女性になりたいわけではない僕が、週末、ドラァグクイーンになる理由。(シリーズ:隣人たち)

ドラァグクイーンは、「女性らしさ」を過剰に表現する一つのパフォーマンス。異性愛を当たり前とする社会への皮肉なんです。
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性的少数者(LGBT)のカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」が6月、札幌市で始まる。全国各地の自治体でも同様の仕組みがつくられ、LGBTへの理解や支援が広がっている。「13人に1人」とされるLGBT。制度開始を前に、私たちのすぐそばにいる「隣人」たちの素顔を紹介する。

●飲食店勤務・奥田真理(まこと)さん(25)=札幌市北区

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札幌の繁華街ススキノで働いている奥田真理さん=札幌市中央区

週に3、4日、夜の飲食店で働いています。週末は厚化粧をして派手な女性ものの衣装を着て接客しています。「ドラァグクイーン」(ドラッグクイーン)ってやつです。

女性になりたいわけではありません。僕はゲイで、恋愛の対象は男性です。ドラァグクイーンは、「女性らしさ」を過剰に表現する一つのパフォーマンスなんです。「女性らしさを追求したらこんなにけばけばしくなりました。でも男性の皆さん、これがお好みなんですよね」っていう。異性愛を当たり前とする社会への皮肉なんです。

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店に入ったのは2年前です。ゲイでもある経営者の男性とクラブのイベントで知り合ったのがきっかけです。ドラァグクイーンは最初断ったんですが、この経営者がLGBTへの差別や偏見をなくすためにいろんな活動をしていることを知り、自分もゲイとして何か意味のあることをやりたいと思いました。目立つドラァグクイーンなら、ゲイの存在をもっと社会に知ってもらうことができるんじゃないかって考えたんです。

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「ドラァグクイーン」として接客する奥田さん

自分自身も変わりたかったんだと思います。当時はまだ自分がゲイだと家族に言えませんでした。昨年6月、ほかのLGBTの人たちと札幌市にパートナーシップ制度をつくるようお願いしたとき、覚悟を決めて新聞やテレビの取材に実名で応じました。

その2、3日前、家族に自分がゲイだと伝えました。母は、僕が生後間もなく病気で死にそうになったことを思い出して、「あの時、あなたは死なずに帰ってきてくれた。生きているだけでいいの」って言ってくれました。うるっときました。

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一つ年下のパートナーとは別々に暮らしているんですが、将来は一緒に暮らしたいと思っています。6月に始まる制度で、物件も借りやすくなるかもしれない。期待しています。

男女の新婚さんが楽しそうに歩いているのを見ると、いいなあ、やってみたいなあと思います。私たち同性愛者のカップルが同じように歩いていても、色眼鏡で見られない社会になってほしい。それが夢です。

■性的少数者の割合、13人に1人 民間調査

同性の人が好きな人、心と体の性が一致しない人――。LGBTの人は周囲に知られないようにしていることも多く、これまで社会的に広く認知されてこなかった。だが電通が2015年に約7万人に調査したところ、7.6%がLGBTに該当すると回答。13人に1人にあたる。

日本の制度は異性愛が基本とされており、LGBTのカップルは戸籍上の家族でないことを理由に、住居の賃貸契約や入院中の面会を断られることがある。

札幌市のパートナーシップ制度は、対象となるカップルを「互いを人生のパートナーとし、日常生活で経済的、物理的、かつ精神的に相互に協力し合うことを約した、一方または双方が性的少数者である2人」と定義し、宣誓書の写しなどを交付する。法的な権利や義務などの拘束力は発生しないが、社会での差別的な扱いの解消につながると期待されている。

全国の自治体では15年に東京都渋谷区と世田谷区、16年に三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、那覇市がパートナーシップ制度を導入している。札幌市は6例目で、政令指定都市では初めてとなる見通しだ。

(2017年5月4日「朝日新聞デジタル」より転載)