「Clubhouse(クラブハウス)」が広まっている理由とは。新しいSNSは「不安の時代」に生まれる

TwitterやLINEはつながりや情報を求めていた時代に広まった。新型コロナが拡大するなか、私たちに必要だったのは、Zoomではなかったのかもしれない。一方、課題もある。
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Clubhouse(ルームの主催者に許可をいただき、スクリーンショットを掲載しています)
Ryan Takeshita

アメリカ発の音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」が人気を呼んでいる。

登録すれば、誰でも「ルーム(部屋)」を作ることができ、みんなのおしゃべりが始まる。数十人から数百人が集まる。

雑談をする人もいれば、政治やビジネスについて議論をする人も。有名なタレントの方も交じっている。

毎日勝手に面白いラジオ番組がどんどん生まれるイメージだ。

なぜハマってしまうのか——。

過去のSNSもみんなが大変なときに新しい使い方が生まれた。新型コロナで辛いを思いをして、人とのつながりを求めている今だからこそ、Clubhouseは広まっているのだ。

コロナの時代に私たちが求めていたサービスはZoomやTeamsではなかったのかもしれない。

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この1週間で一気にブームがやってきた

Clubhouseはアメリカ・サンフランシスコのベンチャー企業が2020年春にリリースした。

日本では2021年1月に話題になり、特に1月25日〜31日に目立つようになった。

「寝る前までClubhouseを聞き、起きたらClubhouseを立ち上げる」という人も出てきた。「Clubhouse疲れ」という言葉も耳にする。

アカウントをつくり、私も「ルーム(部屋)」をつくってみた。20代と気候変動について語る部屋にも参加した。コロナで毎日モヤモヤしているという人もいた。

友人を招待することもできるし、初めて会う人を紹介されることもある。私も、この数日間で3100人とつながった(もし良かったらフォローしてください。一緒に使い方を考えましょう!)。

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使い方を模索中です。これから公開インタビューをしたり、ニュースの「番組」をClubhouseで作ったりするかもしれません。
Ryan Takeshita

「飲み会」の代わり?

やってみて感じたのは、これは「飲み会」の代わりだということだ。あるいはカフェでの「お茶」の代わりだ。

集まってダラダラと話しているだけで安心感がある。

新型コロナの感染拡大で、みんなで頑張って自粛をしている。雑談も減った。埋め合わせになったのが、彗星のごとく現れたClubhouseだ。

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Clubhouseの画面。参加者の顔と名前が丸いアイコンで表示される。声を出すとアイコンが点滅し、会話が始まる。
Clubhouse

ZoomやTeamsは便利だが、あれは仕事の延長だ。偶然の出会いも少ない。

見知らぬ人と出会うというより、これまで付き合いがある同僚や上司、取引先、知人や友人と話す事が私の場合は多い。

Zoom飲みも2回か3回かやったが、しんどくなった。

Clubhouseは「声」だけで参加できるので、寝起きでもOK。仕事以外の人とつながれる。居酒屋で隣りの人と思いがけず盛り上がるように。

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LightFieldStudios via Getty Images

 野党と与党の政治家が話し合う場面も

政治やビジネス、同じ仕事だからこそ分かる職場の悩みについて。好きな趣味やマンガについて。単におしゃべりをする。声を出さず、好きな音楽を流すだけの部屋(ルーム)もあった。話すのが苦手な人も参加できる。

「12時に集合しよう」と街で誰かと待ち合わせをするように集まる。

私が参加したルームでは、普段はライバル同士の与党と野党の政治家が話し合っていた。

それを聞いていた若者が「政治家同士が話し合う姿を初めて見た…新鮮です」とつぶやいた(もちろん、野党の批判は大事な仕事であり、「野党は批判ばかりでダメだ」という議論に与するわけではない)。

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プッシュ通知で、ルームの「予告」も送られてくる。仕事の予定と並ぶ、「Clubhouse番組表」だ(主催者に許可をいただき、スクリーンショットを掲載しています)
Ryan Takeshita

これからは「音声の時代」なのか

テレビ番組やウェビナーと違って台本も資料もない。

最近は「音声コンテンツの時代」が叫ばれているが、このままだとポッドキャストはどうなるのか。NetflixやAmazon プライムを見る人も減るかもしれない。

スピード感もすごい。

私もたまたま参加した部屋で政治について語り合い、20代の方と出会って、「やりらふぃー」という流行語を教えてもらった。

その場で「やりらふぃーが語る政治」というルームをつくり、ハフポスト日本版編集主幹の長野智子さんらが司会を始めた(やりらふぃーとはテンションが高い人のこと)。

自民党の派閥争いと、「きのこの山」派と「たけのこの里」派の論争の違いについて話し合った。官房機密費や選挙制度もテーマになった。

発言が一方通行になりやすい文字がベースのSNSと違い、音声のSNSというのも強みになる。「どういう意味ですか?」「確かにそうですね。でも、私はこう思います」とキャッチボールが始まる。

雑談なのに真面目になったり、真面目なのに雑談になったり。こうしたつながりを新型コロナが広まった2020年、私たちは失っていた。

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oatawa via Getty Images

 TwitterやLINEのときは

新しいSNSは「不安の時代」にこそ広まる。

日本では、2011年の東日本大震災をきっかけにTwitterが普及し、LINEのサービスがうまれた。

被災地で足りないモノを教え合ったり、底知れない不安を語り合ったりした。

1995年の阪神・淡路大震災の年は「ボランティア元年」と呼ばれた。不安の時代、みんなはつながりを求め、支え合う。

ヘイトスピーチ対策が課題。これからの私たちが場をつくっていく

しかしながら、2021年を生きる私たちはSNSを手放しで褒めることはできない。

TwitterやFacebookが「民主主義を変える!」と言われたこともあったが、初期の頃の理念はうまく受け継がれなかった。デマ、フェイクニュース、ヘイトスピーチ、誹謗中傷、そして冷笑主義。

政治や社会について上手く話せず、すさんだ空間にもなった。

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Karl Tapales via Getty Images

実際のところ、Clubhouseはアメリカではヘイトスピーチや差別的な言動の場にもなっているという指摘もある。

自由に話せる分、発言が過激になったり、誰かを傷つけたりする場にもなり得る。肩書きや自分の仕事を自慢しあう「アピール合戦」の場になっているルームも。

“内輪のノリ”も広まりつつあるし、現時点ではiOSアプリのみだったり招待制だったり「制限」もある。

「声の個人情報」の扱いなども監視を続ける必要があるだろう。新型コロナがあまりにも大変でアクセスできる状況にない人もいる。

SNSは使い方次第だ。Twitter世代の私たちはイヤというほどわかっている。

立派なSNSが出てきても、場が荒れていけば、自由な言論は閉じられる。「人類にSNSは向いてなかったね」という結論になる。

それでいいのだろうか?

当事者は私たちだ。

これからどのような「会話の文化」を作っていけるのだろうか。