2016年3月29日、京都市は日本の自治体として初めて取り組んだ、市の「エコロジカル・フットプリント」の算定調査結果を発表しました。エコロジカル・フットプリントは、消費活動などが地球環境にかけている「負荷」を算定したもの。これを環境問題の深刻さを目で見える形で示す一つの手段としてきたWWFでは、今後、他の自治体にも呼びかけ、各自治体の持続可能なまちづくりの施策に生かされるよう、働きかけてゆきます。
京都市民の暮らしは「地球2個」分
今回の調査結果は、京都市、GFN、いであ株式会社、WWFジャパンが共同で取り組んだ試行的な算定によるもので、日本の自治体としては初めての試みとなりました。
2010年データをもとに算出したその結果によると、京都市のエコロジカル・フットプリントは日本の全国平均より約10%小さいことが判明。同時に、全世界の平均より約30%大きいことが分かりました。
これは、世界中の人々が京都市民と同じ暮らしをするには、「地球2個分」の資源や生産力が必要であることを示しています。特に、フットプリントの中で大きな要素となっているのは二酸化炭素の排出で、これが全体の64%を占めています。
しかし、次のような傾向も認められました。
たとえば、京都市では日本の70都市の平均とくらべ、市民が自動車よりも、電車やバスなどの公共の交通機関を利用する率が高いことなどから、「交通」に起因するエコロジカル・フットプリントが、全国平均よりも約24%小さいこと。
さらに、「住居、光熱費」のフットプリントも、全国平均より約45%低いこと。これは、一戸建てよりもマンションなどの共同住宅の割合が高く、二酸化炭素の排出が比較的少ない都市ガスの利用が多いことなどが要因と考えられます。
日本の「エコロジカル・フットプリント」を下げるために
WWFは、2000年以来、2年に一度発表している『生きている地球レポート』の中で、この「エコロジカル・フットプリント」を人間が環境に与える負荷を目に見える形で示してきました。
また、2010年には、日本全体のエコロジカル・フットプリントも集計。
負荷を減らすには自治体単位での取り組みが効果的と考え、今回、京都市による調査を支援しました。
現在、人類は地球1個分の生物生産力や再生能力よりも、大きな規模で消費を続けており、それがさまざまな環境破壊の原因となっています。
そうした中、京都市では、すでに温室効果ガスの排出量を2030年度に40%削減(1990年度比)する、という、日本政府よりも意欲的な目標を掲げるなど、積極的な取り組みを進めてきました。
WWFでは今後、京都市が今回の調査結果をふまえて、エコロジカル・フットプリントを自治体で実施するときの課題を関係者と共有し、政策とつながるようにしたいと考えています。
日本のエコロジカル・フットプリント低減につながる政策が進むよう、WWFは今後、他の自治体でも同様の試みが広がるよう働きかけてゆきたいと考えています。
報告書
千年の都から、次の千年の未来へ~京都市のエコロジカル・フットプリント調査からわかること
記者発表資料
参考資料
グローバル・フットプリント・ネットワーク(GFN)
持続可能性の指標である「エコロジカル・フットプリント」の発展・普及を通じ、持続可能な経済の構築を目指すNPO団体。パートナー団体と協力してさまざまな調査研究・方法論の標準化を図り、経済活動が地球生態系の許容範囲内で行われるよう、資源勘定(バランスシート)の提供を通じて政策決定者へ提言している。