国会議員に伝えたスウェーデンの若者が選挙で投票する本当の理由

スウェーデンの若者の2人に1人が最低でも1つ所属している「若者団体」について主に報告しました。

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昨日、衆議院議員会館で若手国会議員から構成される「若者の政治参加検討チーム」の第3回目の会合にて講演をしてきました。このチームは、鈴木隼人衆議院議員が中心になって立ち上がった研究チームで、これまで第1回には東洋大学法学部の竹島博之教授、第2回には東洋大学社会学部の林大介さんとNPO法人Youth Createの原田謙介さんが招かれて講演をしました。(毎回アイドルも呼ばれています。)

僕が呼ばれたのは、スウェーデンの若者が政治参加する理由を知りたいからということでした。このブログから直接、議員さんからメールをいただき、このように報告することになったのでした。これまでも議員会館では団体を代表して2回講演をしたことがありましたが、個人として呼ばれて講演をすることになったのは初めてでした。(ブログで発信し続けてきてよかった!)

参加者

会合の参加者は、以下の若者の政治参加検討チームの議員さんと、文科省、内閣府の担当官、そしてメディアでした。

小倉将信 衆議院議員

小林史明 衆議院議員

佐藤 啓 参議院議員

鈴木憲和 衆議院議員

鈴木隼人 衆議院議員

宮路拓馬 衆議院議員

村井英樹 衆議院議員

山下雄平 参議院議員

そしてなんと人生初、アイドルと共演することになりました。今回のアイドルのゲストは、現役女子高生タレントの井上咲楽(いのうえさくら)さんでした。

「民主主義に絶望している」と冒頭からぶっこんだ自己紹介とてもよかったです。(眉毛ガールなんすね!)

報告したこと

早速、発起人の鈴木隼人議員が自身のブログにて検討チームの会合について報告をしています。

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スウェーデンには、生徒会や地域の若者団体を代表する「全国若者団体協議会」という組織があります。この「全国若者団体協議会」が若者の意見を集約して、政治や行政に対するロビイング活動を行っています。こうした活動を通じて、若者は日常生活の中で政治を身近に感じることができるようになっています。その結果、スウェーデンにおける20代の投票率は80%を超えています

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そうなんです、スウェーデンの若者の2人に1人が最低でも1つ所属している「若者団体」について主に報告しました。政党青年部、生徒会連合、若者協議会、そしてそれらの傘団体となっている若者団体協議会についてざっくり紹介しました。そして最後に、稚拙ではありましたが日本への示唆で終わりになりました。

スライドは以下からダウンロードできるようにしました。どうぞ教材なり、配布資料なり自由にお使いください。

スウェーデンの若者が政治参加する理由 from Tatsuhei Morozumi

なぜユース特命報告委員会だけじゃだめか?

報告後は、内閣府の担当官から若者の意見募集事業として「ユース特命報告委員会」を実施していること、文科省の担当官からは2015年通知における高校生の校内における政治活動の制限について説明をいただきました。

ぼくのスウェーデンの政治的中立を保つ方法についてのブログ記事も読んでいただいたようで、日本とスウェーデンの大きな違いは、政党の政治的中立を守ることを法的に規定しているかいないかとのことです。(日本は規定していますが、スウェーデンはしていません) 質問時間では、スウェーデンのリフォローシステム(法案草稿作成時に関係専門団体からフィードバックをもらい承認を得なければ法案の審議に入れないという制度)の存在などを補足説明しました。

もうひとつ質問時間に、ぼくが念を押して主張したことがあります。それは若者団体の話ばかりをしたけども、若者団体に所属しない若者がいることも忘れないようにということです。

確かに、若者団体協議会のような仕組みがあると、若者世代の声を集約して代表する機能ができます。この仕組みがもちろんあるに越したことはありませんが、一方で若者団体に所属しない若者がいることも事実です。そういう若者の声を直接聞くために、ある自治体では市の職員にユースデモクラシー・コーディネーターとして働いてもらって若者がいる場所に足を運んで直接話しを聞いたり、小さい住民フォーラムを開いたりすることも、スウェーデンでは起きています。つまり、声を聞く方法自体を多様にしているのです。

なぜならグローバリゼーションの波をうけたスウェーデン社会が人種、社会・経済的階層、言語、地域差、価値観など様々な局面において多様化するということは、それに応じるようにして声を聞く方法自体も多様化させないと、本当の若者の実態がわからないからです。

だからユース特命報告委員会だけじゃダメで、様々なチャンネルを用意しないといけないのです。(ネット・パソコン環境がない人はもちろん参加できませんし、規模も300人程度です)ユース特命報告委員会は、2009年から実施していますが、それ以外の方法で意見を募集するという努力はしているでしょうか。若者を代表する若者団体から声を聞くというのも、その一つであるのがスウェーデンなのです。

そしてこれらを、国レベル、県レベル、地方自治体レベルで、重層的に、それぞれの県・地方自治体レベルの行政と若者団体が交流しあって政策を若者と作っているのです。誰だって身近なことの方がもちろん意見をしやすいのですが、地域レベルで意見を出せるチャンネルは、日本では限られていますよね。

さらに、スウェーデンは「政治家・行政が住民の声を聞いて→反映させる」というアプローチから、その渦中の「当事者が政策決定者となってもらう」というアプローチにとっくにシフトしています。だから、女性議員のクオータ制度だってあり、18〜29歳の国会議員の割合は全体の10%に達しているのです。社会が多様化するのなら、政策決定者自体も多様化(年齢・性別など)していかなければ民主主義とはいえませんよね。スウェーデンの若者政策が、民主主義政策の一環であることはそういう理由からです。

若者が社会に影響を与えられていると、実感できる社会へ

もうひとつ、ある議員さんからいただいた質問を思い出しました。

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これらスウェーデンの若者団体や若者団体協議会が実際に成し遂げたことは何ですか?

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それはいつかぼくがスウェーデン若者市民社会庁の広報官にした質問と全く同じで、その時に返ってきた回答を思い出しながら「逆にありすぎてわからない」と答えました。

なぜなら、スウェーデンの若者政策は若者団体協議会を始めとする若者らと一緒に作ってきた歴史そのものだからです。2014年に発足した社会民主党連立政権に20代と30代の若い大臣が5人も選ばれていること、現在最年少の国会議員が22歳であること(過去には18歳・19歳の国会議員も生まれた)、そして若者の投票率が8割を超えていること。これらはスウェーデンの若者と社会が、成し遂げたことの例として十分過ぎないでしょうか。

住んでいる地域の、自分に関連のある事柄に影響を与えたいと思っている16〜25歳の若者の割合が45.6%もいる社会 (Ung Idag, 2016より)。

それが、若い人たちのための民主主義社会を作るということの究極の目標ではないでしょうか。

だから結果的に、投票をするのです。

これ以上、若者を、私たち市民を置き去りにしないでくださいね。