産経新聞社が発行する「夕刊フジ」の編集局の公式Twitterが投稿した内容が物議を醸している。ファクトチェックの専門家からは「根拠不明なネット情報の拡散に寄与したもので、責任は極めて重大」と警告する声が出ている。
■夕刊フジ編集局のツイートとは?「極左集団が紛れ込んでいる」というネット情報を投稿
「こちら夕刊フジ編集局」のTwitterアカウントは、1月7日に同日付けの紙面を紹介。アメリカの連邦議会議事堂をトランプ支持者の群集が占拠した事件について「議事堂に侵入したデモ隊について、トランプ支持者と報じる米メディアが多いですが、ネット上には極左集団が紛れ込んでいるとの情報もあります」と投稿した。
議事堂に侵入した人々について多くのマスメディアが「トランプ支持者」と報じたが、トランプ支持者のSNS上では「極左団体アンティファが関与している」という真偽不明の情報が出回っていた。
しかし、アメリカの事実検証サイト「ポリティファクト」は、こうした情報は事実ではないと否定している。検証の結果、「群衆が変装したアンティファの活動家によって潜入または導かれたという信頼できる証拠はない」と断言した。
また、ロイター通信も検証記事を掲載。SNS上に溢れる「デモ参加者はアンティファ」とする写真や動画に登場する人物は、いずれもアンティファとは無関係だったと報じた。FBIの担当者もアンティファが混じっていたかについて、「現時点では、その兆候はありません」と回答したという。
夕刊フジ編集局のツイートに対しても「どこの誰の情報でしょうか?デマを垂れ流さないで下さい」と批判する声がSNS上で出ていた。
ハフポスト日本版は産経新聞社広報部に、なぜこうしたツイートをしたのか見解を書面で聞いた。12日付けで「原則として取材や編集に関することにはお答えしておりません」と回答があった。
■「根拠不明なネット情報の拡散に寄与したもので、責任は極めて重大」。専門家が指摘
今回のツイートについて、ファクトチェックの専門家からは批判する声が出ている。NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ事務局長の楊井人文さんは、ハフポスト日本版の取材に次のようにコメントした。
「今回のツイートは『街中でこんな噂が流れています』と検証せずに報道するのと同じで、やってはいけないことです。『ネット上でこんな情報が流れています』と、留保や説明なしで報じてはいけません。もし取り上げるなら、『ネット上でこんな情報が流れています。でもそれは根拠不明なので、気をつけてくださいね』と警鐘を鳴らすのがメディアの役割です」
「現在、大統領選にはトランプ氏の主張するような『数々の不正があり、本来はトランプが当選すべきだった』という言説や、そう示唆する信憑性の極めて低い情報、陰謀論のようなものまで大量に飛び交っています。夕刊フジのツイートは留保なく、そうした根拠不明なネット情報の拡散に寄与したもので、責任は極めて重大だと思います」