Wikipediaのコンテンツはボランティアが書いているが、ときには、それが仇(あだ)となることがある。今朝(米国時間9/1)同団体は、Wikipediaの英語バージョンのボランティアエディタ381名のユーザアカウントを停止した、と発表した。彼らの容疑は、“特定のグループや企業等に有利な記述を報酬をもらって書いていたこと”だ。たとえば彼らは、この、ユーザが自由にエディットできる百科事典に宣伝記事を書き、そのことで報酬を得ていたことを、隠していた。
この件に関するエディタコミュニティのディスカッションによると、彼らいわゆる‘靴下人形(sockpuppet)’たちは、かなり前から跋扈していた。怪しげな行為に対する調査は7月に始まり、4月から8月までのエディットを調べた。ちなみにこの調査活動のことを、最初に見つかった靴下人形のアカウントにちなみ、”Orangemoody”と愛称している。しかしそれらのエディットの内容は、報酬を得るエディットが相当前から行われていることを、示唆していた。
それらの記事は、企業や企業人、アーチスト関連のものが多くて、偏った情報や誤報、出典が明記されていない…あるいは根拠のない…材料、著作権侵犯らしきもの、などがほとんどだ。Wikipediaの上位団体Wikimediaのブログが今朝、そう説明している。
これらの靴下人形たちが独自に作った210の記事も、削除された。しかし210は、‘それらのすべて’ではないようだ。
ディスカッションのページでは、“このリストは完全ではない。時間的制約があったため、調査の網にかからなかった靴下人形記事もまだ相当あると思われる”、と説明されている。
このpaid advocacy(報酬を伴う好意記事)と呼ばれる記事やエディットにWikipediaが直面したのは、これが初めてではない。Wikipediaはもちろん、不偏不党で正確で信頼に足るリソースを目指しているが、2013年の10月には、同団体のボランティアたちが、コンサルティング企業Wiki-PRと結びつきのある数百のアカウントをブロックした。そのときWikipediaはその企業に、業務停止を命ずる書簡を送った。同社は、“Googleの検索結果でトップに来るような記事タイトルを作ってあげる”、と宣伝していたのだ。
今回停止したアカウントは381だから、前回の300よりは多い。また今回の件でおもしろいのは、ここでもやはり、記事のタイトルや主題が問題になっていることだ(後述)。またこれらの新しい靴下人形たちは、報酬をもらって記事の内容を操作したり新しい記事をポストしただけでなく、月額30ドルで、顧客の記事が削除されないように守る、というサービスを提供していた。
“拒否された草稿や、ときには削除された記事から、‘見込み客’を見つけて接近することが、彼ら靴下人形たちの最新の営業テクニックのひとつだった”、とディスカッションページで説明されている。“記事を‘保護する’ことも、彼らの重要な収入源になった。そのために靴下たちは、わざと、ページの削除をリクエストするのだ”。
この悪事に企業がからんでいたのか、その点をWikipediaは明らかにしていないが、しかしその注記によると、靴下たちが行ったエディットはどれもよく似ているので、一定の指揮下にあるグループがやったことに違いない、ということだ。
問題は記事の編集に報酬が伴ったこと自体ではなく、その場合のガイドラインに従っていないことだ。たとえば多くの博物館、美術館、大学などは、職員の企業等との結びつきを事前に情報公開しなければならないし、また顧客のためのページをメンテしているPR企業は、Wikipediaの、報酬を伴うエディティングのガイドラインにサインしなければならない。 Wiki-PRのスキャンダルを契機に作られたガイドラインは、企業やそこの人間に関する記述をエディットするときは倫理的に振る舞うべし、と規定している。
またPR企業等は、記事の主題(企業名等)との関わりを情報公開し、変更に関しエディタたちと協働しなければならない。今回アカウントを停止されたグループは、何も情報公開しなかった。それが目下の、より大きな問題だ。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)
(2015年9月2日 TechCrunch日本版「Wikipediaが、企業等から報酬を得て宣伝的記事を書いていた、数百名の悪質エディタのアカウントを停止」より転載)