ジョン・カーペンター監督のSF映画『ゼイリブ』に印象的なシーンがある。主人公が特殊なサングラスをかけると、街にあふれる広告看板が一変し、「服従せよ」「結婚して子供を産め」「何も考えるな」「消費せよ」などの裏のメッセージが見える。実は世界は、エイリアンに秘密裏に侵略されていたのだ……。
現代の消費社会を皮肉った名シーンだが、これを彷彿とさせる広告が、JR東日本の山手線の車内を埋め尽くしたとネット上で話題になっている。
それは、ネットフリックスのアニメ作品『リラックマとカオルさん』の広告だった。
無数のポスターには、白い背景に大きな文字で「脱毛しましょう」「美白しましょう」「いますぐ転職しましょう」「風邪でも頑張りましょう」「自己を啓発しましょう」「お金持ちになりましょう」「流行を追いましょう」といったメッセージが書かれている。
よく見ると、どのポスターにもアニメの主人公「カオルさん」が、「世の中がんばることが多すぎません?」とツッコミを入れている。
世の中にあふれる商品広告への批判にも見えてくる。ネットフリックスの広報担当者によると、この車内ポスターの掲示期間は5月1日から15日まで。広告の掲載意図については「特にコメントございません」として回答は得られなかった。
■「なんともふんわりしているのに風刺的」
「転職も美白も英会話も、いつもあるはずの広告が、たしかにリラックマによって丸ごとジャックされていました。なんともふんわりしているのに風刺的で、写真を撮って、ひとりでニヤついてしまいました」