ガザ地区に住む多くの住民にとって、安全な避難場所はほとんど残されていない。それどころか、閉ざされた空間から逃げられるチャンスはまったくないと言っていい。彼らの状況を説明しよう。
陸路
ガザ地区の人口は約150万人。約120万人が難民で、さらにそのうちの約50万人が、ガザ地区にある8つの難民キャンプ(地図中の赤いスポット)に住んでいる。国境に沿っていくつかの検問所がある。なお、過去記事「もしガザ地区が東京にあったら」では、東京駅をガザ地区の中心部に置き換えた地図を紹介している。
ガザ地区は、事実上封鎖されている。合法的に出入りしようとするなら、イスラエルが管理するエレズ、およびエジプトが管理するラファなど、正式な国境検問所を通るしかない。しかし、イスラエルとエジプト両国は、安全上の理由から、人や物資の行き来を厳しく制限している。
ガザ北部にあるエレズ検問所はイスラエルの管理下にある。イスラム原理主義組織ハマスがパレスチナ議会で過半数を超える議席を獲得してガザ地区を実効支配するようになった2006年以来、イスラエルは、病気の治療などの人道的理由がある特別な場合を除いては、ガザ地区住民のイスラエル入国を許可していない。
ただし、現在の戦闘が始まった当初は、外国パスポートを持つ数百名のガザ地区住民に対し、エレズ検問所を通じた出国を許可したとも報じられている。
一方、ハマスは7月に入って以来、ガザ地区内から検問所へ向かおうとした人々を何度か阻止している。7月15日にも、「イスラエル軍の砲撃が続いている」として検問所を封鎖したが、当時は砲撃があったという報告はなかった。医療目的で国境を越えようとしていたパレスチナ人もいたが、足止めを余儀なくされたという。
カレム・シャローム検問所も、イスラエルの管理下にある。この検問所はガザへの物資の出入りに関して主要な経路になっているが、武器やトンネル建設に使われるとして、セメントや鋼鉄、化学肥料など多くの物資の輸入が禁止されている。これらはビルや道路の建設などにも必要なものだ。イスラエルはさらに、ガザからの輸出は事実上すべて禁止している。
一方、ラファにある検問所はエジプト管理下にあるが、イスラム主義政党出身だったモルシ前大統領が2013年7月に軍事クーデターにより解任・拘束されて以来、エジプト政府は検問所での出入りを厳しく規制している。外国のパスポートを持つ者や、医療目的で出国する者だけが出国を許可されているが、ウェイティングリストは15,000件に上っていると報道されている。
地下トンネル
ガザ側は、イスラエルならびにエジプトとの国境をまたいで多数の地下トンネルを掘った。イスラエル側は今回の作戦で、そうした地下トンネルの破壊を軍事作戦の主な目的としていた。イスラム過激派組織が地下トンネルを利用して、イスラエル国内で破壊的攻撃を行なってきたためだ。
一方、エジプトは昨年、150を超える地下トンネルを国境付近で破壊したと報道された。ハマスが地下トンネルを通して、エジプト・シナイ半島で活動を行なうイスラム過激派を支援しているとの理由からだ。
APの報道によれば、エジプトと通じる地下トンネルが破壊された結果、密輸品からの税収という資金源を失ったハマスは経済的な打撃を被ったとされている。一方で、トンネルで運ばれる燃料や食料などの生活物資を頼みにしていた一般の人々は困ることになった。文末スライドショーでは、地下トンネルの様子を紹介している。
海路
ガザ地区沿岸はイスラエル軍が封鎖しており、パレスチナ人は海岸線から6カイリ(およそ11キロメートル)以上遠くへ船を出すことができない。さらに、戦闘時には3カイリに制限されることも多い。海上封鎖されると、かつては盛んな産業だった漁業も厳しい制限を受けることになる。
過去には、国際的な支援組織が海上封鎖を縫って、海側からガザ地区への接近を試みたことがある。規模も波紋も最大だった事件が起きたのは2010年で、人権団体「自由ガザ運動」の支援物資を積んだ貨物船6隻がトルコからガザ地区に航行中、イスラエル軍の襲撃を受け、乗客らが斧やナイフで反撃したため軍隊側が発砲。トルコ人の人権活動家ら10人以上が死亡したとされている。
[Eline Gordts(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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