鳩山由紀夫元首相は27日、中国・北京で開かれた清華大学主催の世界各地の安全保障について議論する「World Peace Forum」に参加し、「カイロ宣言の中には日本が清国から盗んだものは返さなければならないとある。中国側が(尖閣諸島も返還すべき領土の中に)入ると考えるのも当然だ。」と述べた。時事通信によると鳩山氏はカイロ宣言の内容を元に語ったという。
1943年のカイロ宣言は「満州、台湾、澎湖諸島のように日本が清国から窃取した一切の地域を中華民国に返還する」としており、中国はその中に尖閣諸島が含まれると主張。鳩山氏は「カイロ宣言の中には(返還されるべき領土として)台湾、澎湖諸島以外の島もあると中国側が考えるのは当然だ」と指摘。
(時事通信「尖閣「盗んだものは返すのが当然」=鳩山元首相、中国でも発言」より。 2013/06/27 22:10)
鳩山元首相は25日にも、「中国側がそういう判断をするというふうな可能性はあるということを申し上げた。ポツダム宣言に書いてあるでしょう、固有の領土は。北海道、本州、四国、九州、それが固有の領土だと。」などと発言している。
この25日の発言については、ハフィントンポスト日本語版のユーザーからは非難の声も上がっているが、同時に、検証してみるべきではとの声も上がっている。
鳩山さんは確かに政治家肌ではなくて、お坊っちゃん肌のようですが、それだからこそ空気は読めていなくとも、間違ったことは言わないと思います。普天間移設問題でもそうだったと思います。
したがって、頭ごなしに「口を慎め」などと言うより、それなら検証してみようと考える方が建設的であると思います。
検証する内容に関しては、中国側の考え方を知るべきとの意見が多い。
鳩山さんを批判をするのならば、中国の立場のより詳しく説明する内容でなければならない。今日本領であるという主張は、根本的に話題がずれている。
中国側の発想の根拠を誰かが言わないと、論理が噛み合わないままで日本国内世論も作られてしまう。本来ならば、評論家か外務省あたりから国民に流されてしかるべきなのだろうが、日本在住の中国人評論家の口からも、”中国国内での歴史経緯でこうなっている”という以外、国際的論拠は出ていない。だから敢えて鳩山氏が言ったという態であるとは思います。(しかし、それはあくまで中国側の言い分であって、日本がそれに従うか否かは、まったく別な話であるのはいうまでもありません)
「中国、韓国は日本の敵である」という言論は、今日本で非常に多いけれども、実際のところ現地でそれを感じることはほとんどありません。「変な人」が東京にいるのと同じくらい、向こうにもいる、という程度です。日本は外国の情報に関して「自閉」した社会である、ということをまず覚えておいたほうがいいと思います。これはアメリカを相手にしたときも、他の国を相手にした時も同じです。マスコミも、ネット言論も、ほとんど外国を肌で知らない人たちの言論だと言ってもいいと、私は思っています。
鳩山氏の今回の話をいくつかの報道で調べると、「中国の立場から見れば」という話はしているけれども「日本の立場」をないがしろにしているようには見えません。「日本人であれば、水も漏らさぬ強固な考えを持て」「だから異論は毛の筋ほども認めない」という考えは正しいかもしれません。しかし、表現において硬直したやりかたでは外交はできません。外交は「戦争」に似ているけれども「戦争」ではないからです。「あんたの立場はそうかもしれないが、こちらの立場はこうだ」と、鳩山氏は言っているだけです。この「あんたの立場はこうかも知れないが」だけが取り上げられ、揚げ足を取られているように思います。
「中国の立場にたってみたら」という仮定の話をしているわけで、それを捻じ曲げて解釈するのは卑怯だとしか言いようがない。
我が国では「相手の立場に立つ」というと「弱腰だ!」とワーワーいう人が多いが、交渉はそこからしかスタートしない。
宮本武蔵も言っているように、徹底的に相手の立場に立たない限り、相手も弱点も見えてこない。バカの一つ覚えのように自分の立場だけを主張していたら何も始まらない。
以上を前提にした上で、今回の件は、脇が甘い、という批判はあって当然だと思う。香港とはいえ、中国メディアにこのような話をすればどう取り上げられるか、想像しないとまずいでしょう。
27日の清華大学のスピーチの中では、鳩山元首相は「喫緊の問題は、安倍政権が歴史認識や態度を改め、隣人諸国と協力することです。東シナ海については、領土問題は置いて、漁業や環境の保護に務めるべき」と述べたとも、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(南華早報)は伝えている。
この報道を見る限り、鳩山氏は、領土問題は棚上げすべきとの考えのようである。
産経ニュースでも、下記のように報じられている。
中国を訪問中の鳩山由紀夫元首相は27日、北京で記者団に対し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の問題に関し「40年前に棚上げすると(日中両国で)決めたのだから、メディアも理解しないといけない」と述べ、棚上げの合意があったとの認識を示した。日本政府は棚上げ合意を否定している。
(産経ニュース「鳩山氏がまた問題発言 尖閣めぐり「棚上げで合意」と中国に理解」)
25日の時点では、棚上げしたほうが良いという点については、賛同する声が多かった。
尖閣について言えば、
日本も中国も、アメリカに紛争の種をまかれた被害者同士として、
自国の主張と相手国の主張の両方を、自国民に表明した上で、
エリゼ条約のように、話し合いで、
共有地として、共同利用のための仕組みを作るべきではないでしょうか。
お互いに、偵察したり、軍隊を使ったりしても解決するはずは無く、
エネルギーの無駄遣いだと思います。
鳩山氏のやり方は、上手ではないけれど、
考え方の基本は、平和を維持するためには、
最も安上がりな方法を示していると思います。
国境紛争で安易な妥協はダメだが、落としどころをみつけて引くことはありうる。
私は係争があると認めて国有地から無償譲渡で沖縄県の公有地にでもして曲がりなりにでも元の棚上げ状態を回復させて、中国のプライドを満足させるようにしてしまえと思うのですが、頑なに現状維持を主張する所謂保守の方は海保をこの海域に延々と24時間貼り付けなければならないこの状況を打開する出口戦略はあるのでしょうか?
右の頬をぶたれたら左の頬を差し出す必要はありませんが日本側の外交当局に一手譲る権利を与えるから他のところ、例えば中国海洋警察の撤収くらい勝ちとって来いよ?くらいがいいのではと思います。
また、25日の鳩山氏の発言に対して、尖閣での武力衝突は避けられたとの考え方も投稿されている。
今回の鳩山発言で、日中の尖閣での武力衝突は回避されたということだ。
この発言がなかった場合、日中の武力衝突は避けられなかっただろう。
しかし今回の発言を受けて中国共産党は次のように考える。
「鳩山のような愚かな政治家が日本に居るのだ。あえて戦争しなくても、近い将来尖閣諸島は中国のものになる。急ぐ必要は無い。戦争したら金はかかるし、アメリカとの関係も悪化するからな。」
と武力行使を先送りにする。
そして、問題を先送りにしている内に、先に中国国内で崩壊が始まる。
民主主義国家とは鳩山氏のような人間にも使い道があることを教えてくれる、恐ろしく狡知に長けた制度と言える。
World Peace Forumを主催した清華大学は、米ルーズベルト大統領が義和団の乱の賠償金を引き下げて捻出した資金から、アメリカ留学のための準備教育機関として1911年(宣統3)に創立された清華学校が前身となっている。アメリカの対中文化政策の拠点として機能しており、胡錦涛前国家主席、習近平国家主席などを卒業生として排出している。
米国は、25日、沖縄県・尖閣諸島周辺を含む東シナ海や南シナ海での中国による「威嚇行為」を非難する中国非難決議を採択している。清華大学は中国の大学と言えども、アメリカ色が強い大学ということもあり、鳩山氏をわざわざ呼んで「日本の前の首相も、中国国民の前でこう言っている」ということを、米国に対してアピールする狙いもあったのではないかとも考え方もできるだろう。
まだ、英文による報道はほとんどされていないが、もし、アメリカにアピールしたかった内容があるとすれば「鳩山氏は尖閣は日本が盗んだと言った」、それとも「鳩山氏は平和的に解決しようと言っている」のどちらだろうか。あなたはどう考えますか。