その日、私は疲れていて、急いでいて、イライラしていた。
「トレーダージョーズ」(アメリカのスーパーマーケット)で買い物をして家に帰るところだった。夫のジョンは、本格的に泣き始めそうな息子のマレトをカートに乗せ、慌てて店を出ようとしていた。
私たちは必死にシリアルバーの箱を開けて、息子を泣き止まそうとした。娘のアーセマは、私の胸に抱かれながら、目を見開いて一部始終を見ていた。
私の額は汗びっしょりだった。恥ずかしかったこともあるけれど、ほとんどは暑さと、約8キロの赤ちゃんを胸に抱きながら、大きな声をあげて私の後ろを歩く幼い息子を連れてお店の中を駆け回ったためだった。
当然、私は年間最優秀ママ賞をするような気分じゃなかった。何もかもうまくいっていない私たちのことを、どうか誰も見ていませんようにと、心の中で必死に願っていた。周りで買い物をする人たちにとって自分たちが透明人間であって欲しいと祈っていた。
私たちはカオス状態で疲れ切っていた。そして残念なことに、それは珍しい状況ではなかった。
私たちの家族は、いわゆる“普通の家族”と少し違って見える。
両親が白人で、息子と娘が黒人だからという理由だけではない(それだけでも、よくジロジロ見られたり質問されたりするけれど)。
私の息子には発達遅延と自閉症があり、周りと違った行動をする。娘には身体的な違いがある。彼女は何本か指がなく、くっついている指もある。
一言でいうと、私たちが家族で外出すると目立つ。いつもは気にしていないし、目立つのを楽しむこともある。子ども達はとても美しいし、私たちの家族も美しい。
だけど時々、全くうまくいかないことがある。そういう時には周りとの違いが気になってしまう。他の人たちの中にうまく溶け込んで、ジロジロ見られなければいいのにと思う。
時にはありとあらゆることに疲れ切ってしまって、養子縁組した家族ではなく、ただ普通の家族でいたいと思うこともある。
特別な支援を必要とする子どものいる家族でもなく、ユニークな家族でもなく……ただの家族。その日は、ちょうどそういう日だった。
ジョンがマレトをカートに乗せて車に向かった時には、私も泣きそうになっていた。アーセマを胸に抱き、急いで店を出て車に向かった。その時、後ろから声が追いかけてきた。
「あの、すみません!」
私は歩くスピードを緩めた。どうか、私に声をかけているのではありませんようにと願いながら。
「すみません!」
もう一度声が聞こえて、私は足を止めた。振り向くと、若い女性が私の方に駆け寄ってくるのが見えた。彼女は明るい笑顔を浮かべていた。
私はすぐに、彼女のカールした美しい黒髪に気がついた。それは私の胸の上にある黒いカールヘアと同じだった。着ているシャツを見て、彼女が店員さんだとわかった。私は自分が何か落としたんだろうと思った。泣きそうだった私は、涙をこらえて駆け寄ってくる女性を待った。
彼女は手に花束を持っていた。「このブーケをあなたにもらって欲しくて……」。そしてすぐに言葉を続けた。
「私は赤ちゃんの時に、養子縁組しました。そのおかげでとても素晴らしい人生を送っています。私たちには、あなたたちのような家族が必要なんです」私は驚いて、彼女を見つめた。
彼女は私たちがカオス状態で買い物していたことに気がつかなかったのだろうか?
何もかもうまくいっていないのを見ていなかったのだろうか?
私がダメな母親だったことに気がつかなかったのだろうか?
彼女が私に花束を渡してくれた時、私は込み上げてくる感情をなんとかこらえて、ありがとうと伝えた。そして、これが私にとってどれほど大きな意味を持つかを説明しようとした。
彼女は私の肩をポンと叩いて、とても美しい家族ですねと言い、お店に戻った。
花束を腕に抱えて、頬を涙に濡らしながら、私はゆっくりと車に戻った。
自分たちが最悪な家族だと思った日、誰にも見られたくないと思った日。その日に、彼女は私に花束をくれた。
みんなが見ているだろうと私が思っていたものを、彼女見ていなかった。みんながこう思っているだろうと私が思っていたことを、彼女は思っていなかった。
彼女が見たのは、美しさと愛と希望と家族だった。彼女は私たちを素晴らしい家族だと思っていた。それが彼女を笑顔にしていた。
彼女の名前を聞いておけばよかったと思う。2年後にお店に戻って、花束が私にとってどれほど大きな意味を持ち続けているかを彼女に伝えたかった。
トレーダージョーズの駐車場で出会った美しい女性へ。あなたに心の底から感謝したい。あなたは私にとってかけがえのない存在です。
ハフポストUS版のブログを翻訳しました。