2016年5月16~19日、デンマークのコペンハーゲンで第4回Women Deliverが開催されています。女の子と女性の健康や権利についての世界でもっとも大きな国際会議で、政府、国連、NGO、民間企業などから約6000人が参加しています。国際NGOプランからは、CEOのアンネ・ビルギッテ・アルブレクトセンのほか、活動地域に暮らす女の子たちの代表4名が参加し、世界のリーダーたちに自らの声を届けます。
アルブレクトセンは全体会合で演説し、「目に見えない女の子たちを、見える存在にすること」の重要性について訴えます。数百万人もの女の子たちの人生に変革をもたらすためには、具体的な方策と大きなムーブメントが必要です。そのためには彼女たちの現実を知るためのあらゆるデータを収集することが必須です。以下に、アルブレクトセンの論説を紹介します。
会議に参加するフィリピンのヌルファハダ(16歳)とロージー(18歳)
女の子の人生にはよりよい変化が起きつつあるが、さらに加速させなければならない
ネパール中部のドラカ地域に暮らすマヤは、16歳にしてすでに妻であり一児の母です。ネパールは南アジアで2番目に若い女の子の妊娠率が高い国で、10人に1人の女の子が15歳以下で結婚するという推計もあります。そのほとんどが、学校を中途退学してしまうのです。
しかし、マヤはプランの支援によって学校に戻ることができました。12~18歳の女の子を対象とした「女の子にやさしいスペース」という活動にも参加しています。マヤが参加しているグループの22人のメンバーのうち半分が結婚しており、そのなかの何人かは妊娠中、その他はすでに母親になっています。2016年3月の末にマヤは卒業試験を受け、さらに進学したいと願っています。それは、子どものいる若い女性にとって困難をともなう道のりであることを、マヤはよく分かっています。
しかし他の若い女性たちに自信をもってもらうために、マヤは自らの経験を伝えているのです。「女の子であるために、私たちには多くの障壁が存在します。だから、自分自身の目的に焦点を当て、しっかりと学業を修める必要があるのです」と語っています。
マヤの生き方は、困難な現実を変えるために、どのように行動しなければならないかを私たちに教えてくれます。私たちは、女の子たちの苦境ではなく彼女たちのもつパワーに焦点を当て、彼女たちが学び、リーダーシップを発揮し、意思決定し、目的を達成できるようにサポートすればいいのです。楽観的現実主義のもとに進んでいけばいいのです。
人々が、女の子が直面する不公正にばかり目を向けがちなのは、理解できることです。教育を受けること、意見に耳を傾けてもらうこと、思春期のうちに強制的に結婚させられて母親になってしまわないこと。こうした権利を、女の子だからというだけの理由で奪われてしまう現実を、私たちは繰り返し訴え続けなくてはなりません。しかし、その問題の解決にも同じくらい注力する必要があります。
マヤと夫と子ども(1歳)
世界は女の子の権利を保障することの重要性に気づきつつあります。2015年、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、そのひとつの表れです。今こそ、近年活性化してきた女の子の権利を守るムーブメントを、より拡大していくべき時です。変革に向けて、加速しましょう。
自己決定できるという自信は、女の子たちが自らの人生をよりよいものにしていくうえで欠かせないものです。そして、それは変革を加速させるうえでも大切です。南米・エクアドルの17歳の女の子、ヘマは「10代の妊娠を地域からなくそう」プロジェクトに参加する2300人の若者のひとりです。このプロジェクトでは、10代の妊娠を減らすために女の子のエンパワーメント、あらゆる活動への参加、自己肯定感などを促進させています。
彼女がプロジェクトに参加するようになったのは14歳の時です。妊娠し、学校を去っていくクラスメイトの数の多さに衝撃を受けてのことでした。彼女は2~3人の友人とともに近所の家庭のドアをたたいては、親たちの意識を少しずつ変える活動をしています。その活動が認められ、彼女はプランのサポートのもと、ニューヨークで行われた国連の「女性の地位向上委員会」に参加を果たしました。今、ヘマは大学で薬学を学んでいます。
ニューヨークでテレビのインタビューを受けるヘマ
Because I am a Girlをムーブメントに
このように、変化は確実に起きています。しかし、その速度はあまりに遅い。想像してみてください。もし、子どものうちの妊娠をなくす活動が、ポリオの根絶と同じくらいの切迫感をもって進められたら。もし、女の子という理由で教育を受けられない現実を変えることに、同じくらいの注力がなされたら。私たちは、どれだけ目標に近づくことができていたでしょうか?
これまでと同じことを繰り返していたのでは、さらなる成果は期待できません。2011年のユネスコの報告によると、南スーダンでは妊娠・出産で命を落とす女の子の人数は、8年生を修了できる女の子の3倍にもなります。
もし、女の子が総合的な性教育や避妊にアクセスすることや自分の身体についての決定権をもつことを否定するような社会規範を変えられなければ、男の子と女の子が平等に教育を受けるという目標に向かうことはできません。マヤやヘマを支援したようなプロジェクトを行いつつ、世界レベルで変革を起こせるようなスケールの大きな解決策が必要です。それは、女の子の権利促進ムーブメントを強化するための、そして女の子たちが自ら変化を起こすことができるように自信とスキルを身につけるための、具体的なアクションです。
変化が依然として遅いのは、ひとつにはその進展を裏付ける数字が欠如しているためです。毎年、世界の15歳未満の女の子の何人が妊娠しているかについての、信頼しうる数字を私たちは持っていません。結婚、妊娠、性暴力のために学校を去らざるを得ない女の子が何人いるのかも、私たちは適切に把握できていません。何百万人もの女の子が、目に見えない存在となっているのです。
プランはこうした数字の欠如を補うため、新たな調査に踏み出します。女の子の現実に迫る本当の数字やデータがあれば、私たちはいかに成果が迅速に表れているかを可視化できるでしょう。その成果とは、早すぎる強制的な結婚をなくすこと、中等教育におけるジェンダーの公平を実現すること、女性器切除を根絶すること、女の子が男の子と同じ就業チャンスを得ることなどです。
私たちはまた、見過ごされがちな女の子の生活の現実に目を凝らす必要があります。マヤやヘマのような、洞察力とそれによって障壁を乗り越えた経験をもつ女の子の声に耳を傾けなくてはなりません。なぜならば、実際に変革を起こすのは当事者の女の子たちに他ならないからです。