女性の「自分らしさ」と「生きやすさ」を考える

女性の「自分らしさ」と「生きやすさ」に関係する問題について、Change.orgの武村若葉さんに掘り下げて頂きました。
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3月19日(土)に開催されるイベント「女性の「自分らしさ」と「生きやすさ」を考えるクロストーク」(朝日新聞社WEBRONZA主催)の開催にあたり、一緒にイベントを切り盛りすることとなった、オンライン署名サイトの運営を行う「Change.org」の武村若葉さんとイベント前企画として事前対談を行いました。

当イベントは参加費無料ですが、参加申込の際に簡単なアンケートを実施しており、今回はその中から武村さんが気になっている問題について掘り下げてもらいました。また、Change.orgで実際に行われた署名キャンペーンの中から女性の「自分らしさ」と「生きやすさ」に関係する問題についても紹介して頂きました。その様子を4回に分けてお届けします。

勝部元気(以下勝)「本日はよろしくお願いします。事前アンケートの1つ目では「女性が抱える生きづらさ」を最も感じていることについて選択式で伺っていますが、武村さんは主にどれに問題意識を感じていますか? 私は去年出版した書籍『恋愛氷河期』では主に、対等なコミュニケーションが築きにくいという問題や、恋人がいないことや結婚への周りのプレッシャーを主に扱いました」

武村若葉(以下武)「恋愛しなきゃいけない雰囲気みたいなのは確かに疑問に感じていましたね。以前の勤務先で男性社員から女性社員に対する「彼氏はできないの?」「お付き合いする人いないの?」という「作りなよ」的な雰囲気は実際にありました」

「明確ではないのだけれども、恋人がいない人は作ろうと思っているものという前提で話が進みますよね。そしてそれを気にかけることがおせっかいだと思ってしまっている」

「でも1人でも良いと思うんです。他人からそのようなことに言及されるのはちょっと疑問です。彼氏がいないといけない法律なんてないし、自由に過ごしているのだから良いじゃんと思っていましたね」

「でも、私も書籍でも書きましたが、近年社内恋愛は避けられる傾向にありますね(笑)」

「そうそう、恋愛はしてナンボという雰囲気はあるのに、社内恋愛は避けられる。どこか矛盾している気がします。私の前職は比較的若い人が多い会社でしたけれど、やっぱり日本独特の恋愛至上主義的な雰囲気は少なからずありましたね。30代後半の女性に対して「いつになったら彼氏できるんだろう?」というのは、「いつ結婚するんだろう?」というニュアンスも含まれている場合も多いと思います。そして、本人にそういう言葉が投げかけられても、「いつなんでしょうね~」と冗談で返していました」

「結婚していないというだけで、ちょっと変わった人という目線を向けられますよね。私も結婚の問題に対して以前の勤務先でいろいろと説いていたら、「まぁ結婚すれば分かるよ」と言われて、こりゃもう洗脳だなって思いました(笑)」

「以前の職場の人たちは本当に良い人ばかりで今でも親しくさせてもらっていて、人に対して不満があるというではないんです。ただ、恋愛至上主義というコンテキストが成立してしまうこと、そういうことが冗談として成り立ってしまうことが社会に根付いていることがとても残念に思うのです」

「女の子ならピンクが好きなのが普通で、男の子のピンク好きがギャグとして扱われるというのに近いかもしれないですね」

「でも現在の日本は、結婚しないと税金や法律や世間体の問題で女性に不利が生じる場面は多々あるというのはある程度事実でしょうし、心理的にも物理的にも様々な不都合があるから、独身女性に対して「結婚したほうが良いのに」って視点が生まれてきているのだと思います」

「分かります。でも言っている本人たちはそれが当たり前過ぎて、同調圧力を与えているということに全く気が付いていないのがとても厄介です。徳の高く優れた人であっても、結婚やジェンダーの問題が絡むと無意識に同調圧力的な発言や性差別的な発言をしてしまうことも少なくありませんから」

「本当にそれは難しい問題だと思います。私も今回のイベントの告知文をSNSで書いた時に、急いでいたということもあって「"男性ながら"おっぱい募金(編集部注:スカパーが行った風俗イベント)に反対した勝部さんと対談することになりました」と投稿しちゃったんです。

でもその文章に対して知人の方から「"男性ながら"と書くと、男性はみんなおっぱい募金に批判しないと見えてしまいます。普通の人権感覚を持っていたら、あれにおかしいと言わない人のほうがおかしいと思いますよ」とご指摘を受けまして。本当にそうだなと思いました」

「鋭い指摘ですね」

「確かにおっぱい募金への反対はChangeのキャンペーンでも行われていて、コメントでもおかしいと言って下さる男性がいたのは知っていたんですけど、全体で見るとやっぱり男性でそのような意見は少なかったので、無意識に"男性ながら"って書いてしまいました。普段から男性とか女性とか属性で人をカテゴライズして認識していると、どうしてもそのような表現が出てしまうのかなと。慌てていたとはいえ、ちょっと軽率だったなと反省しました」

「私も女性が受けている被害を男性が理解できないという話の時に、たとえでLGBTの話を出してしまうというミスをやらかしたことはありました。私自身はもちろん偏見等は全く無いのですが、本来全く関係の無いLGBTの人たちを巻き込むことになってしまって。指摘を受けて、反省しなきゃいけないなと感じたことがありましたね」

「本当に日々注意深く意識をしていかなければならない問題ですよね」

「有名なフェミニストの方々の中には「男ってさ」「所詮男は」と、男性を上から目線で蔑む人もいます。私は男性という性自認がそんなに強いほうではないのですが、そんな私でも時々彼ら彼女らの発言を不快に感じることがあるので、ある程度男性という性自認が強い人にとっては攻撃的な言葉に感じるんだろうなと感じることはありますね。

その一方で、男性優位社会の問題点を述べる時に特徴についてノータッチというわけにはいかないので、必ず「多い」や「傾向がある」など、そうじゃない男性もいるというようなニュアンスの文章にすることを心掛けていますね」

「フェミニズムという言葉を出した時に、どういう意味で使っているのかという定義付けが大事だと思うのです。私は学問としてのフェミニズムを大学などでしっかり学んだことがあるわけではないですけど、全ての性が平等でかつ自由になることが理想という第四世代フェミニズムにはとても共感しています。

性別によって社会的な不都合が自動的につきまとうことがないようになると良いなと思っています。そういう意味合いからすると、男性性が嘲笑の対象になって、男性性を持った人たちが男性性を持っているということだけで居心地の悪くなるようなのは、あまりフェミニズム的とは思えないですね」

「本当にそうです。嘲笑からは敵対以外何も生まれないですから」

第二回につづく

●日時:3月19日(土) 14時~ (開場13時30分) *終了は16時の予定です

●会場:朝日新聞メディアラボ渋谷分室

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目19−21 ホルツ細川ビル4階(明治通り沿い。JR渋谷駅、地下鉄渋谷駅から徒歩5分。地下鉄ですと13番出口が便利です)

*ベビーカー可。託児所はありませんが、畳敷き(3畳ほど)、絨毯のスペースはあります。

*飲みものが必要な方はご持参ください。

*館内は禁煙です。

●参加料:無料

●申し込み:  http://t.asahi.com/womanlife までアクセスしていただき、お申し込み下さい。

*必要事項とアンケートにお答えください。当日の参考にさせていただきます。

*応募多数の場合は抽選のうえ、当選された方にのみお知らせします。

*当日のトークを踏まえて、後日、WEBRONZAとハフィントンポスト日本版で関連記事を配信する予定です。

●主催:朝日新聞社 WEBRONZA

●問い合わせ先 WEBRONZA編集部

webronza-m@asahi.com