱くなったり、落ちていく人達がいる、そこにはセーフティネットがあるべきです。ですが、文句だけを言って人のせいにだけする人というのは、僕は増え過ぎているという気がしています。努力と汗をかいて皆が少しずつ削ることによって、皆のために協力できる社会っていうのは僕はあるべきだと思っていて、その考えは僕のベースメントにあります。

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