岸田文雄外務相は6月21日夕方、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と都内で会談し、軍艦島など「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録について、韓国の推薦案件とともに登録されるよう、両国が協力することで一致した。
登録に反対していた韓国側が転換した背景には、「負の歴史も含めて」と主張していた韓国に対して日本側が歩み寄ったことや、アメリカ政府の働きかけなどがあったとみられる。両国は7月初めにある国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会の会合までに、最終合意を目指すことになる。時事ドットコムなどが報じた。
■当初は反対していた韓国、登録阻止に向けロビー活動を展開
明治日本の産業革命遺産を巡っては、当初、「23施設のうち軍艦島を含む7施設で、戦時中に朝鮮人労働者が強制徴用された」として、韓国側が世界遺産への登録に反対。5〜6月に行われた2回の協議の中で、韓国側は登録に対象施設の説明に強制徴用の歴史を反映させるよう、日本に妥協案を提示していた。
しかし、日本側は登録を目指す施設は1910年までの歴史を対象としており、強制徴用が行われた1940年代とは時代が異なると主張。韓国側が要求していた徴用工に関する説明は、必要ないとの立場だった。
そのため、日本側は世界遺産の登録には韓国の理解が欠かせないと判断。6月19日に、杉山晋輔外務審議官を韓国に派遣し、韓国側の主張に配慮する方針を示した上で「対応は日本側に任せてほしい」と求め、韓国側から了承を取り付けた。21日の外相会談では、関連する資産の説明文に徴用工の歴史的事実を日本が自発的に説明し記載する方向で調整することになった。
■アメリカ政府の働きかけ、韓国側にもプレッシャー
一方で、韓国側もアメリカ政府の働きかけで、外相会談に応じた面もあるとみられる。韓国の東亜日報によると、世界遺産登録が失敗すると両国の溝がさらに深まると予想され、韓国側にも無条件に反対することへのプレッシャーがあったという。
アメリカは5月、ケリー国務長官が訪韓した際に朴槿恵大統領に安倍政権との関係改善を促したほか、元駐韓アメリカ大使のスティーブン・ボスワース氏が「日本との緊張関係を緩和するのが、韓国の利益にとっては良い」と指摘するなど、韓国に対して歩み寄りの必要性を指摘していた。
■尹外相「日韓が協力していく道筋を見いだした、良い例だ」
尹外相は岸田外相との会談後報道陣に対して、世界遺産登録に向けての具体的な協力内容については「近く説明する」にとどめたものの、「両国が協力し、共に協力していくことで一致した良い例」と評価。従軍慰安婦や日韓首脳会談など「ほかの問題でも好循環を生み出す方向で進むことを期待する」と述べた。
岸田・尹両外相は、日韓両国の国交正常化から50年となる22日、東京とソウルでそれぞれ開かれる記念行事について、東京の行事には安倍総理大臣が、ソウルの行事には朴大統領が出席することを確認。さらに、尹外相が岸田外務相の年内の韓国訪問を要請し、日本側も今後調整することを約束した。
また、3年間行われていない日中韓3カ国の首脳会談を年内のできるだけ早い時期に開催することで一致。さらに、2013年2月に朴政権が発足して以降1度も行われていない日韓首脳会談の実現に向けても努力することを確認した。一方で、慰安婦問題については、協議を継続することで一致するにとどまった。
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