山本幸三・地方創生相が4月16日、滋賀県大津市で開かれた地方創生に関するセミナーの中で、観光振興をめぐり「一番のがんは文化学芸員と言われる人たちだ。観光マインドが全くない。一掃しなければ駄目だ」と発言し、波紋を広げている。時事ドットコムなどが報じた。
このセミナーは滋賀県が主催。山本氏はセミナーの中で、「『地方創生』加速の戦略~全国の優良事例~」と題して講演した。毎日新聞によると、山本氏は「地方創生とは稼ぐこと」と定義し、各地の優良事例を紹介したという。
問題の発言は、講演後に長浜市の藤井勇治市長が「インバウンド観光振興について助言を」と質問した際にあった。
朝日新聞デジタルによると山本氏は、外国の有名博物館が改装した際のことを引き合いに出し、「学芸員が抵抗したが全員クビにして大改装が実現した結果、大成功した」などとも述べたという。
また、毎日新聞によると山本氏は、京都市の世界遺産・二条城で英語の案内表示が以前は無かったとした上で、「文化財のルールで火も水も使えない。花が生けられない、お茶もできない。そういうことが当然のように行われている」とも発言した。
学芸員は、「博物館法」に基づき、博物館に置かれる専門職員。博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究などを担う。
山本氏の発言について、インターネット上では「観光客を集めまくってるルーブル(美術館)には学芸員がいないとでも?教養のなさにもほどがある」「(学芸員は文化財を)100年、200年と伝えることも義務だから言うべきことは言う」などと批判が相次いでいる。また、「文部科学大臣と文化庁長官こそが山本地方創生担当相に厳重に抗議し、発言を撤回、謝罪させるべき立場にあるとおもう」といった意見も出ている。
■山本氏、セミナー終了後に「ロンドンではそういうことがあった」
セミナー終了後、学芸員批判の発言について山本氏は「全部クビにするというのは言い過ぎですけども」などと述べた上で「ロンドンでは、そういうことが起こった」と、報道陣に持論を述べた。報道陣とのやり取りの一部を捉えた動画を、毎日新聞が公開した。
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例えば二条城でも、大政奉還の時のパフォーマンスをやったらいいじゃないかとアイディアを出してもそんなものはいりませんよと。あるいは花を活けたり、あるいはお茶をやって当時の生活を見せたりすることのほうがインバウンド(訪日外国人)の海外の人なんかは非常に興味をもたれるんだけど、そんなことをやったら大変なことになると全部反対するんですね、学芸員の人たちは。
そういうことで学芸員だけの文化財という形になっていると、まさにこれから観光立国として生きていく時の、そういう歴史資源が活きませんので、そういう人たちのマインドを変えてもらわないと、とてもうまくいかないと思っていまして。
それは、ちょっと…全部クビにするというのは言い過ぎですけども、全く理解してなかったら変わってもらうということは、当然考えてもらわないと、というぐらいの気持ちでやらないとできないし、実際にイギリスのロンドンでは、そういうことが起こったり。
学芸員の人たちも、ようするに観光マインドを持って、観光客に対してきちっと説明をする、あるいは観光客が喜ぶようなパフォーマンスをやるとか、そういうふうに考えて、プロだけの部分じゃないということを理解してもらわないと困ります。
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■山本氏、過去にも「大英博物館は観光マインドがない学芸員は全部首にした」と発言していたが…
「ロンドンではそういうこと(学芸員を全部クビにした)があった」という持論について、山本氏は3月9日の参議院・内閣委員会でも同様の発言をしている。山本氏は国会答弁の中で、大英博物館は2012年のロンドン・オリンピックに際して改装し、「観光マインドがない学芸員は全部首にした」と述べている。
ロンドン・オリンピックのときに観光を盛り上げるという意味で成功したと言われているのが、文化プログラムをつくって、ロンドンのみならずイギリス全体の美術館、博物館を観光客のために大改革をしたんですね。例えば、大英博物館の中の壁を取っ払って、真ん中に人が集まるところをつくって、そこからいろんな部門に行くというように全部やり替えました。そのときに一番抵抗したのが学芸員でありまして、そのときは観光マインドがない学芸員は全部首にしたというんですね。それぐらいの取組をやって、その後、ロンドンにまさに大英博物館を始め大変な観光客が継続して続くようになりまして、オリンピック終わってもにぎやかさを保っているというようなことであります。
大英博物館では、山本氏が答弁したような改装をロンドン・オリンピックに際して実施したのか。また、山本氏が挙げた「観光マインドがない学芸員は全部首」といった事例が実際にあったのか。ハフィントンポスト編集部では、イギリス大使館に事実関係を問い合わせている。
山本氏は17日、問題となった発言について、外国人観光客らへの文化財などの説明、案内が不十分として「適切ではなかった。反省しており、撤回しておわびしたい」と東京都内で記者団に語った。産経ニュースが報じた。
【UPDATE】在日英国大使館は19日、「ご依頼の件につきましては、当館では対応いたしかねます」と回答。ハフィントンポストでは山本氏の一連の発言内容について、ロンドンの大英博物館に事実関係を問い合わせている。(2017/04/19)